ADHD(注意欠陥・多動性障害)は子供の障害だと考えている人も多いかもしれないが、実は大人でもADHDの特徴との付き合い方が困難だと感じる人は存在している。

大人でADHDと向き合っている人が何人いるのか、日本でのデータはほとんどない。大人でその疑いがある人の中には、自覚がないまま就職して働いているケースも少なくないからだ。

そのため具体的にADHDの人の就職率は数値として出てはいないが、社会に出て民間企業などに勤めている人も大勢いると言えるだろう。

そのように、ADHDと向き合わなければいけない大人たちは、仕事や日常生活の中で出会う困難にどのように対処すればよいのか。

ADHDと向き合う本人もそうだが、取り囲む周囲の人々も、その特徴や注意すべきポイントなどを把握しておくべきだと言える。

ADHDとはどのような障害なのか?

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、英語でAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略。不注意(集中力のなさ)、多動性(じっとできない)、衝動性(考えなしの行動)の3つの症状がみられる発達障害のこと。

それぞれの年齢や発達度合に不釣り合いな行動が目立ち、社会的な活動や学業などに支障をきたす恐れがある。

子どもの頃にADHDと診断された場合は、成長するにつれ症状が回復したり軽くなる人もいる。自分の特性を理解することで苦手とする場面でもどのように対処するかを学ぶことができ、困難な日常生活を乗り越えているのだ。

逆にADHDの特性を生かすことで才能を発揮し、経営者などエグゼクティブになったり、職場で好成績を出している人もいる。しかし、大きな流れとしては大人になっても症状が残ってしまい、仕事や人間関係に影響を及ぼしてしまう人が大半なのだ。

ADHDに見られる3つのタイプとそれぞれの特徴

1つ目が「多動性・衝動性優勢型」。多動と衝動の症状が主に出てくるタイプだ。特徴は、落ち着きがない・衝動が抑えられない・衝動的に不適切な発言をしたり自分の話ばかりをする、などが挙げられる。

2つ目は「不注意優勢型」。不注意の症状が強く出てくるタイプだ。特徴は、集中することが苦手・やりたいことや好きなことは集中して取り組むが切り替えが苦手・忘れ物や物をなくすことが多い、などが挙げられる。

3つ目は「混合型」。多動と衝動・不注意の症状が混合して出ているタイプだ。特徴としては多動性・衝動性優勢型と不注意優勢型のどちらの特徴も併せ持ち、どちらの症状が強く出るかは人によって異なっている。

ADHDの約8割がこの混合型タイプに属していると言われ、早期発見はしやすいがアスペルガー障害との区別が難しく、ADHDとの診断を下すのが手間取る場合もある。

ADHDの人と付き合っていくために大切な3つのポイント

ADHDに向き合う人が身近にいる場合周囲の人に必要な心構えは、その特徴をよく理解して付き合うこと。基本的なポイントが3つある。

1つ目は「頭ごなしに否定しない」こと。ADHDの人がミスをしたときやできなかったとき、頭ごなしに叱ることや人格否定することは逆効果だ。逆に「理解している」ということを伝えるべき。

2つ目は「解決策を一緒に考える姿勢を示す」こと。たとえADHDの特性であったとしても、ミスの繰り返しや遅刻したりすることは、社会的には許されることではない。

ただし「それは社会では通用しない!」と否定してしまうのではなく、「どうすれば改善できるのか一緒に考えよう!」と、解決策を一緒に考える姿勢を示すことが大切だ。

3つ目は「周囲みんなで協力をする」こと。ADHDの人の中には、発想力を必要とする企業の経営者やアーティストなどに仕事が適している人もいるそうだ。家族や友人点・職場など周囲の理解と支えがあれば、特性を活かせる分野で力を発揮することができるようになるかもしれない。

ネガティブでなくポジティブ思考で向き合うよう働きかける

大人のADHDの場合治療の目標は、本人が困っている悪循環を好転させ、自分の特性をポジティブにとらえることができるレベルまで持っていくこと。これは心理社会的治療と言われている。

治療なのでもちろん薬などでサポートすることもあるが、治療の目標で一番大切なのは、本人が勇気を持って自分の特性と向き合い、自分の特性を理解して一緒に生きていくことができるように自然と持ってくことだ。

できるだけ薬などの外的要因で表面的に治療するのではなく、根本的・内面的な部分を基から変化させていくことが望ましい。この障害を治療するうえで重要なところは、自分の障害のことで落ち込んだり自信を失ったりといったことを無くすことでもあるのだ。

また周囲が本人の行動で困っている場合には、周囲に対してどのように接すればいいのかが理解できる環境を整えてあげることも大切。

周囲からの指示のみで改善を促すのではなく、自分から周りに対する改善のアクションを起こしてもらえるような形が理想だ。

本人だけで悩み、改善しようとしてもスムーズに解決策を実行していくことは困難。職場であれば、まずはお互いに信頼できる関係づくりを行い、どうすれば今の悪循環を解消できるかを根気よく話し合うことが望ましい。

家庭であれば、まずはしっかりとADHDと向き合うことを家族で認識し合い、理解が深まったところで一緒に病院に行き、専門家に相談することも1つの方法だ。(ZUU online 編集部)