一見すると普通の夫婦と何ら変わりない生活をしていながらも、自らの意志で入籍していない「事実婚」夫婦。 前回 は、事実婚の場合に、年金や保険についてどうなるのかをお伝えしました。

社会保険では実態が重視されるので、入籍している「法律婚」と取り扱いに差がありませんでしたね。

では、主婦のパートで話題になる「配偶者控除」など税金の問題や、パートナーが亡くなったときの「相続」の取り扱いはどうなるのでしょうか。事実婚をしている筆者から、クイズ形式で解説していきます。

税金クイズ

まずは税金の問題です。下記の問題の夫婦は、夫は会社員、妻は専業主婦(収入ゼロ円)で、いずれも事実婚です。○か×かを考えてみてください。

Q1.妻は、夫の配偶者控除の適用対象者である

Q2.夫が保険料を払っている死亡保険の保険金受取人が妻であるとき、夫は生命保険料控除を適用できる

○か×か、答えは決まりましたか?

Q1. 配偶者控除は受けられる?

まず、「Q1.妻は、夫の配偶者控除の適用対象者である」の答えは×です。

配偶者控除の要件には、「給与収入が103万円以下」という点が有名ですが、その他に「民法の規定による配偶者であること」という要件があります。

民法の規定による配偶者ではない事実婚夫婦は、妻が専業主婦で収入がゼロ円であっても、配偶者控除の適用はないのです。同様に、妻の給与収入が103万円超~141万円未満の場合に適用される「配偶者特別控除」も利用できません。

Q2. 生命保険料控除の対象になる?

次に「Q2.夫が保険料を払っている死亡保険の保険金受取人に妻がなっている場合、夫は生命保険料控除を適用できる」の答えですが、これも×です。

生命保険料控除そのものは、会社員は年末調整で手続きを行いますから、おなじみだと思います。その生命保険料控除の対象となる保険契約は、「保険金等の受取人が自分、またはその配偶者、その他の親族」が要件であり、ここでの配偶者とは、Q1の配偶者控除と同様に、「民法の規定による配偶者」です。

そのため、事実婚夫婦は保険金の受取人にはなれるけれど(保険会社により異なる)、税金面では配偶者とはみなされず、生命保険料控除は受けられないのです。

税金は「入籍」しているかどうかで判断される

税金面では事実婚は配偶者とみなされません。しかし入籍していても、そもそも給与年収103万円以上では配偶者控除の適用がありません。事実婚夫婦の多くは互いに収入があることを考えると、現実的には、配偶者控除が使えない影響は小さいでしょう。

生命保険料控除については、法律婚に比べると不利なことは否めません。金額にすると、最低税率の人の場合、本来なら年間約5,000円の税金の軽減がありますが、こちらは受けられません。これは、自分の希望する人生を選択した結果として受け止めることになります。

税金は、入籍重視ということですね。


相続クイズ

では、今度は相続に関する問題です。ここでも登場する夫婦は、いずれも事実婚を行っている夫婦(子どもはなし)として、夫が死亡した場合について、○か×かを考えてみてください。

Q3.妻は、夫の財産を相続することができる

Q4.妻は、相続税を納めなければならない

○か×か、答えは決まりましたか?

Q3. 夫の財産の相続人になれるのか?

まず「Q3.妻は、夫の財産を相続することができる」の答えは、原則は×です。

法律婚では、夫が亡くなると妻は自動的に相続人になることができますが、事実婚では相続人になれません。そのため、「何もしなければ」、夫の財産は、夫の親やきょうだいなどに受け継がれ、事実婚の妻は相続することができないのです。

そこで、そのための対策が「遺言」です。

夫婦で互いに遺言を書いておくと、亡くなったパートナーの財産を互いに相続することができます。ただし、家族関係によっては、「全てを妻に相続させる」とすると、かえってトラブルのもとになることがあります。

夫の親が生存している場合は、亡くなった夫(妻)の財産の3分の2までを妻(夫)が受け継げるように遺言を作成しておくとよいでしょう。ただ、親はすでに亡くなり、夫のきょうだいだけが残っている場合には、すべてを妻または夫に残すことができます。

余談ですが、我が家もQ3、Q4の問題夫婦と同様に、子どもがいない事実婚夫婦のため、お互いに遺言書を書いています。

Q4. 相続税を納める必要はあるのか?

最後に「Q4.妻は、相続税を納めなければならない」という問題です。答えは〇です。

もちろん、妻が何も相続しない場合は、相続税を納める必要はありませんが、Q3でお伝えした「遺言」により、妻が財産を相続すると、相続税を納めなければなりません。

財産を相続する場合、法律婚なら一定金額までは相続税を納める必要がないのですが、事実婚では使えないので、相続税の支払いが発生します。さらに、本来納めるべき相続税の2割増の相続税を納めなければなりません。

相続については、事実婚も相続することはできるけれど、税負担が発生するということですね。

税金や相続は「法律婚」を重視

今回の税金と相続では、「税金や相続は、法律婚重視」ということを押さえていただければと思います。

次回は、事実婚と離婚についてお伝えいたしますので、お楽しみに。

前野 彩
元保健室の先生という異色の経歴を持つファイナンシャル・プランナー。「気持ち」を大事にする相談が好評で、年間300件超の依頼を受ける。著書『本気で家計を変えたいあなたへ』他。株式会社Cras代表取締役。 FPオフィス will

(提供: DAILY ANDS

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#02 あなたはどこまで分かる?事実婚の年金・保険クイズ