中国,公務員試験
(写真=PIXTA)

2017年度の国家公務員採用試験の出願が始まった。“中央機関及び直属機構考試任用公務員”の募集で、担当の役所は国家人力資源社会保障部、国家公務員局である。

中国の公務員採用試験は、日本とは大きく違う。募集職位別に出願するのである。したがって倍率はバラバラになる。また考試(筆記試験)任用ということは、それによらない任用もあるということだ。試験の概要を見てみよう。

ネット出願も可能

受験希望者はインターネットで出願できる。期間は10月15〜24日、共通科目試験日は11月27日、全国各省の大都市で同時に行われる。募集要件には、徳を以って優先とする原則があり“徳才兼備”でなければならない。

また政治思想、道徳品質、能力素質、遵記守法、自立意識、誠実守信、学習工作表現が観察の対象となる。

能力だけではなく、政治、品行、廉潔、も考慮して選抜される。学歴規定は撤廃される方向で、大半の職位は大卒でなくても受験できる。

試験の不正行為には厳格に対処する。詳細を定めた違規行為処理辯法が9月末に公布された。カンニングには厳しく審査し、同一科目内の解答が同じ、と判断された場合、専門家チームによる検証を行い、5年〜終生の公務員試験資格のはく奪処分を下す。公平公正な試験を妨げる行為は容認しない。

また中共中央組織部と国家公務員局は、試験問題に対しいかなる参考書も指定していない。また予備校などに受験学習を委託したこともない。それらを名乗る出版物や組織は、今回の試験とは一切無関係である。

これに関しては、2015年度は募集人員2万2249人に対し、応募者140万9000人、2016年度は同2万7817人に対し、139万4600人だった。およそ50倍の倍率だ。専門家によると、今年の募集人員は120を超える中央機関と機構で2.7万人と見られ、昨年の水準と変わらない。

しかし経済減速の影響もあり、応募者はこれまでの最多、2014年の152万人を上回る、と予想されている。しかし変化もみられる。

4つの変化

変更点は以下の4点である。

1 基本的な動向として行政サービス分野での招へいを10〜15%増やす。大学卒で田舎の官吏に就く機会は増える。優秀な大卒に行政最前線の経験を積ませる。特殊職位を除き、2年以上の地方業務を課す。

2 今年も共通試験プラス専門試験を課す募集職種がある。昨年は、銀行監督管理委員会、証券監督管理委員会、外交部、商務部、その他8部門だったが、新たに公安機関人民警察部門もこの方法を採用する。

3 貧困、低所得層に受験費用の減免などで配慮する。居住地で申請できるよう手続きを簡略化する。

4 ポルトガル語を追加。日本語、フランス語、ロシア語、スペイン語、アラビア語、ドイツ語、韓国・朝鮮語についで受験第二外国語グループににポルトガル語を追加する。

■募集人数に党員、共青団枠あり

地方における国家機関、直属機構の募集職位と人員も予め分かっている。

例えば山東省・青島市の場合、山東省海事局は募集職位6、募集人員16人、済南鉄路公安局、9職位、19人、青島市国家税務局87職位230人、山東出入境検験検疫局、6職位、7人、国家海洋局北海分局、6職位、6人で、合計129職位290人である。当然応募は人気の高い職位に集中する。そしてそれは役得の多い職位と考えて間違いない。

この290人のうち共産党員を求める枠39人、共産党員または共産主義青年団員の枠、18人、資格問わず232人である。大まかにいって共産党員は3倍以上有利である。

どれだけ公正な試験をうたおうと、最初から前提が違っている。腐敗の種は、選抜の段階から存在していた。試験そのものに徳が優先されていないようである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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