「2030年までには銀行が無人業務化されている」との予測を、KPMGが最新レポートの中で示した。テクノロジーが急速に人間の生活を変化させている近年、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を融合させることで、現在のすべての銀行業務をデジタル化させるという発想に基づいたものだ。

主にセールス、管理、トレーディングといった業務縮小が大手金融機関で相次いでいるが、KPMGの予測が的中すれば人員整理・削減どころか「完全消滅」ということになりそうだ。

優秀なロボット秘書と人間は共存可能なのか?

KPMGの見解によると、支店、カスタマーセンター、販売部門など、従来は人間の従業員が対応している分野が、今後15年足らずで完全デジタル化され、Appleの秘書機能アプリ「Siri」で採用されている技術の進化版「EVA(Enlightened Virtual Assistant)」が、それらの業務を請け負うことになる。

EVAは単に顧客からリクエストされた金融関連業務を流れ作業的にこなすだけではなく、各個人の需要に合わせて最適と思われるアドバイスを行う「総合アシスタント」の役割を果たすことが可能だ。

一例を挙げると顧客の支出記録から外食への支出が増えていることを把握し、「最近食生活のバランスが崩れているようなので、ヨガなど軽いエクササイズをお勧めします」などと注意してくれる。同意すると顧客のスケジュールをチェックし、最適なヨガクラスの予約から支払いまで手配してくれる。

資産管理に関しても、金利の高い口座に貯蓄の一部を移動させたり、誤って加算された手数料の払い戻しを請求したりなど、優秀なロボット秘書としての能力を発揮すると期待されている。

KPMGは銀行がカスタマーサービスの向上に努めている事実を評価する一方で、「銀行の改革はまだ1割ほどしか完了していない」とデジタル改革の進化速度が遅い点を指摘している。テクノロジー企業が収益の1割から2割を研究開発に投じているのに対し、銀行の投資額はその10分の1程度にとどまっている。加速するテクノロジーの進化を考慮にいれた長期的戦略を打ちだすのであれば、収益規模にかかわらず改革スピードをあげることが必須となりそうだ。

ここでの最大の懸念は、やはり「人間とロボットの共存の割合」だろうか。消費者にとっては利便性を追求した生活に改善される反面、銀行の無人化どころか、個人秘書や管理栄養士、ロボットアドバイザーの出現が脅威となっているファイナンシャル・アドバイザーといった職の存続も危ぶまれてくる。この重要な課題を人間はどのような手段でクリアしていくのかが気になるところだ。(ZUU online 編集部)