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(写真=PIXTA)

中国公安部と四川省公安機関は、四川眉山“古文化遺跡特大文物案”を解決に導き、10の盗掘犯罪団、70人の容疑者を拘束、文物1000点を奪回したと発表した。国宝級の「虎の金印」写真も公開し、2年に及ぶ精密な内偵捜査の成果と自賛している。

昨今流行の新進のネット詐欺団に比べ、永きにわたって存在し続ける古典的犯罪団である。どのような仕事をしているのだろうか。そのリアルな姿を追っていくと、とても現代法治国家の出来事とは思えない、映画「インディ・ジョーンズ」ばりの大がかりな組織犯罪だった。

盗掘団のスケールは?

今回の押収文物は、国家一級文物8件、二級文物38件、三級文物54件、市場取引価格は3億元以上に達した。本案件は改革・開放以来では最も影響力の大きな文物盗掘事件である。

2014年の年初、警察に一つの情報がもたらされた。河道付近に住む住民たちが、専用設備を利用して“江口冗銀遺跡”に夜間潜入している。また文物の商人たちも出入りし、暴利をむさぼっているようだというものだった。

警察は初動捜査後の同年5月から、専従の捜査チームを結成した。同チームの1年の内偵により“江口冗銀遺跡”には、6つの盗掘団、3つの売買団体とその構成員が巣食っていることを突き止めた。かれらの原籍は全国10の省市に及んでいた。

公安部と四川省公安庁は摘発すること決定し、2015年4月25日午後1時から、212人の捜査員を動員して踏み込んだ。この日12時間に及ぶ集中行動により、31人を拘束、241の工具を押収するとともに、1000万元の資金を凍結、18カ所の不動産を差し押さえた。他に潜水服30着、酸素ボンベ24台、金属探知機6台などの装備も押収されている。

売買ネットワーク摘発

すでに売りさばかれた文物を追跡すると、北京、山西、浙江、チベット、重慶など10以上の省市におよび、その行程は10万キロ以上だった。専従班の取り返した、2013年に盗掘された国宝級の「虎の金印」は、800万元で古物商の手に渡っていた。

こうした販売ネットワークの摘発に、さらに1年を費やした。中心人物の范某は、西北の出身、四川省・成都で貿易会社を経営していた。専従班は2015年4月から、范と接触、正面きって捜査に乗り出した。范は小口の盗掘品扱いは認めても「虎の金印」など大物については、頑として否定し続けた。専従班は証拠を収集しつつ、1年かけて范を追い詰め、2016年4月に至って、ようやく強制捜査に着手した。范の収蔵庫を発見し、102点の文物押収に成功した。

盗掘団の近代化

盗掘団は2013年以降、急速に近代化を成し遂げたという。河川土木や考古学の学習につとめ、最新装備を購入した。潜水技術の習得では自前の基地すら所持していた。盗掘団の間には勢力争いはあったものの、勢力圏の警戒は怠らず、作業は注意深く、深夜のみ行っていた。優れたリーダーの存在は疑いない。

これほどの犯罪組織が活動できること自体が大きな問題だ。組織を壊滅させるまで2年もかかった。

国土の広大さ、国民の骨董・お宝好き、個々の貪欲さ、など中国的性向が知らず知らずのうちに、大がかりな盗掘団を保護していたのだ。善悪よりも稼ぐ力のあるリーダーを大切にする伝統も健在だ。とても法治国家の内実があるようには見えない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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