相続について税金がかかるほど財産がないから関係ないという人が多いのは事実だが、意外と贈与税には関係する人は多いのだ。なぜなら、生きている間にかわいい子供や孫に財産を譲りたいと思う人は世の中たくさんいるからである。

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(写真=PIXTA)

ところが、贈与に関しては、普段税務署のチェックが入ることはほとんどないため贈与税がかかる範囲を超えて贈与してしまっている人が多いのだ。そこで、今回は贈与税の申告をしなかったらどうなるのかを検証してみよう。

目次

  1. 贈与税の時効はあるのか?
  2. 贈与税の申告逃れは難しい
  3. 時効前に見つかった時は?
  4. 贈与税を払いすぎたら?
  5. 贈与の注意点
  6. 贈与をうまく活用するには?

贈与税の時効はあるのか?

そもそも贈与税は受け取る側にかかるのだが、贈与税の申告をしなかった場合はどうなるのだろう?贈与税の申告期限内に作為なく、贈与税の申告をしなかったとしよう。その後6年間税務署から捜査、指摘がなければ時効になる。ただし作為的に申告しなかった場合は1年加算され時効は7年になるのだ。

そもそも合意がなければ贈与は成立しないのだが、もらっていると認識がなかった場合は作為がないといえるだろう。しかしもらっていると認識していてもどうせわからないだろうと思い申告しなければ作為があったとみなされるだろう。また、贈与だと思ったものが贈与とみなされなければ別な税金が課せられる可能性があることも押さえておく必要がある。

<関連記事>贈与税の申告が必要な場合は?覚えておきたい贈与税の基本

贈与税の申告逃れは難しい

時効成立まで事なきを得れば確かに税金は払わなくてすむが、それはなかなか難しいのが現実だ。確かに今すぐ贈与したことはわからないが、いずれわかってしまうだろう。

その理由はマイナンバーの導入だ。今後既存の口座にもマイナンバーを適用されるようになればマイナンバーで紐付けされ預金額やお金の流れが簡単に追えるようになるのだ。

また、不動産の贈与の成立には登記の変更が必要なためその時点で税務署にわかってしまう。そして最終的に相続の際にわかってしまうのだ。なぜなら税務署は過去約10年間の口座の履歴を調査できる権限を持っているからだ。

つまり、贈与税を逃れることは難しいということになる。

時効前に見つかった時は?

もし、贈与税の申告をしていなくて時効前にみつかったらどうなるのだろう?

税逃れの罪は重く加算税や延滞税がかけられる。悪質な場合は刑事罰ということになってしまうかもしれないのだ。これは贈与税の申告をしたとしても過少申告だったら同じことである。もともと贈与税は税率が高いうえに追加の税金となると相当の負担になるのだ。

もし、申告していない事が判明した場合は早めに税務署へ相談することをお勧めする。

贈与税を払いすぎたら?

贈与税を納めないと大変なペナルティが待っていることは理解していただいただろう。では、贈与税を払いすぎた場合はどうなるのだろう。

実は期限内なら還付請求ができるのだ。これを贈与税の更生の請求と言い、「更生請求書」に事情等を記入し他の必要書類と共に提出する。平成23年より新たな法律が施行され贈与税の申告期限から1年以内だった期限が6年に延長されている。

もし過去に贈与税を払った事があるなら払いすぎではなかったかの検証をしてみると良いだろう。

贈与の注意点

贈与は自己判断で行いがちであるが、実際は贈与とみなされない場合もある。

毎年110万円以内なら贈与税がかからないという事だけにとらわれてしまい、贈与の方法によっては贈与自体が否認されることまで頭が回っていない人もいる。特に多いのは名義預金や定期贈与である。

例えば、贈与する相手の名義の通帳に預金をしていた場合や、贈与されている事実は知っていても通帳を贈与する側が持っていた場合だ。前者はお互いの合意がないため贈与とはならずただ預けているだけと判断される。後者は実際にお金の管理をしているのは贈与する側のため権利が贈与される側に移転していないという事で贈与として認められないのだ。

また、贈与税のかからない100万円を10年間、毎年決まった時期に贈与したい相手に渡していたとしよう。これは定期贈与とみなされ結果的に1000万円を渡したかったのだろうと判断され1000万円に贈与税がかかることもあるのだ。
つまり素人の知識では贈与はなかなか難しいという事になる。

贈与をうまく活用するには?

しかし、次世代への財産継承の相続において相続税がかかるのか、かからないのかに関わらず贈与という方法はかなり有効な方法である。ましてや生きている間に財産をあげたい人に渡せるのはうれしい限りではないか。

しかし一歩間違えればうれしいはずの贈与が水の泡となってしまう。そうならないために肝心なのは贈与のやり方を間違えないという事である。そのために、自己流で贈与を行う前に相続関係に詳しい、税理士、弁護士、司法書士、行政書士、ファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめする。

廣木智代 ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。 FP Cafe 登録FP。