相続税,節税,計算
(写真=PIXTA)

「相続税なんて、関係ない!」

あなたはそう思っていないだろうか?もしそうなら、ある日突然、思いもしなかった相続税に悩まされるかもしれない。財産をもらったはずが、かえって損をしたということにもなりかねないのだ。知らなかったではすまないのが、相続税だ。あの時知っていたら…となる前に、これだけは知っておきたい基本のポイントをおさえておこう。


相続税とは?

相続とは、亡くなった人から遺産を受け継ぐことであるが、そもそも相続税とはどういう税金なのだろうか?

相続税は、亡くなった人から受け継いだ財産にかかる税金である。現金・預貯金、土地・建物などの不動産、株式など、亡くなった人の財産すべてに税金がかかるのが原則。ただし、資格など亡くなった人に限り有効なものや墓地などのほか、法律で相続税がかからないとされた財産については相続税の対象から除かれる。

こうした相続税がかかる財産をもとに、相続税を計算していく。一般に、財産が基礎控除を超えれば相続税の申告が必要だが期限があるので気をつけなければならない。期限は亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内。亡くなった人の住所地の税務署に申告するだけでなく、相続税もこの日までに払わなければならない。

もし期限を過ぎると延滞税など余分な税金がかかることになる。また、申告期限までに申告が必要な特例もある。1日でも過ぎれば折角受けられる特例もムダになりかねない。また、気を付けたいのは申告だけではない。期限までに相続税も払わなければならないのだ。相続税は一度に全額現金で納めるのが原則。どうしてもというときには、延納(分割払い)や物納(財産そのもので払う)の制度もあるので早目に検討しよう。

相続税の計算の手順

次に、相続税はどのように計算するのかを見ていこう。

亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」という。相続人は財産をもらえる権利(取り分)があるが、この取り分の割合が「相続分」だ。相続人や相続分については法律で決められたものがある。これを法定相続人・法定相続分という。配偶者は常に相続人となるが、その他は順番が決まっており、子(直系卑属)→父母(直系尊属)→兄弟姉妹と相続人になる。

相続分はだれが相続人になるかで違ってくる。配偶者と子ならそれぞれ1/2ずつ、配偶者と父母なら2/3・1/3、配偶者と兄弟姉妹なら3/4・1/4である。配偶者以外の相続人が複数いる場合には、それぞれの相続分を人数で均等に分けることになる。

相続税の計算の流れは次のとおりである。

1.相続財産の課税価格を計算

相続財産から葬式費用や債務を引き、贈与財産を足して計算する。

2.課税遺産総額を計算

1から基礎控除額(「3000万円+600万円×法定相続人の数」)を引く。基礎控除額はここまでの財産なら、相続税がかからない金額だ。配偶者と子2人なら4,800万円、子2人だけなら4,200万円となる。

3.相続税の総額を計算

2をもとに、法定相続分通りに相続したとして相続税を計算する。それから、実際に相続した金額で割り振る。

4.納付する相続税を計算

3から、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などを受けられる場合には、差し引く。仮に、1億円の財産を配偶者と子2人が法定相続分で相続した場合の相続税は、相続人全員で725万円、配偶者は0円、子2人がそれぞれ362.5万円となる。

どんな場合に相続税の対象になるの?

①不動産編

相続財産といえば、まず「不動産」。不動産は、相続財産の約5割を占めるもの。まず自宅がいくらなのかを確認しておこう。

自宅は土地と建物とに分かれる。一般に土地は「路線価」をもとに計算する。路線価とは道路についている1㎡当たりの値段だ。この路線価に土地の面積をかけて計算していく。

土地については小規模宅地等の減額という特例がある。条件に合えば、1億円の土地が2000万円で計算できる大きな特例だ。建物は「固定資産税評価額×1.0」で計算する。

土地・建物を合計して、不動産がいくらかを計算する。

②保険編

次に保険を見てみよう。相続税がかかるのは、不動産や預貯金だけでない。保険金にも相続税がかかる。

まずは、保険の契約内容を確認しよう。契約者(保険料負担者)・被保険者が被相続人、死亡保険金の受取人が相続人なら相続税がかかる。だが、この場合、生命保険金等の非課税を受けることが可能だ。「500万円×法定相続人の数」までなら相続税はかからない。

例えば、相続人が配偶者と子2人の場合なら、500万円×3人=1500万円となる。なお、相続人が相続放棄した場合には、放棄した相続人が保険金を受け取ることはできるが、この非課税は受けることができない。

③葬式編

相続が起こったら、まず葬儀の手配だ。葬儀にも一般葬や家族葬などいろいろあるが、一般的な葬儀だと200万円程かかる場合もある。この葬儀の費用は、相続税ではどうなるのか?葬儀の費用は相続財産から引くことができる。

ただし、何でも引けるのではない。引くことができるのは、遺体運搬費用やお布施・通夜・告別式の費用など、葬儀にかかった費用だ。香典返戻や法要にかかった費用などは引くことができない。

覚えておきたい節税テク

相続税は財産にかかる税金であるが、この相続税の節税方法では、大きく3つのアプローチが考えられる。

1.控除や特例をフルに活用する

相続税の計算で財産から引けるものがある。基礎控除、小規模宅地等の減額、生命保険金等の非課税、配偶者の税額軽減など、これらの控除や特例をフルに活用することで、相続税を安くすることもできる。

2.相続財産を減らす

相続税は相続財産によって税金が変わってくる。当然財産が少なければ、支払う相続税も少なくてすむことになる。

3.相続財産の評価額を下げる

相続税は財産ごとにいくらかを計算する。それぞれの財産でも計算方法は違う。現金や預貯金は1億円あればストレートにほぼ1億円として相続税を計算する。いわば100%課税だ。計算方法の違いによって、相続税を少なくという方法も一つの選択肢である。

相続税にまつわる注意すべきポイント

いざ、というときにあわてないように早目の相続対策は有効な手段だ。だが、相続対策で気を付けたいことがある。一般に相続対策には、節税対策、納税資金対策、分割対策の3つがある。相続対策といえば、まず節税対策だと思うかもしれないが、それは危険だ。相続は、税金だけの問題ではない。

相続は、ある日突然やってくる。相続税を払う・払わないにかかわらず、相続したら相続税は必ずついてくるものと考えよう。知らずにいたら、結局何年もかかってやっと相続税を払い終えたということにもなりかねない。相続税で最も高いリスクは、現状を知らないということだ。プラスの財産だけでなく、借金があるかどうかは是非確認しておくことをおすすめしたい。

中島 典子 税理士・社会保険労務士・CFP
大手外資系会計事務所の税務部門を経て独立。個人・オーナー経営者・起業家のお金の悩みごとをワンストップでトータルサポート。子どもからシニアまでの金融経済教育で活動。ファイナンシャル・プランナー中島典子税理士事務所・広尾麻布相続センター 代表。 FP Cafe 登録FP。