贈与税は贈与を受けたすべての財産に対してかかる税金だが、控除や特例などを利用することにより、非課税で済ませることが可能だ。今回はその中でも代表的な、住宅購入にまつわる非課税措置について解説する。そのほか、相続税対策としてポピュラーな暦年課税制度の基礎控除枠活用に関する注意点も紹介するので、利用を検討されている方はぜひ参考にしていただきたい。

目次

  1. 住宅取得等資金の贈与税の非課税
  2. 未成年に贈与する場合は
  3. 非課税枠110万円でも注意
  4. 詳しくは税理士や税務署に相談してみよう

住宅取得等資金の贈与税の非課税

住宅購入において発生する贈与税について定められた非課税措置を「住宅取得等資金の贈与税の非課税」と言い、平成27年の税制改正により見直しが計られたものを特に新非課税制度と呼ぶ。

新非課税制度は「平成27年1月1日から平成31年6月30までの間」に行われた贈与に対して適用されるもので、これ以前に一度も同様の制度(旧非課税制度)を利用していないことが大前提となる。

新非課税制度の適用により認められる非課税限度額は、最低300万円から最高3,000万円と非常に幅がある。住宅を購入する年度によって消費税が変動する影響や、購入する住宅が省エネ対策の施されているものかどうかなどが大きく関係しているためである。

細かい条件を挙げ始めるとキリがないが、住宅を購入する予定があるならば、頭の片隅に入れておいて損はないだろう。詳細は国税庁のホームページで確認できるので、購入したい物件情報と照らし合わせてみると良い。

ただし、この非課税措置はあくまでも相続税節税を促す制度であることを理解しておく必要がある。そのため、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」が適用されるのは親から子(あるいは孫)への贈与に限られている。加えて、受贈者が贈与を受ける年の1月1日において成人していなければならない。

未成年に贈与する場合は

では成人していない未成年へ財産を贈与する場合はどうすれば良いか。未成年のほかにも、さまざまな事情により条件を満たせず、特例や非課税措置の適用が受けられない場合は、暦年課税制度の基礎控除枠を活用することになる。

暦年課税制度とは、いわゆる一般的な贈与に適用される贈与税のことであり、毎年110万円の基礎控除枠が設けられている。この控除枠の利用には特に制限がなく、贈与に際してたびたび制度利用のための申告をする必要などもないため、気軽に頼りやすい存在だ。

また、毎年110万円という制限はあくまでも受贈者(贈与される側)に定められた控除枠であるため、贈与者(贈与する側)は複数人に対して贈与を行うことが可能せである。計画的に利用すれば、不動産などといった価額の大きな財産も、思いのほか短期間で贈与できるのである。

非課税枠110万円でも注意

しかし、なにも知らずに暦年課税制度の基礎控除枠を活用してしまうと、結果的に一括贈与と見なされまるまる贈与税がかかってしまうケースが発生する。これはレアケースなどではなく、しばしば発生するものであることを認識していただきたい。

当事者間では毎年110万円の贈与を行っていたつもりでも、税務上においてはそう見なされないことが多いのだ。このような状況が起こる原因は、確かに毎年贈与がなされていたという証拠が不十分な場合や、そもそも贈与と見なされていなかった場合などである。

前者の対策はシンプルだ。税務上効力を持つレベルの記録を明確に残せば良い。手軽に実践できる方法としては、贈与を口座振込によって行い、通帳に記録を残すというものがある。

ただ、これだけでは後者の対策にはならない。口座振込による財産贈与を利用する場合に多いのが、確かに記録を残したものの、その口座の通帳や印鑑を贈与者(親や祖父母)が管理してしまっていたというパターンだ。この場合、たとえ贈与がなされた口座の名義人が受贈者であっても、実質的には変わらず贈与者の管轄と見なされ贈与に含まれないのである。

以上のことを知らぬまま、成人や結婚を機に通帳を渡すとそれまでの贈与に関して一括で課税がなされ、気付かなければそのまま脱税となってしまう。申告時期が遅れてしまえば、その期間に応じてペナルティが課されることになり、タイミングによってはまるまる贈与税がかかるどころの課税では済まなくなってしまう可能性さえある。

詳しくは税理士や税務署に相談してみよう

分割贈与と認められるかどうかは結局のところ税務署の判断にゆだねるほかなく、ここまでやっておけば十分、と素人が判断することは難しい。自分で計画を立てることに不安を感じる方は、税理士などに相談した方が良いだろう。実際に依頼をするかどうかは別としても、やはり専門家の意見は確実に参考になる。

節税が目的なのだから、余計な依頼料など払いたくないという方は、手近な税務署へ問い合わせる、もしくは余裕があれば赴いてアドバイスを受けても良いだろう。いずれにせよ脱税などという不要なリスクを背負うことのなきよう、細心の注意を払っていただきたい。