貴重品を安全に保管するための貸金庫だが、実際の安全度はどれぐらい高いのだろう。米貸金庫保険会社、SDBICの報告によると、昨年米国で火災・自然災害・強盗などの被害にあった貸金庫数は3万3000件。総貸金庫数、2500万件の0.1%に値する。
この数字を低いと判断するか高いと判断するかは個人の基準に任せるとして、高い利用料を支払う価値があるのか否かを、米国の貸金庫事情から検討してみよう。
遺言書、現金を預けると後悔の種に?
多くの貸金庫は鉄格子つきのコンクリートの壁で頑丈に守られており、不審な動きを熱・動作・振動センサーなどで察知する。扉の重さは3トン。並大抵の力ではこじ開けることは不可能だ。
連邦捜査局2014年のデータでは、強盗事件のうち住人不在時の押しこみは73%。住人在宅中の押しこみ強盗は13%を占めている。対する銀行強盗はわずか1.8%。貴重品を自宅や会社などに保管しておくより、はるかに安全であることは間違いない。
しかし預ける前に考慮すべき点がいくつかある。まずは「預けて後々困らないもの」かどうか。ありがちなトラブル例としては遺言書だ。契約者による委任状で代理人のアクセスが許可されるが、生前に登録されていない場合は契約者の意思確認がとれなくなるため、銀行側に拒否されるケースが多い。登記簿謄本などの重要書類も同じである。
次に現金。貸金庫の多くは営業時間帯しかアクセスできない。何らかの事情で営業時間外にまとまった現金が必要になった際、途方に暮れることになる。
また連邦預金保険公社による補償(銀行が破綻した場合、預金者に最高35万ドル/約3678万円までを補償する制度)対象外となるため、預けている銀行の破綻によって財産を失うことになりかねない。災害や盗難にあった際も同様だ。
このような事態におちいると安全なはずの貸金庫が本来の目的を失い、たちまち深刻なトラブルの種と変わる。
これらを考慮するとあらゆる角度から安全性を強化するには、貸金庫に預けいれた貴重品に別途に保険をかけておくことが必須となる。遺言書などを預けるのであれば、生前に専門家に相談して代理人を登録しておくことも重要だ。
内容物の価値や大きさによって異なるが、貸金庫の利用料は年間400ドル(約4万1232円)が相場。そこに保険料や代理人指名料などのコストが加算されると、預けるものによっては結構な出費となる。
自宅用金庫は30ドルから500ドル(約3092円から5万1540円)ほどで購入できるが、強盗にその場でこじ開けられる、あるいは持ち去られる可能性が高いことを考えれば、あまり有効な安全対策とはいえない。
コスト、手間を計算にいれたうえで採算のとれるものを貸金庫に預けるというのが、最も安全な利用法となるだろう。(ZUU online 編集部)