韓国,スキャンダル,パク・クネ,朴槿恵,崔順実
大統領の退陣を求める市民集会(11月5日、韓国ソウル、筆者撮影)

韓国の朴槿恵大統領が崔順実という民間人女性に演説文など大統領関連文書を事前に流し、アドバイスを受けていた疑惑が発覚し、韓国検察は10月31日、崔順実(チェ・スンシル)容疑者を職権乱用の共犯と詐欺未遂の容疑で逮捕した。

崔容疑者は、国家機密にあたる朴槿恵大統領の演説文に事前に目を通したことが明らかになっているが、手も加えていたという。なかには国防・外交・経済・対北朝鮮政策などの重要文書も含まれていたうえ、青瓦台(大統領府)の主要人事にも介入していた。朴大統領は選挙運動や大統領就任後に補佐体制が整うまで助言を受けたと述べたが、最近まで助言を受けていたとみられている。

自らが設立した文化支援団体「ミル財団」とスポーツ支援団体「Kスポーツ財団」に、朴大統領との私的な関係を利用して、大企業から資金を出させ、その資金を私的流用していた。

コネを利用して、娘の鄭維羅氏を名門・梨花女子大学に不正入学させた疑いもある。

「韓国のラスプーチン」の娘

韓国・中央日報によると、朴槿恵大統領と崔順実容疑者の交流は1970年代にさかのぼるという。1974年8月15日、朴正煕大統領(当時)夫人で朴槿恵大統領の母である陸英修が大統領を狙った流れ弾に当たって亡くなったとき、宗教家を名乗っていた崔順実容疑者の父、崔太敏氏が大統領令嬢の朴槿恵大統領に送った慰めの手紙をきっかけに交流がはじまり、崔太敏氏は大統領府に出入りするようになった。駐韓米国大使は報告書のなかで、崔太敏氏を「韓国のラスプーチン」と呼んだと米ワシントンポスト紙は伝えている。

1979年10月26日、朴正煕大統領(当時)が暗殺されたあとも、崔太敏・崔順実親子との交友は続いた。朴槿恵大統領は、1998年、国会議員補欠選挙に当選して政界入りしたが、崔順実容疑者の元夫である鄭允会氏が、国会補佐官や総裁秘書室長として朴大統領を支えた。鄭允会氏はセウォル号沈没事件で大統領の所在が不明となった、いわゆる空白の7時間に会っていたとされる人物で、朴大統領の隠れた実力者と噂されていた。

2014年4月16日、韓国の仁川から済州島に向かっていた大型旅客船「セウォル号」が沈没し、青瓦台(大統領府)秘書室長だった金淇春氏は朝10時に書面で事故の報告を行ったというが、7時間に渡って大統領に会った人はいなかった。この間の朴大統領の行動は明らかになっていないが、鄭允会氏に会っていたという疑惑がもたれており、このことを記事にした産経新聞の加藤達也前ソウル支局長は名誉毀損で起訴されたが、加藤前ソウル支局長によるとソウル中央地検の取り調べの検事が、崔太敏、順実親子に関することをしつこく聞いてきたという。

大統領の退陣を求める市民

2016年10月29日、ソウルの光化門広場で朴大統領の退陣を求める市民集会が行われた。主催者は参加者2000人で届け出を出し、警察は最大4000人を想定したが、実際には1万2000人が集まった。

光化門広場から青瓦台(大統領府)は目と鼻の先である。一部の集会参加者が青瓦台に向かって行進する可能性があるとして、警察は青瓦台がある広場の北側に警察車両で壁を設置して、万が一の事態に備えたが、大きな混乱はなかった。

朴大統領の支持率が5%まで低下した11月4日、大統領は国民に向けて2度目の謝罪を行ったが国民は納得せず、翌2016年11月5日に、ふたたび光化門で市民集会が行われた。参加者は10月29日をはるかに上回る主催側推算20万人(警察推算4万5000人)に達した。

韓国マスコミの反応

韓国最大の発行部数をもつ朝鮮日報は、大統領を支えるはずの与党セヌリ党が、自分たちに向けられた国民の厳しい視線を気にしていないと与党の姿勢を批判している。

第2位の中央日報は、朴大統領は現状の深刻性を認識し、与野党の指導者と会って協議しなければならないと与野党との話し合いを求めているし、東亜日報も野党は要求ばかりせず大統領と直接対話すべきなど、大統領と与野党代表が事態収拾をはかり今後の国政運営を求める論調で、マスコミは大統領と与野党が協議して、一刻も早い事態の収集と国政を正常化するよう訴えている。

韓国の大統領を取り巻く不祥事は今回がはじめてではない。金泳三元大統領は次男の金賢哲氏があっせん収賄の容疑で身柄を拘束され、金大中元大統領も3人の息子が有罪判決を受けた。李明博前大統領も在任末期に実兄・李相得氏があっせん収賄で逮捕された。

韓国の大統領は、就任してから5年の間、強大な権限を有する。内乱または外患の罪を犯した場合を除いて在職中刑事上の訴追を受けないと憲法に規定され、国会の発議による弾劾の規定はあるが、これまで国会の弾劾を受けたのは盧武鉉元大統領のみで、憲法裁判所は弾劾判決を下さなかった。

朴槿恵大統領は11月2日、内閣改造を発表したが、国会とは協議をせず、野党はもちろん与党にも事前に知らせていなかった。野党は首相・副首相など人事聴聞の手続きを拒絶し、国政に支障をきたしている。(佐々木和義、韓国在住のCFP)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)