トランプ政権の発足は、についてオーストラリアのメディアは“ある一定の方向性を持って”勝利を報道している。現地の政治家やコメンテーターは豪州にとって多少の悲劇ではなく「最悪極まりない事態」を招き入れると語っている。
豪州はオープン経済の国としても知られ、多くの日用必需品を世界各国に輸出している。しかも、その輸出にかなりの比重で頼っているのが現状で、輸出によって豪州の経済が大きく支えられているといっても過言ではない。世界でも指折りの輸出大国であることが、国際的に安定した位置づけを守る大きな柱でもあった。しかし、その柱がへしおられる危険性が出てきてしまった。
トランプ氏が勝利の可能性を色濃く見せ始めた時点から、株式市場はネガティブな動向を見せた。開票日の午後1時には急激な落ち込みを見せ、回復は見せたもののASX200(豪州の株式指数)で2%ダウン。この混沌とした動きは、英国の「Brexit(プレグジット)」騒動を想起させた。
トランプ氏は世界に危険をもたらすと報道
ABC(オーストラリア放送協会)他、地方局メディアは、長期での世界的影響を考えると恐ろしい結果が待ち受けていると伝えている。
トランプ氏は今まで築いてきた日米同盟間の安全同盟を諦め、日本を北朝鮮からの核兵器危機にさらすだろうとコメント。おのずと東南アジア圏に密着するオセアニア諸国も影響を受けることになると懸念の声が上がった。
トランプ氏が選挙期間中に公約していたことが現実になれば、英国を中心とした欧州諸国におけるNATOがらみの同盟関係も次第に消滅する可能性があると指摘。「現在すでに米国と欧州間で冷戦状態が構築しつつある中で、ニューヨークの不動産王に一体何ができるのか? これは、想像するだけで恐ろしい」といった声も経済・軍事ジャーナリストらから漏れた。
豪州は英国の御膝元である以上、親が風邪を引けば子にも感染するのであろう。もっとも、21世紀に入ってからはオーストラリア軍への協力体制の呼びかけも進んでおり、今後の軍事同盟のあり方にどのような変化が訪れるか大変不安でもある。
豪州は最近中国との自由貿易を結んだばかりである。豪州国内のスーパーで見かける日用品や衣料品はほとんど中国製であるといっていい。そんな大切な貿易国である中国に対し、トランプ氏が経済的に激しい圧力加えると断言していることも、豪州にとっては眉間にシワが寄るところだ。
豪州は米国と同じ大きさでありながら、地球温暖化政策への取り組みが全体的に遅い。
ただでさえ四苦八苦している中、地球温暖化政策を真っ向から否定するトランプ氏が大統領になれば、豪州での「ストップ温暖化思想」は崩れさってしまう可能性も出てくる。そして、最終的には地球全体の温度も危険レベルに達してしまうであろうと専門家はコメントしている。
ターンブル首相の声「交友関係を結んでいきたい」
ショッキングな開票結果を受けて、マルコム・ターンブル首相は「これからも米国との同盟を確認していき、さらに強い結びつきを続けて行く」と述べた上で、トランプ氏圧勝について「素晴らしい歴史的瞬間」と加えた。
クリントン氏でもトランプ氏でも、誰が米国の大統領になろうと豪州キャンベラと米国ワシントンDCの関係は「ステディ・アズ・ア・ロック(岩のように硬い)」ということであるが、不安が隠しきれない表情だった。
豪州にとっての唯一の希望とは
トランプ氏が米国の大統領になったことで、国への信頼感を喪失し、国を離れようとする動きが出ることが大いに考えられる。
米国にはテクノロジーやサイエンス、医療など様々な分野で優秀な人材が豊富に集まっているが、これらの優れたブレインホールダー達が英語を母国語とする豪州に生活の拠点を移すとすれば、かなりの経済効果につながる。
豪州は土地もあるし、気軽で明るく、革新的なお国柄だ。各企業や大学などの研究者のトップ達がこぞって流れてきても受け入れる器がある。これがトランプ氏勝利で、豪州が考える「唯一」のプラス面だろう。(トリ―・雪香、豪州在住のフリーライター)
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