不動産投資が今脚光を浴びている。その多くはマンション投資を指し、安定的な現金収入を得ながら資産形成ができると、人気の投資である。しかし、投資金額がどうしても大きくなるのが、不動産投資の最大のリスクだ。融資すなわち借金をしてまで投資するのはいかがなものか、と不動産投資に躊躇する方も多いだろう。そこで少額でも不動産投資が可能なREIT(不動産投資信託)についてご紹介しよう。
REIT(不動産投資信託)とはそもそもどんなもの?
REITとは「Real Estate Investment Trust」の頭文字を取った呼称で、「リート」と読む。多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産に投資し、その賃貸料収入や売買益を投資家に分配する金融商品のことをいう。投資信託の1つであり、日本ではJapanのJを取り、J-REITと呼ばれており、2001年9月から証券取引所に上場されている。
J-REITの仕組みは、法律により、「不動産投資法人」という形を取っている。株式会社に似たものだと理解すればよいだろう。J-REITは、株式会社の株式にあたる「投資証券」を資金と引き換えに投資家に発行する。投資家より得た資金をJ-REITは不動産に投資し、賃貸収入や売却益を、株式会社の「配当」のように「分配金」として、基本的には年2回の決算期に投資家に還元する。一般の株式会社の配当と違う点は、収益のほぼ全部が「分配金」とされることだ。一定の条件を満たせば法人税がかからず、内部留保もないためである。
「投資証券」は上場株式と同様に、証券取引所で上場されており、分配金の実績予測による評価をもとにした投資家の需要と供給バランスによって売買価格が決定されている。分配金によるインカムゲインと、投資証券の売買益によるキャピタルゲインが期待できる。株式と同様に売りポジションから入ることもできるため、値下げ局面でも売買差益を得ることが可能である。
REIT(不動産投資信託)の利回りはどのくらいあるの?
J-REITの期待利益は、決算期の分配金によるインカムゲインと投資証券の売買益によるキャピタルゲインであるが、両方共、確定しているものではない。2016年10月末現在、上場投資法人は56銘柄ある。各銘柄の7~9月期の決算報告、市場価格、分配金実績、次期分配金予測などを調べて、どの銘柄を選択するか、個別に検討をしなくてはならない。直近の分配金実績は年率に換算すると、概ね3~6%程度の範囲である。詳細については、「一般社団法人 投資信託協会」が「不動産投信NEWS」を毎月上旬に作成して、Webサイトで公開しているので、参考にしてみるのもよいだろう。
(https://www.toushin.or.jp/reit/newsetc/fudousannews/)
REIT(不動産投資信託)のメリットは?
REITのメリットは以下の4つがあげられる。
少額投資が可能
通常不動産投資は数百万円~数億円の投資が必要となるが、REITでは少額投資が可能となる。
分散投資が可能
不動産投資は、投資金額が大きいため、個人では複数の不動産への分散は難しい。REITでは多くの投資家から集めた巨額の資金により、複数の不動産への投資が可能なため、リスクを分散することができる。
換金性が高い
一般の不動産投資では、売却を決定してから実現するまでに早くても1ケ月、通常は3ケ月程度かかるものであり、それ以上時間がかかることもありえる。J-REITであれば、証券取引所に上場されているため、即時売却の手配ができ、成り行き注文や指し値注文も可能である
プロが運用
不動産投資・運用のプロが実際の運営にあたるため、信頼ができる運営となる。直接投資であるような、メンテナンスやテナントの入退室にかかる管理などの業務も必要がない。
REIT(不動産投資信託)のデメリット・リスクは?
J-REITは、証券取引所に上場されているため、投資証券の取引価格は、常に変動している。また投資先の不動産価格や賃貸料収入も様々な要因で変動する。従って、元本や利回りが保証されているものではないことが、大きなデメリットといえるであろう。
また、直接投資であれば、投資先の不動産の付加価値をあげるために、修繕やリフォームなどの投資をしたり、賃貸料を値上げしたりなど、能動的な努力をすることも可能だが、REITでは、基本的に投資家は受け身の立場となることもデメリットといえる。
リスクとしては、不動産市況に関わるリスク、金利変動リスク、地震・火災のリスクがあげられるが、これはほとんど、直接投資も同様のリスクがあるといえるであろう。REIT特有のリスクとしては、運用の不振・不人気によって、銘柄そのものの上場廃止や倒産リスクがあることであろう。上場廃止・倒産という事態となれば、その投資証券は、基本的に紙屑同然となる。
ETFとの相違点
ETFとはExchange Traded Fund の略称で、日経平均や東証株価指数(TOPIX)などの指数に連動した投資信託のことをいう。個別銘柄を選ぶ必要がなく、値動きがシンプルで初心者にもわかりやすいのが特徴。
ETFは、指数に連動するため、ファンドやファンドマネージャーの実力は関係しないが、REITは、大きくは不動産市況に連動するものの、投資不動産の選択や運用が銘柄毎に実力差が反映するところが大きな違いだといえる。REITを対象としたETFも存在し、日本では主に東証REIT指数をもとにし、2016年11月現在9銘柄上場している。
REIT(不動産投資信託)の特色を生かした投資を
REITは従来の不動産投資の、多額の投資を必要とする点や、流動性の低さを、補うメリットを持っている。高い資金調達力を生かし優良な不動産に投資しその収益を投資家に分配するという仕組みは、REIT独自のマーケットを益々広げていくことであろう。それのみならず、直接投資のリスクヘッジマーケットとして発展する可能性も高い。直接投資とREITの長所を理解し、その両方をうまく活用していくことが、不動産投資の成功パターンとなる日も近いのかもしれない。