マイナンバー,マイナンバーカード
(写真=PIXTA)

2015年10月から運用開始されたマイナンバー制度だが、単純に「自分が持つ番号なのかな」という理解にとどまるような方も多いだろう。しかし、制度をきちんと理解していないと損をすることがたくさんあるのだ。マイナンバー制度を詳しく見ていこう。


マイナンバー制度とは

マイナンバー制度とは、税や社会保障、災害対策といった分野で、法律や自治体の条例で定められた行政手続きを行う際に利用されるものだ。住民票を持っている人に対して1人ずつ異なる12桁の番号が割り振られている。外国籍の方であっても、住民票が日本にあれば番号が与えられるのだ。

マイナンバーの特徴は、番号が一生変わらないということだ。前述のとおり同じ番号を持つ人は存在せず、結婚・離婚や引っ越しなどをしても死ぬまで変更することはできないのである。

そのマイナンバーは、行政や地方公共団体といった公的機関でのさまざまな手続きを効率化するために利用されている。例えば、年金や社会保険、確定申告の手続きを行うときや、マイナンバーによって本人の特定を行うことができる。災害時にマイナンバーがあれば身元確認につながり、一分一秒を争うような緊急事態にも対応しやすくなる。

2018年には、銀行口座に関する手続きにもマイナンバーが利用される予定だ。また、証券会社や保険会社などの金融機関でも、利金・配当金・保険金などの税務処理を行うためにマイナンバーを取り扱うことになる。

加えて、2017年7月以降には、インターネット上でマイナンバーに関する確認や手続きを行うことができるWebサイト「マイナポータル」の導入が検討されている。自分の個人情報はもちろん、住所変更など引っ越しに伴うさまざまな手続きをインターネットで行えるようになれば便利だろう。

マイナンバーのメリットとデメリット

マイナンバー制度は、行政・国民の両方に大きなメリットをもたらす。前述のとおり、個人の特定を行うことが容易になるし、各種手続きをスムーズに行うことができるようになる。一方で、デメリットも指摘されている。この項では、マイナンバーのメリット・デメリットをそれぞれまとめる。

マイナンバーのメリット

・組織間での個人情報のやり取りをスムーズに行える

全国の公的機関で番号によって個人情報を管理できれば、データの共有や連携がスムーズになるだろう。「役所の手続きは時間がかかってしかたがない」と感じる人は多いが、マイナンバーによって時間短縮につながることが期待できる。

・人的ミスの発生を減らすことができる

マイナンバー導入により手間と時間がかからなくなることで、人的ミスの発生率も減らすことができるだろう。マイナンバーで一括管理されていれば、何かあったときの修正もしやすくなると考えられる。

これに加えて従来と比べて手間が減る分、コストや人員の削減につなげ、その分のリソースを別の仕事に回すことが可能になる。その結果、公的機関のサービスが今までよりも充実したものになれば願ったりといえるだろう。

マイナンバーのデメリット

実は以前からマイナンバー制度は検討されていたが、なかなか決定しなかったのは少なからずデメリットがあるからだ。

・プライバシー侵害の恐れ

個人情報を一括で管理できるということは、言い換えれば、個人情報をまとめて手に入れることができるということでもある。国や自治体が特定の人物の情報を簡単に入手できるというのは、プライバシーの侵害につながる恐れがあるのだ。

例えば、もし万一マイナンバーの管理者がよからぬ意図を持ってしまった場合、本来の業務では必要ないはずの情報にまでアクセスされてしまう可能性がある。そのようなことにならないよう、マイナンバーの管理には徹底が求められる。

・流出・漏えいした場合のリスクが大きい

マイナンバーはさまざまな情報と紐づけられる。当面は税金関係や社会保障の手続きのみと限定されているが、将来的には銀行口座や犯罪歴などにまで紐づけされたり、マイナンバーカードに健康保険証を取り込むことなどが検討されている。あまりにも多くの情報とつながれば、流出してしまった場合のリスクは大きい。悪用された場合には全財産を失う恐れもある。

マイナンバー関連の事件や被害

海外では、マイナンバーが悪用された事例は多い。マイナンバー関連の犯罪は、その国のマイナンバーでどんなことができるのかによってさまざまである。特にマイナンバー先進国であるアメリカでは、他人のマイナンバーを利用して本人になりすまし悪事を働くなりすまし犯罪が多発している。

海外では銀行口座・クレジットカードの発行、その他民間サービスの本人確認と幅広く使用されるケースが多いので、悪用される幅はかなり広いといえる。海外で実際どういう犯罪が起きているかまとめてみた。

マイナンバーが悪用された事例

・銀行口座を作られて犯罪に使われた

・クレジットカードを作られて引き落とされた

・勝手に借金された

・知らない人と結婚していることにされた

・自分名義の車が犯罪に利用された

・住民票を勝手に移されて、自分の家に誰かが住んでいる

・印鑑登録をされてしまい、いろいろな契約を交わされた

・携帯電話を契約されて犯罪に使われた

これらは一例でしかないが、このほかにもさまざまな犯罪が起きている。日本でも将来的に、マイナンバーを悪用する被害が増加する可能性はあるだろう。そうした犯罪の被害者にならないためにも、事前にしっかりと対策を講じることが必要だ。

安心して使うには?

日本では、マイナンバー通知が始まってから制度に関わる不審な電話やメールが増加しており、国民生活センターに多くの相談が寄せられている。

・行政機関を名乗る電話で、「マイナンバー制度が開始すれば手続きが面倒になるので、銀行口座の番号を教えてほしい」と言ってきた

・自宅を訪ねて来た人物に「マインナンバーは届いたか」と聞かれた。「届いていない」と答えると「1万円払えばすぐに届ける」と言われた

・聞いたこともない機関から電話があり、「あなたのマイナンバーを管理する」と言われた。「専門の人に管理してもらえるのか」と尋ねると「私が管理する」との返事で怪しいと感じ、電話を切った

マイナンバーの通知や利用手続きについて、行政機関から口座番号・資産・保険の状況といったものを聞かれることはない。通知カードも無料で発行されるので、交付の代金を請求されたらおかしいと疑うこと。

国民生活センターでは、通知カードが届く前や届けられているとき、届いたあとなどのタイミングに合わせて不審な電話がかかってくると伝えている。今後も不審な電話やメールが手口を変えてアプローチしてくる可能性があるので注意しよう。少しでも怪しいと感じたら、国民生活センターに相談することが大切だ。

通知カード・マイナンバーカードの扱いについて、注意するポイントが3つあるので知っておこう。

・通知カードを受けとったら、きちんと保管しておく

・マイナンバーの番号はむやみに人に教えてはいけない

・書類などにマイナンバーの記入を求められた場合、税や社会保障などの手続きで必要な場合のみ記入する

マイナンバーは社会保障・税金・災害対策の3つの分野に限り法律で使用が認められているが、3分野といっても中身は広い。もしも「マイナンバーを教えてほしい」と言われたら、信頼できる相手かどうか、どういう目的で使われるのか、怪しくないのかといったことをきちんと確認しよう。

通知カードとマイナンバーカードの違い

マイナンバーの通知を目的にマイナンバーが記載された「通知カード」は、「マイナンバーカード」ではない。意外に混同しがちなので注意しよう。

通知カード

・概要

12桁のマイナンバーをお知らせするためのカード。

・様式

キャッシュカードほどの大きさで紙製。氏名・生年月日・性別・マイナンバーが記載されている。顔写真は表示されていない。

・仕様

身分証明として使用することはできない。

・対象者

住民票を有する人すべて。

・交付開始期間

2015年10月から、簡易書留で各家庭に郵送された。

・再交付

可能。手数料は500円ほど。※自治体により異なる。

マイナンバーカード

・概要

12桁のマイナンバーが記載されたカード。

・様式

キャッシュカードほどの大きさでプラスチック製。氏名・住所・生年月日・性別・マイナンバーが記載されている。顔写真が表示されている。

・仕様

身分証明に使用することができる。また、電子証明書を利用した電子申請などに利用可能。

・対象者

希望した人だけ

・交付期間

2016年から。市区町村の窓口で交付される。

・再交付

可能。手数料は1000円ほど。※自治体により異なる。

通知カードと異なり、マイナンバーカードは身分証明書として使用できるのが大きな違いだが、自分で希望して申請しなければ受け取ることはない。

マイナンバーカードの作り方

1.個人番号カード申請書を記入しよう

通知カードに同封された個人番号カード申請書に記入し、顔写真と合わせて郵送する。パソコンやスマートフォンからのオンライン申請も可能だ。

2.交付通知書を持って窓口へ

申請すると、居住の市区町村から交付通知書が送られてくるので、それと通知カード、本人確認書類を持って窓口に行く。窓口で写真と本人の確認を済ませれば、マイナンバーカードを受け取ることができる。

マイナンバーカードの写真

マイナンバーの申請に使うことができる写真は、縦4.5cm×横3.5cmで、6カ月以内に撮影されたものとされている。正面を向いていて、無帽・無背景の写真でなくてはならない。なお、写真は10年間同じものが使用される。これはマイナンバーカードの有効期限が10年間(発行から10回目の誕生日まで、未成年は発行から5回目の誕生日まで)であるためだ。

マイナンバーにはメリットも多いが、プライバシーの問題など課題も残っている。使用する側も管理する側もしっかりとした対策を考えていく必要があるだろう。