貴金属の投資において、銀は少々特殊な立場にある。金やプラチナは高価買取をうたう業者がCMを打ち、商店街の一角やショッピングフロアの隅に買い取り窓口がある。銀を買い取るという窓口はほとんど見かけないが、投資においては銀を評価する声があるのだ。
貴金属等の中でも銀がオススメな理由
銀は他の貴金属と比べ、安定的でリスクが低いと言われている。純銀は有限資源なのでインフレに強く、値動きの幅が激しいため過去には金を超えるパフォーマンスを発揮したことすらある。また経済が落ち込んでも貴金属ゆえ普遍的な価値が認められていて、情勢次第では値上がりもあり得る。
銀はエレクトロニクス産業や電池などの化学触媒、メッキ、はんだなど工業の各分野において消費されている物質だ。消費されていくものであると同時に需要が存在するものなのだ。銀の価値がゼロになることはない、そう考えられているのである。
銀の相場は?価格の見方
銀は歴史上通貨として用いられてきた例も多いが、それまでの経済圏の外から大量に供給された時に価格を大暴落させたという歴史も持っている。そのため通貨としての安定度では非常に頼りないものだ。工業用途として見ると、その需要は年々拡大の一途をたどっている。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーへの移行が今後も続くようならば、銀需要は更に増え続け、その価値が高くなる可能性は十分にある。
金やプラチナの相場と比べると、銀の相場は乱高下が激しい傾向にある。近年の例で見れば、2008年10月には8ドル台の半ばにあった銀価格だが、2011年4月には50ドル手前にまで急騰し、その後は長期下落を続けていた。この流れが変わったのは2016年1月であり、2016年11月時点ではおよそ17ドル付近だ。買い占めや先ほどあげたような大量の供給が突発的に行われた時の安定性に欠けるため、チャートを見ているだけでは価格予測が難しい品だろう。
どのようにして銀を買うか
最初に述べたように、金への投資と比べて銀への投資はあまり盛んではない。それは、金と比べると銀への投資方法が少ないからという面がある。投資を行える環境が整っていないとも言える状況のため、投資を始めたばかりの人は投資として銀を買える事すら知らない可能性がある。
銀を購入する手段はいくつかあり、銀ETF(上場投資信託)はその代表例だ。証券会社経由で小額から投資が可能。売買手数料が無料になる場合もある。日本国内においては「純銀上場信託 <1542> 」と「ETFS銀上場投信 <1673> の2種類がある。
銀先物取引や貴金属店でインゴットとして手に入れる方法は、どちらもハイリスクであり初心者にはお薦めしづらい。特にインゴットで入手した場合は盗難対策や黒ずみの防止など、なかなかに手間暇費用がかかる。
コインでの入手は比較的容易かつ保存も難しくないが、今度は価格が安定しすぎていて差益が生まれない。
FXや先物取引で有名なCFD(差金決済取引)だと資金効率がよく、取引所のそれよりも小さな単位から取引可能だ。買いでも売りでも取引ができる上に、深夜でも取引可能なのがメリットだ。デメリットとして銀は取引情報が少なく、リアルタイムでの取引は不利を被りやすい事があげられる。
コツコツと買うなら証券会社を経由するのが投資しやすく、短期間で利潤を得るのが目的ならCFDでの取引が高効率になるだろう。
貴金属投資の落とし穴
株やFXに比べて安定度が高いと言われる貴金属投資だが、全くリスクがないわけではない。価格の変動によるリスク、為替の変動によるリスク、金利の上昇による相対的なリスク、盗難によるリスク。これは銀投資に限った話ではなく、貴金属投資全体に言えることであり、避け得ないリスクでもある。
特に盗難によるリスクは他の金融投資においてはほぼほぼ気にする必要のない要素だ。貴金属投資には、現物を保持する可能性があるがゆえのリスクが存在する。これらのリスク管理と釣り合いが取れると判断するのなら、手を出してみるのもいいだろう。
銀特有のデメリットとして、注意したいのが元本割れの可能性だ。銀はそもそもの価格が安い事と、資産価値以上に工業用の価値がある事から、他の貴金属と比べて値動きが荒い。貴金属市場が上昇傾向にあっても、純銀の価格が連動する保証がないのだ。長期的な視点で見ればプラスになる可能性が高いと考えられているが、その間は銀に投資した資金が拘束されるという点は忘れてはならない。
貴金属投資は、好手なのか
貴金属への投資を好む人の多くは、貴金属それ自体への価値を認める人が多い。経済が不安定になった時、金銀プラチナの購入が進むのはその一環である。反面、貴金属投資に乗り気でない人の意見では、経済が破綻するような状況になれば装飾以外での使い道がない柔らかい金属の需要は少ないと言われている。
銀については工業用の需要が高い事と、使われると消費される事が鍵だ。需要と供給の関係からすれば「長期的に見て値上がりする」という予測が立つのである。金価格との連動率も高く、差益を狙う時に使われることもある。最終的な良し悪しの判断はそれぞれに任せることになるが、貴金属への投資は守りの戦略であるということを忘れてはいけない。(ZUU online 編集部)