地銀,フィンテック,横浜銀行,西日本シティ銀行,山口フィナンシャルグループ,コンコルディア・フィナンシャルグループ,大垣共立銀行
(写真=PIXTA)

フィンテックが金融業界に変革を与えつつある中、積極的にフィンテックを活用している地銀が増えてきている。今回はフィンテックを活用し先進的な取り組みをしている地銀4行を紹介しよう。

西日本シティ銀行 スマホアプリで税金の支払いができるサービスなど

福岡市博多区に本店を置く西日本シティ銀行 <8327> は全国の金融機関で初の試みとなる、スマホアプリで税金の支払いができるサービスNCBアプリペイを2016年2月に導入した。

このサービスでは、納付書をスマートフォンのアプリのカメラで読み取ることで、軽自動車税や市県民税、国民健康保険料等をスマートフォンアプリから納付することが可能だ。これまで銀行窓口やコンビニなどに行き、納付していた各種税金などの支払いがスマートフォンから簡単にできるようになったのだ。

事前に西日本シティ銀行アプリに支払い口座を登録する必要はあるものの、インターネットバンキングの契約は不要。同行のキャッシュカードがあれば、誰でも利用することが可能だ。

その他にも西日本シティ銀行ではNCBナイスコールという電話で預金の残高照会が可能なサービスや、オールインワンカードというクレジットカードやローンカード、電子マネーSUGOCA、minocaなどの機能を1枚に付加することが可能なキャッシュカードを提供している。

山口フィナンシャルグループ マネーフォワードと連携

山口県下関市に本店を置く山口フィナンシャルグループ <8418> は傘下の山口銀行(同)、もみじ銀行(広島県広島市)、北九州銀行(福岡県北九州市)の3行でスマートフォンやウェブ向けにマネーフォワードfor YMFGを提供している。

マネーフォワードfor YMFGはマネーフォワード(東京都港区)が開発した自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」をベースに3行の顧客向け機能を拡充したサービスである。

マネーフォワードfor YMFGを3行のインターネットバンキングと連携させることにより、アプリなどから銀行口座の入出金明細・残高がいつでも確認できるだけでなく、クレジットカードの利用履歴や入出金明細から自動的に家計簿を作成することが可能だ。現金での支払いの際もレシートを撮影し、自分で分類管理することもできる。

大垣共立銀行 系列のシンクタンクでフィンテック事業戦略を立案

大垣市郭町に本店を置く大垣共立銀行 <8361> もフィンテック導入に積極的な地銀の一つだ。同行ではグループの調査機関であるOKB総研(岐阜県大垣市)内にフィンテックの事業戦略を立案する部署を設置している。

既に手のひら認証ATMピピットという生体認証ATMを導入し、キャッシュカードや通帳を持っていかなくとも、手のひらをかざすことによって預金の出し入れ等が可能なサービスを提供している。

他にも同行では口座開設を来店や郵送をせずにスマートフォンのアプリだけでおこなうスマホdeOKBというサービスも実施しているが、2017年春からは手のひら認証をさらに発展させ、口座開設から窓口、ATMなど全ての取引を手のひら認証のみで取引可能にすることを発表している。

横浜銀行 神奈川を盛り上げるフィンテックを

コンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> 傘下で神奈川県横浜市西区に本店を置く横浜銀行も、かなりフィンテックに積極的な地銀といえる。2017年3月にスマートフォンで買い物をしてすぐに銀行口座から代金を支払う決済サービスはまPayを提供すると発表した。

このサービスでは、横浜銀行と契約した加盟店で利用者が支払いをする際、専用アプリを使って同行の口座から即時に代金を引き落とすことが可能となる。利用者はクレジットカードに申し込んだり電子マネーをチャージしたりする必要が無く、スマートフォンアプリの操作のみで支払いをすることができるのだ。

加盟店自体にも専用の端末は必要なく、加盟店用アプリを使用することで利用者への請求が可能となる。その他にも同行ではクレジットカード、キャッシュカード、ローンカード、デビットカードが一つになった横浜バンクカードに、Apple Payのサービスを対応させるなど、様々な先進的な取り組みを実施している。

今後同行では住信SBIネット銀行などと共に24時間365日決済可能な送金システムの導入を2017年3月を目途に進めている。現在の国内の送金・決済システムは全国銀行データ通信システムが使用されており、午前8時半から午後3時半までしか稼働していない。新システム導入によって24時間365日決済可能となる。同システムには30行程度の参加を見込んでいる。

加藤毅 営業企画部 金融テクノロジー事業化推進室グループ長も「一部の支店で試験しているロボット(PALRO パルロ)は桜木町の駅前に本社がある富士ソフト製のもの。SNSでは鎌倉のカヤックという企業と、いろいろな取り組みをしています。地銀として、地元の会社と一緒に、皆で神奈川が盛り上がるフィンテックをやっていきたい」と話している。

地銀がフィンテックに取り組む理由

メガバンクに比べ圧倒的に規模が小さい地銀がなぜ今フィンテックに積極的に取り組んでいるのだろうか。現在はマイナス金利政策の影響もあり、預金金利、貸出金利ともに歴史的低水準となっており、もはや金利などの金融サービスでは各銀行とも特徴を出すことが困難である。

そこで地銀はフィンテックを活用し、独自のサービスを提供することで他行との差別化を図る狙いがあるのではないだろうか。

地銀の規模の小ささもフィンテック導入に拍車をかけていると考えられる。メガバンク等は規模が大きすぎシステムの導入・改修に多大な費用が掛かる。地銀の場合は支店数やATMの数も少なく、費用の面で新しいシステムを比較的取り入れやすい環境がある。

今後地銀によるフィンテックの活用がますます活発になると予想される。あなたの街の地銀も例外ではないだろう。( FinTech online編集部

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