コンビニ銀行で最大手のセブン銀行 <8410> は5月に発表した2016年度3月期決算において、純利益が247億1600万円となり過去最高益を更新した。経済低迷の流れに逆らい好調なコンビニ銀行だが、その背景にはコンビニ銀行特有の通常の銀行とは違う収益モデルの存在がある。
好調なコンビニ銀行ATM
一般的な銀行の収益モデルは、預金者からお金を預かり集めたお金を融資するものだ。銀行側は預金者には利息を支払うが、貸付をする場合は預金金利より高い金利で貸付を行い金利差で収益を上げている。もちろん銀行が独自で行う資産運用等もあるが、基本は金利差で収益を上げることである。
しかしコンビニ銀行の場合は、同じ銀行業ではあるが、収益の柱が違う。コンビニ銀行の収益のほとんどが、コンビニに設置してあるATMの手数料から成り立っている。
一般的な銀行ではATMの設置場所が少ない場合や、夜間ATMが使えない銀行もまだまだたくさんあるがコンビニ銀行のATMの場合は24時間365日使用可能であり、全国の至る所にある。そのおかげでお金を降ろしたい預金者が利便性の高いコンビニ銀行ATMを頻繁に活用するのだ。
ローソンも銀行業に参入
好調なコンビニ銀行にローソン <2651> も新規参入を予定している。ローソンは2016年11月下旬に三菱東京UFJ銀行と共同でローソンバンク設立準備会社を設立すると発表しており、今後は金融庁に銀行業免許を申請し、2018年にも開業を目指す予定だ。
ローソンでは既に全国の約1万2000店の9割にATMを設置しており、これまではATMを集客も兼ねてコンビニに設置していた。今後は自社で銀行業免許を取得し、サービスの拡張をおこない集客だけでなくATMで収益の底上げを狙いたい考えだ。
現在コンビニ銀行はセブン銀行の他にもミニストップやイオンにATMを設置しているイオン銀行などもあり、ローソンの参入によってさらに競争が激化する可能性もある。
連続最高益更新中のセブン銀行
ローソンの新規参入などなにかと話題の多いコンビニ銀行だが、特に近年業績が伸びているのがセブン銀行である。2016年度3月期決算において、純利益が247億1600万円となり過去最高益を更新したと前述したが、実は最高益更新は4期連続となっている。そしてセブン銀行の業績見通しによると、2017年度3月期も過去最高益を更新する見通しとなっている。
世界経済の低迷や急激な為替変動、株価の乱高下など、様々な業績下振れ要因があったにも関わらず、セブン銀行は全く意に介さないという好調な業績を維持し続けている。
預金口座数は2016年9月末時点で160万9000口座と、年々増加している。個人預金残高も右肩上がりに増えており、2016年9月末時点3955億円となっている。
口座数、預金残高の増加と共にセブン銀行のATMの数も年々増え続けている。現在では全国全てのセブンイレブン店舗はもちろんの事、セブンイレブンの店舗以外にもATMの設置をすすめており、2016年9月末時点でATMの台数は2万3029台だ。
セブン銀行はなぜ伸びたのか
業績、個人預金残高、口座件数、ATMの台数等全てが右肩上がりに成長しているセブン銀行だが、なぜここまでの成長を遂げたのだろうか。
実はセブンイレブンに設置しているATMは当初の計画では自ら銀行業の免許を取るつもりではなかった。本来であればATM設置銀行の出張所のような形で他行の預金を引き出すのみという形で計画は進んでいた。
しかしATMで預金の出し入れをするために統合ATMネットワークへ加盟する予定だったのが拒否されてしまい、仕方なく自社でネットワークを構築したのだ。開発コストは高くなったと考えられるが、自前のATMネットワークを使用することにより自由な発想でATMを運用することが可能となった。結果的にセブン銀行独自の戦略を打ち出すことが可能となったのだ。そのためセブン銀行の引き出し手数料は提携先の各銀行によって自由に取り決めがなされている。
セブン銀行が後発でATMを設置したことも大きな要因の一つだ。訪日外国人が増え続ける昨今、海外のクレジットカードなどでキャッシングをしたい外国人も多くいる。しかし海外のクレジットカードと日本のクレジットカードでは磁気ストライプの位置が違うため、日本の金融機関のATMでは対応していないところが数多くある。
そんな中、金融業界に後発で参入したセブン銀行は後発の強みを生かし当初から海外のクレジットカードの磁気ストライプの位置にも対応したAMTを設置し、訪日客の受け入れにも成功した。
現金の補充の手間がかからないこともセブン銀行の成長を支えている。通常一般的なATMは引き出しの方が多く、頻繁に現金を補充しなくてはならない。しかしセブン銀行の場合はセブンイレブンの売上の入金をATMにすることによって、月1回程度店外から入金するだけで済むのだ。入金回数が大きく抑えられ、結果的にコスト削減にもつながっている。
銀行の常識を打ち破り大きく成長を続けているコンビニ銀行だが、今後新規参入によりさらに大きな変化が起こるかもしれない。( FinTech online編集部 )
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