会社員を始め、アルバイトやパートを含むすべての給与所得者は、年末調整によって所得税を確定しなければならない。これは大部分の給与所得者にとって得であると同時に、税法上では確定申告と同義であるため義務とされている。さておき、せっかく年末調整をするのであればより多くの控除を受けたいところだが、各種所得控除の種類や要件を把握していなければ申告することも難しいだろう。今回は生命保険料控除についてまとめたので、ぜひ年末調整の際の一助としていただきたい。
生命保険料控除とは
生命保険料控除は、納税者が支払った生命保険等に対する保険料について適用が認められる控除である。ここで大切なのは、「納税者が支払った保険料」が控除されるという点。これはその他保険料控除に関しても言えることだが、多くの場合所得控除の適用要件において言及がなされるのは支払者についてであり、保険金受取人などに関しては別に要件が設けられている。特に生命保険料控除では、申告する保険料がいずれの項目に属するかによってもその範囲が異なる。
例えば、配偶者や扶養親族が契約する一般生命保険に対して納税者が保険料を支払っていた場合、これは納税者の生命保険料控除の対象として扱われる。この適用範囲についての詳細は次項で解説するが、ともかく自身が支払った保険料に関してはすべて申告する心づもりでいるべきである。
控除の対象となる生命保険
生命保険料控除では、次の3種類の保険料について控除の適用が認められている。
1.一般生命保険料控除
2.介護医療保険料控除
3.個人年金保険料控除
まず先述した適用範囲だが、1、2は保険金受取人が納税者本人・配偶者・その他親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)であるものが対象、3は保険金受取人が納税者本人か配偶者であるものが対象となっている。
またこのうち、2の介護医療保険控除については2012年の制度改正により新設された項目であり、これを境として2014年1月1日以降に締結された保険契約は新制度、2013年12月31日以前に締結された保険契約は旧制度として扱われている。この新・旧制度の区分は3種類の項目それぞれに適用され、新制度による控除、旧制度による控除、あるいは両方を用いた控除によって控除額が変動する。
適用範囲や適用制度、あるいは適用要件についてはその他にも細かく規定があるため詳細は国税庁ホームページを参照することを勧める。ただし、すでに本年分の保険料を支払っている保険契約に関しては年末調整前に「生命保険料控除証明書」が送付されているはずなので、そちらを参照した方が早いだろう。
控除額の計算方法
生命保険料控除額は、次の表に各々の支払い保険料を当てはめることで算出できる。
(1)新制度に基づく保険料に対する控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
(2)旧制度に基づく保険料に対する控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
(3)新・旧両制度に加入している場合の控除額
適用する生命保険料控除 | 控除額 |
新契約のみ生命保険料控除を適用 | (1)に基づき算定した控除額 |
旧契約のみ生命保険料控除を適用 | (2)に基づき算定した控除額 |
新契約と旧契約の双方について
生命保険料控除を適用 |
(1)に基づき算定した新契約の控除額と(2)に基づき算定した旧契約の控除額の合計額(最高4万円) |
それぞれの控除額を上限で比較すると、新制度に対する控除のみ適用された場合は12万円、旧制度に対する控除のみ適用された場合は10万円、新・旧両制度に対して控除を適用された場合は12万円となる。単純比較においては新制度の適用を受ける方が控除額は大きいが、前述の通り生命保険料控除では配偶者や親族についても適用が認められており、上限額もそう高額でない。上限を超えた保険料に関しては当然申告するだけ無駄になってしまうため、こういった場合は共働きであれば配偶者の生命保険料控除へ補填するなど工夫しよう。
控除の申請方法・書類
生命保険料控除を申請するには、年末調整の際に「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」を提出するほか、先に触れた「生命保険料控除証明書」が必要になる。これは年末調整前に納付者へ送付がなされているはずだが、もし届いていない場合や紛失してしまった場合などは再発行を依頼しよう。ネットでの再発行を受けつけている保険会社などもあるため、そう手間はかからないはずだ。
年末調整で控除する際の注意点
生命保険料控除を申請するときには、そもそも加入している保険が控除対象なのかどうか、また先に挙げたどの項目に当たるものなのかを確認しよう。控除対象の有無については生命保険料控除証明書が送付されていれば問題ないはずだが、項目や新・旧制度については誤って記入してしまうと適用がされなくなってしまう可能性がある。必要な情報はすべて証明書に記載があるはずなので、記入時にはぜひ注意してほしい。