年末調整は、1年間のうちに源泉徴収された所得税について改めて申告することで過不足金額の調整を行う重要な手続きだ。いわば確定申告の代わりであるため税務上大切なことは言うまでもなく、大部分の給与所得者にとっては還付金の有無が決まる手続きでもある。今回は年末調整で必要になる書類やそれらの記入方法などについてまとめたので、これを参考にぜひより多くの所得控除適用を目指していただきたい。
目次
年末調整で必要な書類とは
年末調整ではまず、次の2種類の書類が勤務先(給与支払者)から配布される。
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
一般的には「給与所得者」の部分を省略し、それぞれ扶養控除等(異動)申告書、保険料控除申告書、と記される場合が多い。いずれも年末調整を受けるために重要な書類であり、この記入を誤ると受けられるはずだった所得控除についても適用が認められない可能性がある。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
所得控除はすべてで14種類あるが、このうち年末調整で適用されるものが11種類あり、これらは人的控除と物的控除とに大別される。扶養控除等(異動)申告書では、扶養控除などを始めとする人的控除について申告を行うことができる。以下、扶養控除等(異動)申告書の提出によって受けられる所得控除を箇条書きで示す。
・配偶者控除
・扶養控除(特定扶養控除、老人扶養控除)
・障害者控除(特別障害者控除)
・寡婦(寡夫)控除
・勤労学生控除
・基礎控除
扶養控除等(異動)申告書に記入する内容は、対象とする人物がこれら控除の要件を満たすかどうかを判定するための情報である。具体的には、納税者自身の情報のほか、配偶者や扶養親族の氏名・生年月日・住所・所得金額などの記載が求められる。このとき、取り分け特定扶養控除や老人扶養控除の適用を受けたい場合は生年月日の記入に細心の注意を払おう。
適用要件に年齢が含まれる控除については、当然これを満たしていなければ控除が認められることはない。たとえケアレスミスによる単純な記入ミスだったとしても、年末調整では給与計算ソフトなどによって事務的に判定されることも多く、必ずしも訂正の機会があるとは限らないのだ。最低限、正しい情報を記入することを心がけてほしい。
給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書
保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書では、次の所得控除について申告を行うことができる。
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済掛金控除
・配偶者特別控除
保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書はいくつかのパートに分かれており、まず左側2/3が生命保険料控除と地震保険料控除、右上が配偶者特別控除、右下が社会保険料控除と小規模企業共済掛金控除の申告スペースとなっている。一見すると複雑に見えるが、納税者自身が申告をしない項目については記入する必要もないため、関わりのある記入欄だけに気をつけよう。
各種保険料控除には、当該申告書を提出するほか「保険料控除証明書」の添付が求められる。証明書は各企業、保険会社などから年末調整までに送付がなされているはずだが、もし手元にない場合は事前に再発行を依頼しなければならない。年末調整までに用意できなければ、やはりこれは控除の適用を認められない。どうしても間に合わない場合は、1月31日を最終期限として再年調(再調整)を依頼することも可能なのでこれを検討しよう。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
先に挙げた2つの申告書では計11種の所得控除について申告を行えるが、これ以外にも1つ年末調整で申告を行える所得控除が存在する。それは「住宅借入金等特別控除」だ。この所得控除はマイホームなどを建築、購入、あるいは増改築する際に組んだローンに対して控除が認められるもので、本来確定申告しなければ適用されないのだが、2年目以降は表題の申告書を提出することで年末調整での処理が可能なのである。
当該書類は住宅借入金等特別控除を申請した際に年数分送付されるほか、国税庁ホームページでもダウンロードすることができる(その他書類についてもこれは同様)。記入する内容は非常に単純なので、すでに住宅借入金等特別控除を申請している人は忘れずに申告しよう。
年末調整書類のよくある書き間違い
扶養控除等(異動)申告書の項目でも少し触れたが、各書類には特に注意すべき記入項目が存在する。すべての情報を正しく記入することは当然だが、次の項目については勘違いなどによる書き間違いが多いため特に気をつけていただきたい。
・扶養控除等(異動)申告書
生年月日が各控除の要件に含まれるため重要であることは先に述べた通りだが、このとき扶養控除等(異動)申告書の「年分」を確かめてほしい。通常年末調整では、調整を行う年の「翌年分」の扶養控除等(異動)申告書が配布される。つまり、来年の時点での年齢を記入しなければならない。これは扶養控除等(異動)申告書が、翌年の源泉徴収税を算出するための書類だからだ。
・保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書
一方、保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書は本年分について記入が求められるため期間等に関する書き間違いは基本的に起こらないはずだ。しかし、その年に転職等をした人は社会保険料を自分で記入しなければいけない可能性があるということを覚えておいてほしい。基本的に給与から天引きされている社会保険料については勤務先が把握しているため申告の必要がないのだが、勤務先が知り得ない情報は年末調整で申告しなければいけない。案外忘れがちなポイントなので、ぜひ注意してほしい。
年末調整は控除と流れを知ることが大切
年末調整は一見複雑な手続きに思えるが、自身が適用される控除やその基準となる要件について把握すれば自然と記入する項目も見えてくる。また、扶養控除等(異動)申告書により源泉徴収税を算出し、これを保険料控除申告書などにより年末調整する、という基本的な流れを理解していれば先述のような書き間違いも起こらないはずだ。まずは理解を深めること、これを心がけてみてはいかがだろうか。
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