IMF
(写真=PIXTA)

世界の金融・経済ニュースを見ていると、よく登場するIMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)。

IMFといえば、過去に「日本の消費税率は最低でも15%であるべき」と声明を出したり、次期米大統領に決まったトランプ氏の政策についても、IMFのライス報道官が11月10日の記者会見で、「推測で語るには時期尚早であり、政権発足後の方針を注視する必要がある」と語ったりするなど、世界各国の経済についてコメントを発表する機会が多いイメージがありますが、いったい何をしているところなのでしょうか?

IMFって何をするところ? 189ヵ国が加盟

IMFは加盟国の経済の安定を図るために活動している国際機関で、2016年5月の加盟国は189ヵ国にのぼります。代表である専務理事はフランスの政治家/弁護士のクリスティーヌ・ラガルド氏です。

その目的は「通貨と為替相場の安定化」「国際収支の赤字国や発展途上国への金融・技術支援」「経済危機にある国への金融支援」「非常事態を防止するための監視と解決」とされています。

そのため世界経済の予測や加盟国の経済政策に関する分析を含む幅広い活動を行っていますが、中でも重要なのは、通貨危機、国際収支危機、財政危機などいわゆる「ソブリン・リスク」(国家に対する信用のリスク)の高まりが深刻化した国に対する緊急融資です。

その融資の財源は加盟各国が出資した基金です。融資を受けた国は危機を乗り切った後、資金の返済はもちろんのこと、市場金利に基づいた金利や手数料の支払いも求められます。

IMFの最高意思決定機関は、加盟国の財務相または中央銀行総裁をメンバーとする総務会です。執行機関としては専務理事を長とする理事会があり、148ヵ国から採用された2,660人ほどのスタッフを擁しています。

抜きんでる国際機関としての存在感

加盟各国が等しく一票を有する国際連合の総会と異なり、IMFでは出資額を反映した意思決定が行われます。出資割合は米国の17.41%を筆頭に日本6.46%、中国6.39%、ドイツ5.59%など、主要国が上位を占めています。

国連システムの中の「姉妹機関」であるIMFと世界銀行。第二次世界大戦の引き金となった世界恐慌への反省をベースに米国主導で開かれた、ブレトンウッズ会議(1944年)で設立が提案されました。そのためIMFと世界銀行はかつて「ブレトンウッズ体制の両輪」と呼ばれていました。

ブレトンウッズ体制はドルが兌換通貨(だかんつうか:紙幣などの通貨を実物価値のある金貨などに交換できる通貨)であった時代の「金・ドル本位制」を支える機構でしたが、1971年の「ニクソン・ショック」を経て変動相場制が導入されて以来、その役割は変化を余儀なくされました。

現在では国連システムの中の姉妹機関として、IMFが国内金融秩序安定への監視助言などマクロ経済の課題に注力する一方、世界銀行は長期的な経済開発と貧困削減に主眼をおいた活動を行っています。

1990年代初頭の東西冷戦終了を機に、IMFの出番はますます増えてきました。1980年代には累積債務国の救済が中心でしたが、1990年代に入ると東欧並びに旧ソ連諸国の市場経済への移行支援や、1994年のメキシコ通貨危機,1997年のアジア通貨危機に関わる経済支援に主導的な役割を果たしました。リーマン・ショック後のギリシャ支援も記憶に新しいところでしょう。

批判も後を絶たないが……

「通貨の番人」としてこれだけ活躍しているにもかかわらず、IMFの評判は必ずしも芳しいものとは言えず、批判も後を絶ちません。

特に、米国の意に反するような施策が決めらない仕組みへの批判の声は、従前から小さくありません。重要事項の議決には85%の同意が必要ですが、上で触れたように米国の出資割合は17.41%。事実上の支配権(拒否権)を握っていることになります。本部が米国ワシントンにあることも、同国との蜜月関係を批判する勢力にとっては不満の種になっています。

IMFが長きにわたって国際金融の舞台で大きな役割を果たしてきたことは間違いないでしょう。しかし複雑、高度化する金融の仕組みの中で、求められるものもより大きく、難しくなってきています。世界の政治、経済における米国の影響力も、以前ほど強くなくなっています。今後、IMFの組織運営も変わっていくのかもしれません。(提供: お金のキャンパス

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