サラリーマンの給料が軒並み頭打ちになる中で、収入を増やす手段のひとつとして、投資に注目が集まっている。マネースクールを運営している筆者のところにも、投資に関する質問が多く寄せられているが、最近よく聞かれるのは「投資をしたいが、まとまった資金がなくて投資ができない。どうしたらいいか?」というものである。
「投資を始める」ためにおさえたい3つのポイント
そもそも投資とは、その名の通り「資金(お金)を投じる」ことである。ということは、当然ながら投資の仕方もお金の動きに沿ったものでなければならない。お金の動きに沿った方法とは、「ストック(余剰資金)」と「フロー(定期収入)を見ながら、投資金額やタイミングを図っていくことである。投資を始めるには、大きく分けて以下の3つのポイントをおさえたい。
① ゴール設定
② 余裕資金づくり
③ 投資金額と投資方法の決定
1.目標値の設定 「お金を貯める仕組みをつくる」
まずはお金を殖やす目的から。その目的ありきでの目標値を設定する。主には、「生存リスク」と「老後リスク」の2つに備えることになるだろう。
ストックがあるなら、そこからどれだけの余裕資金が捻出できるかを検討し、次に、フローの中から余剰金が出るように画策することである。まずは月々の収入から支出を差し引いたときに、お金が残る状態にしなければならない。お金が残らないのに、フローから投資をするにはムリがある。最初に「どこまで収入を増やして、代わりにどれだけ支出を減らせるか?」ということから考えるのがスタートである。
ここでのポイントとは、「生活費」と「余剰資金」を分けて考えることである。たとえ、予定より生活費が残ったとしても、そのお金をすぐに投資に回してしまっては、生活が立ちいかなくなる可能性がある。そうなれば、せっかく投資した案件を途中解約するといった事態にもなりかねない。
ここで考えるべきは、毎月の支出傾向をつかみ、可能な限り予測が立てられるようになることと、お金を貯める仕組みをつくることである。
「お金を貯める仕組みをつくる」とは、たとえば固定費の見直しを行い、不要な支出を削減したり、貯金を強制的にできるようにしたりすることである。投資に回していいお金とは、あくまでも不要不急のお金にするべきである。
2.資金づくりで大切なのは「投資期間」
次に起こる疑問が、「どれくらいの余剰資金ができたら実際に投資を開始してもいいのか?」ということである。
実は、資金づくりで大切なのは「金額」ではなく「投資期間」である。投資に資金を回す際には、「いくらあればいいのか?」よりも「どれだけの期間、そのお金を触らないで済むか?」の方が重要なのである。
3.投資で大切なのは「出口戦略」 目的に応じて変化するもの
間違っても、いき当たりばったりで投資を始めてはいけない。あらかじめ自分のゴールを決めておき、それに基づいたポートフォリオ戦略を練ることが大切である。
ポートフォリオとは、どの資産にどれだけの投資を行うのかを決める「資産配分表」のことをいう。最近はインターネットやアプリなどで、ポートフォリオを組んでくれるものもあるから、利用してみるのもひとつの方法である。
ポートフォリオを考える際に、最初に決めなければならないのは、投資する案件ごとに「どこを出口にするのか?」ということである。「出口」とは、投資が満期を迎えたり、解約したりするなどして、お金を受け取る時のことを指す。
出口は、投資をする目的によっても違ってくる。たとえば、老後リスクに備えた対策というのが目的ならば、10年以上を目処とした長期間の投資を行うことになるだろうし、生存リスクに備えて早めに利益を確定させたいというのであれば、5年前後を目処とした投資を選ぶことになる。
自分に合った投資法とは?
「投資」と一口にいっても、実際は、積み立て式のものもあるし、大きな金額を一気に投入するパターンもある。どの方法を選択すべきなのかは、その人の投資戦略やリスクの許容度などによっても変わる。投資とは、実に奥の深い世界である。
投資をする人の年齢、とれるリスク、日々のフロー(給料)、ストック(蓄え)などの条件が変われば、自ずとその人に最適な投資法というのも異なってくる。投資の利回りは、「額」「期間」「利回り」で決まってくる。もちろん、高い成果を得るのは、フロートとストックの双方から攻めながら、なるべく長い期間をかけて、より高い利回りを得ることだ。
投資とは、良くも悪くも、同じ時期に、同じ対象に対して、同じ属性の人が投じたら、まったく同じ結果が出る。一度投げたらそのことをしばし忘れて実りを待つことになる。だからこそ、投げる前が勝負なのだ。これを機会に、あなたも自分に最適な投資法とは何なのかを、ぜひ1度じっくりと考えてみることをオススメしたい。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。