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(写真=PIXTA)

相続税の節税手段として非常に有用な生前贈与だが、土地や不動産を含めて行うことでより大きな節税効果を発揮するケースがあることをご存知だろうか。しかし、その恩恵を最大限享受するためには制度等に対する理解が不可欠だ。今回は土地や不動産を生前贈与する際の注意点をまとめたので、節税でお悩みの方はぜひ参考にしていただきたい。

生前贈与で土地や不動産を贈与するメリットとデメリット

土地や不動産を生前贈与することにより得られるメリットは、言うまでもなく相続税を軽減できるというのがまず一点。そのほか、贈与者と受贈者(贈与を受ける者)とが相談した上で贈与することができるというのも、重要視されにくいが意外と大きなメリットと言える。豊富な財産を伴う相続というのは得てして問題も生じやすく、生前にそれらを済ませることは非常に有用なポイントだ。

対して、土地や不動産を生前贈与することのデメリットは余計な費用が発生してしまうという点だ。これはメリットである節税・減税と矛盾するように思えるが、実際に土地や不動産を生前贈与すると余分な税金が発生するのである。詳細は後述するが、登記費用や不動産取得税といったものがこれに当たる。また一概にデメリットとは呼べないものの、土地の評価額によっては贈与時点よりも相続時点の方が価額を抑えられる可能性があることも留意しておくべきだろう。

土地や不動産を生前贈与する方法

土地や不動産を生前贈与する際には、財産の価額にもよるが相続時精算課税制度を利用するのが最も現実的だろう。相続時精算課税制度とは、60歳以上の直系尊属(両親や祖父母)から、20歳以上の子や孫(推定相続人)に対して行われる贈与について、2500万円までを限度に非課税とする制度で、暦年課税制度(通常の贈与税)との選択制になっている。

2500万円を超える価額に対しては一律20%の贈与税が課されることとなっているため注意は必要だが、暦年課税制度によって認められている年間110万円の基礎控除とは比べるべくもない。短期的に生前贈与を済ませようとするならば、やはり相続時精算課税制度を利用する価値は十分にあるだろう。

土地や不動産の生前贈与にかかる費用

デメリットとして少し触れたが、土地や不動産を贈与する際には「登記費用(登録免許税+税理士等への申告報酬)」と「不動産取得税」が発生する。具体的には、登録免許税は不動産評価額の2%、不動産取得税は不動産評価額の3~4%で、合わせて不動産評価額の5%強もの費用がかかることになる。

一方、相続によって土地や不動産を取得した際の登録免許税は0.4%、不動産取得税にいたってはそもそも発生しない。たかだか数%とはいえ、それが価額数千万円の財産に対して課せられればその差はけして無視できるものではない。生前贈与することによる節税金額と、それによって発生する各種費用とを正しく比較することがなによりも肝要だ。

生前贈与で土地や不動産を贈与する際の節税方法

土地や不動産の価額が2500万円に収まらないという場合は、暦年課税制度と相続時精算課税制度を組み合わせて活用する方法も検討しよう。まず暦年課税制度によって認められている基礎控除110万円を利用し、毎年一定割合ずつ土地や不動産の権利(持分)を贈与する。十分に時間があるならば控除範囲内で長期に渡って贈与すれば良いし、ある程度短期で行うならば一括贈与あるいは相続した場合との課税金額を比較した上で調整すれば良いだろう。

そうしてある程度の権利が贈与された時点で、相続時精算課税制度によって残りの財産を一括贈与する。初めから一括贈与する場合に比べると非常に長期的な計画を立てる必要が生じる反面、暦年課税制度の基礎控除を最大限活用することができるため節税効果は大きい。ただしこの場合も、毎年登記費用が発生することとなるため、やはりそれに見合うだけの節税効果があるのかどうかを確かめる必要がある。

生前贈与で土地や不動産を贈与する際の注意点

なにより、土地や不動産を生前贈与する際に相続時精算課税制度を利用するつもりの方は、以後制度を利用した受贈者に対しては暦年課税制度による贈与が行えないという点に注意しなければいけない。つまり、一度相続時精算課税制度を選択してしまうと、暦年課税制度による基礎控除枠内での贈与が行えなくなってしまうのだ。

よほど短期的に生前贈与を済ませたいという場合を除き、いきなり相続時精算課税制度を利用することは控えるべきだろう。逆に、事情によりどうしても一括で贈与するほかないという場合は、相続時精算課税制度は非常に頼りになる制度だ。

生前贈与とはただ行えば良いのではなく、相応しい制度や手段を利用しなければかえって税負担が増えてしまう可能性さえ孕んでいるのである。暦年課税制度、相続時精算課税制度、いずれを利用するにせよ、制度に対する理解を深めることを忘れてはいけない。(ZUU online 編集部)