中国,銭湯ブーム
(写真=Thinkstock/Getty Images ※画像はイメージです)

日本ならではの文化の一つである銭湯が今、意外にも中国で注目を集めている。1990年代後半から日本全国で広まり、さまざまな温泉設備や飲食店などを併設するリラックス施設として定着した、いわゆる「スーパー銭湯」だ。

中国ブームの火付け役となったのは、日本で業界最大手の極楽湯 <2340> 。もともと湯船にじっくりと浸かる習慣のない中国に業界で初めて進出し、日本と同等、いやそれ以上ともいえるクオリティーのスーパー温泉を3年前、上海に初めて出店。これが当たり、ピーク時には1日に4000人以上が来店するほどの押しも押されぬ人気となったのだ。

勢いに乗った同社は2016年9月には湖北省武漢に3店目を出店、中国本土で10年以内にフランチャイズも含めて100店舗にする強気の構えをみせている。これまでになかった中国人のニーズに目を付けた同社の快進撃はどこまで続くのか見ていこう。

広さは日本の6倍、4階建店舗も

日本最多のスーパー銭湯店舗数を持つ「極楽湯」を展開する極楽湯は、温浴専業企業の中で唯一、2002年に上場(ジャスダック)。13年2月には海外初進出となる直営店を中国上海市に出店し、16年11月現在の店舗数は、国内直営23店舗、国内FC17店舗、中国では上海2店舗と武漢1店舗を持つ。

上海での事業が軌道に乗って以降は好決算が続いており、平成29年3月期第1四半期決算短信によると、16年3月期第2四半期の売上高は69億3500万円(前年同期比24・1%増)、17年3月期第2四半期は69億1500万円(同0・3%減)と横ばいながらも、16年3月期第2四半期に2億200万円だった営業利益は17年3月期第2四半期には4億7600万円へと約2.4倍もの伸びをみせている。

なぜ極楽湯が中国で当たったのか

都内近郊の店舗でもさまざまな温浴設備とサービスがあり、十分に広く、くつろげると感じる極楽湯。日本国内の平均的な床面積は約1500〜2000平方メートルであるのに対し、中国の極楽湯は約1万平方メートルと、日本の約6倍の広さ。

そのうち上海の2号店は4階建の吹き抜けのある開放感たっぷりの建物で、1階が風呂と売店、2階が岩盤浴にレストラン、3、4階はVIPルームもある高級感ある休憩スペースとなっていて、キャパシティーは最大で約1300人という。入場料は大人一人、138元=約2800円と日本の3倍以上の高額であるにもかかわらず、上海の2店舗だけで年間入館者数は100万人を超える勢いというから驚きだ。

爆買い 「モノ消費」から「コト消費」へ

この中国での極楽湯ブームの要因の一つには、2015年をピークに日本の消費動向をも左右するトレンドとなった中国人による「爆買い」による影響が考えられる。

現在は既に下火となっている爆買いだが、観光庁による訪日外国人消費動向調査などのデータによると、一度訪日した中国人の中にはリピーターも多く、彼らの消費行動が、一時の家電や高額品の買い占めから、レジャーや食事を中心とする、モノではなく、「コト消費」へとシフトしているという傾向がみてとれる。

そうした流れの中で、日本でスーパー温泉を体験し中国人が中国に帰っても同様の癒しを求めて極楽湯へ足を運び、中国のSNSを含めた口コミが口コミを呼んで、今の人気につながっているという見方だ。

反日感情が強いイメージの拭えない中国人だが、「日式」という中国語に込められた消費者の日本の商品力に対する憧れや信頼度は思いのほか高く、中国の極楽湯も、「モア・ジャパン」をコンセプトに、「日式」を徹底していることが大きい。

中国の水は硬水だが、日本の温泉と同じ軟水を特殊な機械で生成して使用するなど、品質の細部にまでこだわっているほか、清潔感に欠ける施設の多い中国にあって、15分に一回はフロア清掃を行うよう徹底するなど、世界でも最先端の清潔度とサービスを誇る日本に倣った店づくりを取り入れたことも今どきの上海っ子の心をつかみ、ターゲットとしている月収4000〜5000元(約8〜10万円)以上の中間層にとって、一度は体験したい新しい娯楽施設と映ったのだろう。

立ちはだかる「万里の長城」

日本経済がデフレスパイラルから抜け出せない中、中国自体の内需は確実に拡大していることに着眼し、いち早く日本ブランドのスーパー銭湯を中国へ『輸出』した極楽湯。進出に当たっては、2009年に大連市にマーケティング会社を設立するなど、市場調査を抜かりなく行ったことが現時点での好況につながっているのは間違いない。

もっとも今後、「10年以内に100店舗にする」という方針が思惑通りに進むかどうかについては、株価の乱高下もみられる中、大幅出店に伴う莫大な投資コストをどう資金調達していくかといった経営手腕が問われるのに加え、先進国の人気ブランドの商標登録の模倣などで悪名高い中国企業が、極楽湯のヒットに乗り、これを真似た業態の銭湯が乱立する可能性などさまざまな不安要素も拭えない。

今の中国の「日式スーパー銭湯」人気が一過性のブームで終わるか、否か。中国での極楽湯展開に立ちはだかる壁は万里の長城さながらに大きいと言えそうだ。(ZUU online 編集部)

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