2016年6月、ゆうちょ銀行に次ぐ国債の大口保有者である三菱東京UFJ銀行が、国債入札の特別参加者の資格を財務省に返上しました。この報道を受け、マスコミではマイナス金利への反発とも解説され、債券市場が大きく揺らいだのは記憶に新しいところです。
国債は長らく安心・安定の投資として長期投資の代名詞であり続けてきましたが、この先はどうなるのでしょうか。
国債の魅力はどこにあるのか?
国債について簡単におさらいしておきます。国債とは、国の歳出を確保するために発行される債券です。
日本国債は、発行目的に応じて歳入債、財政投融資特別会計国債、繰延債、融通債があります。日本国債を保有しているのは、約9割が銀行、日本銀行、生命保険会社、損害保険会社、年金機構などの政府機関、国内の金融機関です。
国債の魅力は、やはり国が発行することによる信用力でしょう。日本国債は日本国が発行しているので、理論上、日本で最も安全な資産といえます。たとえば、世界金融危機では株式、不動産をはじめ、リスク資産は軒並みマイナスとなる一方で、日本国債を含めた先進各国の国債には資金が流れ込みました。
このことからも、国債は投資家たちから「最も安全な資産」と位置付けられていることがわかります。
マイナス金利下における国債の位置づけ
信用度抜群の日本国債の行く末について、債券市場で緊張が走ったのが、三菱東京UFJ銀行の特別参加者の資格返上のニュースです。
特別参加者とは国債を一定の枠で買い取る義務がある代わりに、財務省との意見交換ができるというものです。国債の安定消化を支えているといってよいでしょう。特別参加者は2016年7月15日時点で21社あり、その多くが証券会社によって構成されています。数少ない銀行は大手銀行ばかりであり、なかでもゆうちょ銀行に次ぐ国債の大口保有者である三菱東京UFJ銀行が資格を返上するというので、関係者は大きな衝撃を受けたのです。
特別参加者の資格返上の背景には、日銀のマイナス金利政策があります。債券をマイナス金利で購入して満期まで保有すると損をしてしまいます。預金の多くを国債で運用している銀行にとっては、現状のマイナス金利はまったく“うまみ”のない状況なのです。
銀行にとっては苦しい状況とはいえ、日銀サイドの視点から見れば、金利にメリットをなくすことで、銀行が必要以上に日銀の当座預金に残したままにせず、お金を貸付や株式、外国債へ動かすための環境づくりといえるでしょう。
ただし国債のマイナス金利に関しては、個人向け国債は別扱いとなります。基準金利とは別に、0.05%の最低金利保証が設けられているので、安心して購入することができます。
1,000兆円に迫る国債残高。国債神話は続くのか?
国債の残高は2016年9月末の時点で926兆1,383億円と、1,000兆円に迫る勢いです。直接、国債を保有していなくても、銀行の預金や保険は国債で運用していることが多いので、個人の意思に関係なく、間接的に国債を保有しているともいえます。
現在は、発行している国債の約9割を政府機関や国内の金融機関が保有しています。いわば自分たちの借金を身内が肩代わりしている状態です。ただ今後、外国人投資家の保有比率が上がってくれば、話は変わってきます。
実質GDPの約2倍と先進国で最も借金が多い日本を信用しなくなる、つまりは借金を返せなくなると思われる瞬間が来るかもしれません。そうなると、国債価格は暴落し、金利は急上昇、ハイパーインフレが起こる可能性もあるでしょう。
国債は絶対に安心だといわれてきた「国債神話」ですが、国内での国債消化が難しくなってくると、これからも神話であり続けることは難しくなるかもしれません。(提供: IFAオンライン )
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