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(写真=PIXTA)

私たちが日常的に利用している普通銀行は、大きく都市銀行と地方銀行に分けられます。法的な違いがあるわけではなく、得意とする業務や営業エリアが異なることから区別されています。

都市銀行は東京や大阪などに本店を置き、そのサービスは広域を網羅しています。これに対して、地方銀行の本店があるのは各都道府県です。主な顧客は地元の中小企業や個人で、地域経済の要ともいえる存在となっています。地方にあるから地方銀行と思ってしまいがちですが、東京都民銀行や横浜銀行、千葉銀行、京都銀行など大都市圏に本店を置く地方銀行もたくさんあります。

小回りの利く地方銀行ならではの商品やサービスもいろいろあります。生き残りをかけた、それぞれの戦略をのぞいてみましょう。

一歩先行く便利なATMサービス

注目されている地方銀行の一つに、岐阜県大垣市に本店を置く大垣共立銀行があります。人口約16万人の大垣市民の約7割が利用しているという圧倒的なシェアを支えているのは、ユニークなサービスの数々です。ATMでは取引の種別ごとに異なるゲームが登場し、現金のプレゼントや時間外手数料が無料になるなどの特典が当たるという、ATMらしからぬサービスが提供されています。車に乗ったまま操作できる「ドライブスルーATM」は、車高に合わせて運転席窓側に自動でATMが移動してくるという優れものです。

手のひら静脈認証ATMサービスを日本で初めて取り入れたのも大垣共立銀行です。災害時に、通帳やカードが無くてもATMが使えるようにと考えてのことです。2017年春には口座開設も静脈認証で可能になり、投資信託などの預かり資産についても印鑑なしで取引できます。

顧客目線のユニークな商品にも注目

大垣共立銀行はローン商品も独特です。離婚に関連する慰謝料、財産分与資金、裁判等の費用に使える「離婚関連専用ローン」、健康・育児無料電話相談サービスまでついた「シングルマザー応援ローン」など、顧客のニーズを取り入れた商品が取り揃えられています。

地域に根ざしたローン商品があるのも地方銀行の特色です。スルガ銀行では、静岡県立静岡がんセンターで先進医療を受ける人に向けたローン「静岡がんセンター先進医療プラン」を用意しています。神奈川県立がんセンターで受ける重粒子線治療の治療費をサポートしてくれるのは、スルガ銀行の「神奈川県立がんセンター重粒子線治療プラン」や、横浜銀行の「先進医療ローン」です。

顧客に嬉しいサービスは地方銀行の先行が目立ちますが、居住地が他県の場合は口座開設が難しいのが現状です。しかし、昨今はインターネット支店でエリア外の顧客に対応する銀行も増えてきました。高金利や宝くじつき定期預金などの商品もあります。岡山県の「トマト銀行ももたろう支店」、「香川銀行セルフうどん支店」など、ユニークなネーミングにも注目です。

生き残りをかけた再編・業務提携

一方で、地方銀行を取り巻く環境は厳しさを増し、再編の動きが活発化しています。

横浜銀行は東日本銀行と経営統合し、日本最大の広域地銀グループへと進化しました。常陽銀行と足利ホールディングスも経営統合し、日本3位のグループになっています。東京都民銀行と八千代銀行が率いる東京TYフィナンシャルグループへは、新銀行東京が加わりました。経営統合ではありませんが、千葉銀行は武蔵野銀行と業務・資本提携を結び、ITシステムなどの共同開発などを進めています。

手数料収入の拡大や、ノウハウの吸収を目指した異業種との提携も盛んです。「ほけんの窓口グループ」と業務提携し、行内に相談窓口がある地方銀行は2016年11月現在で16行です。クラウドファンディング大手のミュージックセキュリティーズと提携する地銀は60行を超えています。

最近では横浜銀行が三井住友信託銀行と資産運用会社を設立するなど、業態を超えた提携も進んでいます。静岡銀行のように全自動家計簿サービスを提供する「マネーフォワード」と業務提携し、専用アプリをリリースするといった独自の取り組みを積極的に行う地銀もあります。

地方銀行の既存の枠を超えた連携に、今後も目が離せません。(提供: IFAオンライン

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