トランプ氏が米大統領選挙で勝利して以降、ドル円は急ピッチでドル高円安になる展開となった。トランプ氏当選でここまで円安になる展開を予想した人間は少ないだろう。それほど予想外の相場展開となった。ここでは2016年末の相場展望と相場材料について解説していこう。
米雇用統計は強弱入り混じるも利上げ見通しは変わらず
12月2日金曜日に発表された米雇用統計では非農業部門雇用者数は予想の18万人をやや下回る17万8000人増となった一方、失業率は4.6%と9年ぶりの低水準となった。しかし、平均賃金の伸びは予想を下回り、9月と10月の雇用者数が下方修正されるなど強弱入り混じる結果となった。
雇用統計は強弱入り混じる内容となったが、ネガティブサプライズもなく、おおむね堅調な内容だったといえるだろう。12月利上げ見通しを修正するほどの内容ではなく、雇用統計発表時のドル円も落ち着いた値動きとなりわずかにドル安となった。ドルが下落したのは雇用統計の内容が利上げを確信させるような非常に強い内容ではなかったため、週末前にいったんポジション調整の売りが入ったからと考えられる。
FOMCまでのドル円展望 テクニカル的には109円もありうる
今年最後の一大イベントであるFOMCが開催される12月13日から14日までは調整売りが出やすく、ドル円は軟調に推移すると予想する。テクニカル的には109円までの調整下落が考えられる。
ここまで急ピッチでドルが上昇したため、FOMCという一大イベントを前に安値から買っていた相場参加者が利食いの売りを入れやすい状況になっている。すでに相当の含み益があるため、FOMC前に利益を確定させようというのはごく自然な行動だろう。
また、100円台からドルを買っていた参加者の中にはドル円が上昇すると損切り注文も上げていくトレーリングで高値を追っている人たちも大勢いるはずである。トレーリングで高値を追っている参加者が多い場合、上昇トレンドが崩れると次々と利食いの売りが入り売り圧力がかかりやすい。FOMC前のポジション調整とトレーリングの利食い売りで上値が重たくなる展開になりやすいだろう。
このようにこれからは当面売りが入りやすい環境になると予想されるが、買いはどうだろうか。現在は高値付近で推移しているし、かなり急ピッチでドル高となっているためオーバーシュートという印象がぬぐえない。そうすると買いも中々入りにくい状況になると考えられる。
ただ、ここまで急上昇すると下落したところで押し目買いを入れたいと考えている参加者も一定数いる可能性が高い。下落したところで散発的に短期筋の買いは入りそうだが、ドシっと腰をすえて買おうとする人が出てくるのは109円から110円付近であろう。その付近まで下落してくれば高値までの値幅もあるし、ここまで強い上昇トレンドを形成してきたのだから一旦買ってみようと思う参加者も相当いるのではないだろうか。
そのため、109円から110円付近まで下落する反発が入りやすい環境になるだろう。しかし、いったん反発したあとはFOMCの結果を待たないと方向感がない展開となるだろう。FOMCの結果を見てみないと強く買えないし、売りもできないからだ。どちらにせよ、FOMC前にはポジションを手じまったほうが無難だろう。
FOMC後のドル円展望
14日のFOMCでは利上げが行われるのか否かに注目が集まるが、利上げが決定されても急激なドル高円安になるような展開にはなりにくいと考える。2015年12月のFOMCで利上げが決定された時を思い出してほしい。利上げ決定後はドル高円安の流れになったが、結局数日のうちに反落し、その後は円高になる相場展開となった。
現在の急激なドル高円安は12月利上げを織り込んでいることが大きい。そのため、FOMCで利上げが決定されたとしても一気に円安になるとは考えにくい。むしろ利上げ決定後は材料出尽くしの利食いが入ってドル円が再び軟調な展開となってもおかしくない。それに、年末は休暇前のポジション調整が入りやすく上値が重たくなりやすい。そのため、利上げ=円売りという思考パターンは危険だろう。
では利上げが見送られた場合はどうだろうか。先ほども述べたように現在のドル高円安は12月利上げを織り込んでいる。そのため、利上げが見送られればドルが一時的に急落するリスクが高まるだろう。ただ、現在は原油価格や株価が上昇しており市場はリスクオンのムードとなっている。そのため、一方的な円高になるような展開にはなりづらいと考えられる。急落したところで買いも入り、方向感がないレンジ展開となるのではないだろうか。
今までの話をまとめると、12月は11月のような上昇展開にはならず、むしろドル円は調整局面入りしやすい環境になると考える。そのため、もし安値で買いポジションを持っているのであればいったん利食いを推奨するし、今から買いで入るとすれば下落したところを短期の反発を狙うか、あるいは110円付近で買いを仕込むかになるのではないだろうか。(シニアアナリスト 樟葉空)
【編集部のオススメ記事】
・「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
・資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
・会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
・年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
・元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)