確定申告は、毎年行わなければならない納税者の義務だが、各種書類を揃える作業や何度も税務署へ赴くことは非常に時間と手間がかかる。法人や個人事業主の方はもとより、医療費控除等の年末調整によって適用が認められない所得控除を利用したい給与所得者にとっても、これは悩みの種と言えるだろう。
今回は、この確定申告手続きを代理によって行うことに関してまとめた。毎年の作業に辟易しているという方などは、ぜひ参考にしてほしい。
確定申告の代理とは
確定申告に置いて代理人を立てるという場合、2つのケースが考えられる。まずひとつは、税理士に依頼するケースである。税理士(又は税理士法人)は、「税務代理の権限の明示」によって税務を代理する権限を与えられているため、他者の税務一式を代行することができる。
一般的に、税理士へ依頼する者は法人や個人事業主ばかりと思われるかもしれないが、前述の通り利用する控除によっては給与所得者であっても確定申告が必要であり、かかる手間を考えて代行を依頼するというケースはけして珍しくない。
もうひとつは、税理士に代行を依頼するほどではないが、部分的に他者の手を借りたいという場合だ。もっとも良くあるパターンとしては、確定申告書一式の用意は済んだものの、これを提出する時間がないというもの。
あるいは用意する書類のうちいくつかについて、代理人に取得を依頼したいなどといった場合がこれに当たるだろう。こういった税務の代理、代行は果たして認められるのだろうか。
確定申告の代理を依頼できる範囲
まず前者、確定申告書一式を税務署へ他者が提出する場合、これは各税務署の判断にもよるが、おおむね認められるといって良い。
代理人が配偶者など、申告者本人の親族である場合は(代理人の本人確認は別として)特に条件を求めることなく認められるケースも多く、また代理人が親族以外である場合でも、「所得税申告・申請等事務代理人届出書」を添付することでこれが認められる。
続いて後者、確定申告に関わる書類の取得を代理人に依頼する場合、これも扱いとしては申告書の提出と同様である。つまり、確定申告に伴う「申請や申告」に関しては、税理士のような専門家に依頼する必要はないということだ。
ただし、確定申告書の「作成」に関しては本人か依頼を受けた税理士しか行うことが認められていない。もしもこれに反した場合は、税理士法違反によって作成した者が罰せられるほか、申告内容が認められなくなってしまう。
確定申告の代理人の要件
前述の通り、確定申告に伴う「申請や申告」に関しては、該当の届出書さえあれば基本的に誰でも行うことが可能である。しかしながら、いくら誰でもとはいえ常識の範囲内での話だ。
配偶者や親族であれば届出書の添付によってほぼ確実に申告書の提出等は認められるが、これを友人や知人に依頼した場合はこの限りでない。
「申告書の作成」は税理士の独占業務であるが、一方で記帳代行業者というサービスが存在する。これが税理士法違反に当たらないことは、記帳を配偶者などに任せている個人事業主が数多くいることからも明らかである。
だが、記帳代行業者を利用する上では、確定申告書の作成そのものは本人か税理士が行わなければいけないということを理解しておく必要があるだろう。
確定申告の代理人を立てるメリットとデメリット
確定申告において代理人を立てるメリットは、依頼する者が税理士であれ一般の者であれ、申告者自身の手間を省くことができるということだ。
また、税理士や記帳代行業者によって作成された帳簿は、簿記や税務知識がない者が作成したものよりもはるかに整然として、申告上の誤りも少ない。
無駄なく控除を活用できるほか、後日税務調査によって納税額の不足が発覚するリスクが少ないというのも、大きなメリットと言えるだろう。
対して、代理人を立てることによるデメリットは、相応のコストがかかるということである。税理士や記帳代行を利用する際は、それによって得られる控除やリスクの軽減といった価値を見極める必要があるだろう。
また、それ以外の者に代行を依頼する場合はコストこそかからないものの、理由や関係性が不透明であると、申告書そのものが受理されない可能性が生じてしまう。
確定申告で代理を立てる場合の注意点
確定申告において代理を立てる理由は、申告者自身の手間を省くことや、正しい確定申告を行うことなどが目的だろう。税理士に依頼する場合はともかくとして、それ以外の者に代行を依頼するのならば、その理由や意思が第三者(税務署)からも明らかになるよう届出書などの添付を忘れてはいけない。
さもなければ、せっかく苦労して作成した申告書等も無駄になってしまいかねず、手間を省くどころか増やす結果になってしまうだろう。よほど特殊な事情がない限り、確定申告においては代理を立てることなく、立てるとしても税理士へ依頼するのが賢明だ。
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