20歳は「成人」の始まりである。成人になると、それまでとは法的に異なる様々な変化がある。そのうちの一つが、年金加入の義務である。昨今のニュースで、年金への不信感は増すばかりである。しかしながら、日本国民である以上は年金に必ず加入しなければならない。今回は、年金の基礎的な内容と、あなたが学生であれば是非活用してほしい年金制度を紹介する。
20歳から始まる年金制度
国民年金は、大きく分けて公的年金に分類される。対義語は私的年金である。私的年金は任意で加入する年金だが、公的年金は国民年金法によって国民に加入の義務が課されている。つまり20歳になれば、国民全員が強制的に国民年金に加入する必要があるのだ。
国民年金は基礎年金と呼ばれ、年金制度の基礎的な役割を担っている。年金は、ビルなどの建物に見立てて「何階建て」と表現されることがある。国民年金はその「1階部分」に当たる。社会人になれば、厚生年金や共済年金に加入することになるが、それらは「2階部分」に当たる。このように、基礎年金である国民年金に上乗せするように積み上げて、あなたの年金は作られていくのである。
基礎年金は、20歳から60歳になるまでの40年間保険料を納め続ける必要がある。国民全員が同額の保険料を納め、支給される年金額も同額である。しかし、加入期間の長さは人によって異なるため、それに伴い受給する年金額も増減する。「満額」という考え方があり、加入期間が短い場合などには満額は支給されないのである。
とはいえ、学生の場合には所得がないという状況が考えられる。その場合には、次項で紹介する「学生納付特例制度」を利用してほしい。
学生納付特例制度とは
学生であれば、本人の所得が一定以下の場合、学生納付特例制度というものを利用できる。これは、両親の所得などに関係なく申請が可能で、在学中の保険料納付が猶予される制度だ。高等学校、高等専門学校、短大、大学、大学院、専修学校、各種学校のいずれかに在学しており、なおかつ前年所得が「118万円 + 扶養親族等の数 × 38万円」以下である必要がある。
年金は、老後にもらうものというイメージを持っている人は多いと思うが、実は年金の制度はそれだけではない。障害を負った際に支給される障害基礎年金、本人が亡くなった場合に遺族に支払われる遺族年金というものもあるのだ。
学生納付特例制度を利用した場合には、この猶予期間も受給資格期間(2017年9月より10年間に変更となる)に加算してもらうことができる。加えて、障害年金、遺族年金の対象としても扱ってもらえるのだ。手続きをせず、未納状態となっている場合には、それら2つのメリットを受けることができないので注意が必要だ。
もし、アルバイトをしている場合で経済的な余裕があるのであれば、保険料を納めるというのも一つの手だが、それが難しい場合には必ず学生納付特例制度の申請をすることをお勧めしたい。
年金手帳をもらうためにやるべきこと
20歳の誕生月の前月、もしくは当月の上旬に日本年金機構から「国民年金被保険者資格取得届出書」というものが郵送される。そこに必要事項を記入し、居住地の役所、管轄の年金事務所に提出する必要がある。その際に、先ほどの学生納付特例制度の申請書を同時に提出しておこう。学生ではないが、保険料の納付が難しい場合には「納付猶予制度」も用意されているので、この時に併せて提出しよう。
この手続きが済むと、国民年金への加入手続きは完了し、日本年金機構より「年金手帳」が郵送される。これは、あなたの年金加入記録が記載される大切なものなので、紛失しないよう管理してほしい。社会人となり、会社に勤務する際にもこの年金手帳が必要になる。
学生納付特例制度や納付猶予制度を利用しなかった場合には、郵送される「国民年金保険料納付書」を利用し、各金融機関やコンビニエンスストアで支払いを行う。
年金について知っておきたい注意点
先ほども少し触れたが、国民年金の加入は国民の義務である。納付しない場合には最悪、財産が差し押さえられてしまう。そうならないためにも、保険料の支払いをきちんと行ってほしい。支払いが難しいようであれば、今回紹介した各種猶予制度を活用すれば問題ないだろう。
国民年金の満額は、現在年額で78万100円(月額で約6万5000円)である。これは、20歳から60歳まで保険料を納め続けた場合の金額だ。未納があれば、その分満額支給から遠のいてしまう。そして、年金を受け取るためには加入期間、つまり保険料を納めた期間について要件がある。短縮され10年になるとはいえ、9年11か月では年金は支給されないのである。このたった1か月の差で、何十万ものお金がもらえるかもらえないかの差が出てしまうのだ。そうならないためにも、保険料は納める。難しい場合には、年金事務所等に猶予の申請をする。この二つを守れば、問題ないはずである。
年金は自分の身を守るため
保険料は決して「安い」とは言えない金額であり、負担が小さいとは言いかねる。若いうちは色々と物入りでもあり、保険料の支払いが難しいということもあるだろう。加えて、老後のイメージが湧きにくいというのも事実だろう。しかし、年金は将来の自分の身を守るためのものである。今回紹介した制度を活用して、未納状態とならないよう努めてほしい。