2016年が終わろうとしている。1月下旬に発表された日本初のマイナス金利導入に始まり、幾つかのサプライズが株価に大きな影響を及ぼした。そんな1年を日経平均株価の推移を通して振り返ってみよう。
大発会から春・マイナス金利導入まで
大発会では「ご祝儀相場」で株価が上昇する傾向にあるが、2016年は1万8818円58銭で始まり、終値は1万8450円98銭で前日比582円73銭安だった。当日の最高値は1万8951円12銭で、最安値が1万8394円43銭と大きな値動きはなかった。
12月13日時点での年初来高値は12月12日の1万9280円93銭。このところ2万円をうかがう勢いをみせている。だがつい先週までの年初来高値は1月4日の大発会の1万8951円12銭だった。最安値は6月24日の1万4864円1銭。
日銀のマイナス金利導入以降、1万6000円台を底値に底堅く推移していたが、2月10日に1万6000円を切り、その日の最安値は1万5429円99銭だった。さらに2月12日には、1万4865円77銭まで下落している。
黒田バズーカによる異次元の量的緩和で大量に銀行へ供給された資金の多くは、日銀の当座に預けられたままで金融市場には流れていない。それを市場に出すためのマイナス金利政策だったが、期待した効果がなかった。
マイナス金利政策によって一時的に株価が上昇したが、すぐに下落し始めた。その要因のひとつが、原油価格の下落である。投機筋がリスク回避のために比較的安全とされる円買いに走った。
原油価格の下落は、エネルギー関連企業にとっては好材料になる。しかし投機筋の円買いによる円高は、輸出産業の収益を圧迫する。そういった要因により、原油価格の下落が株安を呼び込むことになってしまったのである。
4月から5月にかけて株価は乱高下
2月下旬あたりから1万6000円台に戻し、3月下旬には1万7000円台をつけていた。しかし3月の終わりから4月にかけて平均株価は下降傾向にあり、4月5日には遂に1万5000円台に下落した。
この株価下落は円高によるものだが、その要因のひとつは米国連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ予想を当初の4回から2回に減らしたことである。これによりドル高の期待感が薄れ、再び円買い圧力が強まった。
もうひとつの要因として、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による外国株や債券の大量購入後の反動がある。これは円を売って外貨を買うのと同じ理屈で円安につながるが、買いがなくなって円売りが収束したことで再び円高に推移したと考えられる。
4月中旬あたりから1万6000円台に回復し、4月後半には1万7000円台に上昇した。この背景には行き過ぎた株安と円高に対する市場の反動があったと考えられる。
それに加えて、1.3%台だった米10年国債利回りが雇用統計の発表後に1.6%を超え米国株が上昇した。その結果、ドル買いが進んで円安になったことが日本の株価上昇につながった。
しかし、4月27日に米国が利上げをする予定だったが、米国経済に減速感が出ているという理由で利上げを見送った。これにより、ドル高になる予測が外れることになり、ドル売り円買いの流れに変わってしまった。
翌28日に日銀が追加金融緩和を見送ったことで市場に失望感が生じ、5月の連休明けに急激なドル売り円買いとなって株価が急落した。
夏、今年最安値の要因は英国のEU離脱
最安値を記録した6月24日は、イギリスの国民投票で「EU離脱」という民意が示された日である。事前の世論調査では「残留」が上回っており、「離脱」という結果は世界中に衝撃を与えた。
イギリスのEU離脱は「リーマンショック並の危機」と受け取られ、市場に不安が広がった。円高に歯止めがかからなくなるのではとの悲観論から、当日の日経平均株価は1200円以上下落し、終値は1万4952円2銭という今年の最安値を記録した。
秋~冬、想定外のトランプ大統領候補の勝利
直近で印象深いのは、何といってもトランプ旋風による株価の乱高下ではないだろうか。大統領候補に指名されたこともサプライズだったが、それ以上に本当に大統領に選ばれるとは予想していなかった人は多かったはずだ。
11月9日、開票が始まった当初、クリントン候補の優勢が伝えられると株価が上昇した。その後、内向きの経済政策を表明するトランプ候補が票を伸ばすと、トランプリスクを嫌って一気に株価が下落し日経平均は前日比919円の安値となった。
しかし、勝利宣言後のトランプ氏による冷静で紳士的なスピーチが株安の流れを一変させた。翌10日には午前中に上げ幅が1000円を超え、前日の下落分を一気に取り戻した。
日経平均はその後もじわじわと上昇を続け、11月21日に1万8000円台の高値になっており、12月8日に至るまで1万8000円台を維持。非公式ではあるが、いち早く安倍首相がトランプ氏と会談し、良好な関係が築ける旨の発言をしたのが安心材料になっているのかもしれない。そして12月12日には、終値が昨年12月30日以来、ほぼ1年ぶりに1万9000円台を回復した。
現実路線に舵を切ったように見える一面はあるのもの、トランプ政権の動向が未知数であることは変らない。来年1月に就任すれば具体的な政策が明らかにされる。米国新大統領の政策がどのようなものになるか、市場関係者が思いをめぐらせる年末年始になりそうだ。(ZUU online 編集部)