投資の基本には、ポートフォリオを組むこと、ギャンブルに似た投機ではなく確度の高い方法で資金を増やすことなど、様々なものがある。しかし、どのような投資にも、少なからずリスクは存在する。そのリスクを理解した上で、「確率をできる限り100%に近づける」ことが必要であるのは言うまでもないだろう。IPO株は、資金と条件を満たせば、利益を上げることのできる確率が高いものと知られている。今回は、そんなIPO株の基礎とオーバーアロットメントについて解説する。

IPO株とは

オーバーアロットメント
(写真=PIXTA)

IPOとは「Initial Public Offering」の頭文字で、日本語では「新規株式公開」という意味である。未上場企業が上場を果たし、証券市場での自由な売買が可能となることを指して言い、その株式をIPO株と言う。

IPO株は、後述するブックビルディング期間に、抽選に申し込み、当選した場合に、購入する権利を得ることができる。概ね、上場初日の初値は高騰するため、IPO株を中心に購入し、初値売りすることを専門とする投資家もいるほどだ。もちろん、IPO株を初日に売却しなくてはいけないというルールはない。そのまま保有することも可能だ。多くの銘柄が、初値の高騰が期待できる一方、中には購入時の価格を初値が下回るというケースもある。IPO株を攻略するのにも、十分な経験、知識が不可欠である。

また、IPOのメリットは、投資家だけのものではない。上場する企業にとっても、証券市場からの資金調達、知名度や信頼性の向上、優秀な人材の確保などのメリットがある。

IPO株について理解するには、金融・経済用語が多く難しい部分があるかもしれない。それぞれ、基礎から説明していこう。

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IPO時の流れ

IPO株の価格決定には、主に「ブックビルディング方式」が採用されている。ブックビルディング方式とは、仮の発行条件を投資家に提示し、需要状況を把握した上で、公開価格を決定する方式である。

この需要申告期間をブックビルディング期間と言う。ブックビルディング期間に、抽選に申し込み当選した場合に、IPO株を購入することができる。

IPO株に申し込むには、IPO株を取り扱う証券会社に口座開設をしておく必要がある。基本的には、1人1回の抽選となるが、複数の証券会社に口座を持っている場合には、複数の抽選に申し込むことも可能だ。また、抽選の方式は証券会社により異なり、購入予定株数が多いほど当選確率が上がる方式や、抽選に外れた場合に付与されるポイントに応じて当選確率が上がる方式を採用している証券会社もある。当選確率を上げるには、証券会社の特徴を知っておくのも有効である。

オーバーアロットメントとは

ブックビルディング期間に需要が大きいと分かった場合には、証券会社が株主から株を借り、その株を追加して投資家に販売することができる。これをオーバーアロットメント(Over Allotment)と言う。その上限は、売出予定数量の15%と決められている。オーバーアロットメントにより販売される株式は、募集・売出しと同じ条件で投資家に販売されることとなる。

オーバーアロットメントは、IPO時の需給バランスの悪化を防止し、株価の急騰を防ぐことを目的として導入された制度である。需要の過熱を抑えるものであるため、売出予定数量に満たない株式の場合には行われない。

オーバーアロットメントでは、証券会社(正確には主幹事証券会社)は、株主から株式を借りているため、返却する必要がある。その返却に「グリーンシューオプション」「シンジケートカバー取引」という方法が用いられる。

グリーンシューオプションについては後ほど説明をするが、公募価格よりも市場価格が上回った場合に、証券会社はグリーンシューオプションを行使し、株主から借りている株を購入する。グリーンシューオプションは権利の取引(オプション取引)であるため、必ずしも行使しなくてもよい。この点は分かりにくい部分である。

公募価格よりも市場価格が下回った場合には、証券会社はシンジケートカバー取引により、オーバーアロットメント分を市場から買付けする。シンジケートカバーは、グリーンシューオプションの権利を行使せず、一定のルールに基づき市場で買付けをし、株式を返却する方法である。つまり、グリーンシューオプションで定められた金額よりも安く、借りている株を返却することができるのだ。その差益は、証券会社の利益となる。

グリーンシューオプションとは

では、グリーンシューオプションについてもう少し詳しく見ていこう。「オプション」という名称からわかるように、グリーンシューオプションは「権利」である。主幹事証券会社が元引受契約の締結に当たり付与を受ける権利で、株式発行企業もしくは大株主から引受価額と同一条件で追加的に株式を取得することができる。
例えば、オーバーアロットメントで10万株を1株500円で販売する場合、証券会社には10万株×500円=5000万円で購入する権利が付与されるのである。しかし、その権利を必ずしも証券会社は行使しなくてもよい。もし、株価が500円を超えた場合には権利を行使し、支払う金額を5000万円にとどめることができる。株価が下がった場合には権利を行使せず、株式市場から借りている分を調達し、10万株を返却することになる。なお、オーバーアロットメント分の10万株500円の株式を400円で投資家に販売していた場合には、その差が証券会社の利益となる。

それぞれの立場からみたオーバーアロットメント

オーバーアロットメントは、各立場によってその意味合いが変わってくる。投資家、証券会社、株主のそれぞれの立場からみてみよう。

投資家

オーバーアロットメントが行われることにより、投資家にとってはIPO株を取得できる可能性が高まるというメリットがある。ただし、繰り返しになるがIPO株の初値は必ずしも公募価格よりも高値となるとは限らない。オーバーアロットメントにより受給の安定化がはかられるため、初値が高騰する可能性のある銘柄の場合には、不利となるケースもある。

証券会社

証券会社は、オーバーアロットメントを行うことにより利益を上げることができる。先ほど説明したように、オーバーアロットメント分を引受けした価格よりも安く投資家に販売をすれば、その分の利益を得ることができる。加えて、グリーンシューオプションを行使することにより、その差益も証券会社の利益となるのだ。

株主

先ほど説明したように、オーバーアロットメントには、受給の安定化の役割がある。株主からみると、証券会社が購入することで、買い需要が増えることになる。つまり、株主からすればオーバーアロットメントにより、市場価格を「下支え」してくれるメリットがあるということである。

確率を上げるためにできること

冒頭で、投資の基本の一つは「確率を上げること」と書いた。IPO株で確率を上げるためには、まずは購入権利を得るための抽選を受けなければならない。ここで当選確率を上げることが必要だろう。当選確率を上げるために、家族で複数の証券口座を持ち、抽選に挑むという人もいるそうだ。複数の証券口座を利用することにより、抽選機会を増やすことができる。当選すれば、高い確率で値上がりが期待できるだけに、うまく活用してはどうだろうか。ただし、上場初日の初値が購入価格を下回ることがあるというリスクを忘れてはいけない。

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