国税庁が発表した相続税の申告状況、実績によると、2015年中に死亡した人は約129 万人(14年約127万人)、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約10万3000人(同約5万6000人)で、過去最大になった。課税割合は8.0%(2014年4.4%)で、2014年より3.6 ポイント増えている。
土地の占める割合は高い
相続税の対象となる資産の課税価格の合計は、14 兆5554 億円(同11兆4766億円)だが、被相続人1人当たりでは1億4126 万円と前年の2億407万円から大きく減っている。
税額の合計は、1兆8116 億円と前年の1兆3908 億円から少し増えたが、被相続人1人当たりでは1758 万円と、同じく2473 万円からこちらも減少している(国税庁「平成27年分の相続税の申告状況について」)。
相続財産の金額の構成比を見てみると、土地38.0%(41.5%)、現金・預貯金など30.7%(26.6%)、有価証券14.9%(15.3%)の順だ。「土地」が占める割合は以前から高い。ここから分かるのは、土地の評価額の高さだ。
相続税が増えている理由の一つ
なぜ相続税がこのように増えているのかといえば、大きな要因としては、やはり2015年1月1日からの相続について相続税が改正され、相続税の非課税部分の基礎控除は4割近くも引き下げられたことだろう。
このとき、基礎控除額(非課税枠)が、「5000 万円+1000万円×法定相続人の数」から「3000 万円+600万円×法定相続人の数」に改正されたている。一人っ子であれば配偶者及び子供2人で7000万円まで非課税だったものが、4200万円までしか非課税にならなくなったわけだ。
これは、想像以上に大きい。相続財産の金額の構成比からみてもわかるように、土地が一番大きいのである。「預金なんて4200万円もないからまったく関係ない」と思っている人もいるだろうが、「土地の評価額を算出したらあっさり4200万円を超えてしまう」という事例は多々あるのである。
もう一つの理由は高齢化
もう一つの要因は高齢化だ。高齢者人口及び割合の推移をみると2012年は、総人口1億2750万人に対し65歳以上の割合は7739万人。15年は口1億2660万人に対し8478万人。そして2030年には、総人口1億1662万人に対し1億483万人といわれている。
総人口が毎年減る一方で、65歳以上の人の割合が増えている。死亡率は高く、総人口に含まれる法定相続人の数は減っている。つまり相続が発生しても、法定相続人が少なければ、先ほどお伝えした非課税の枠も当然下がる。そして相続税が発生することになる。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内だ。2015年1月から適用されている相続税の基礎控除額引き下げなど相続税改正の影響は、主に2016年11月以降に反映されている。だから2016年11月以降の相続税収が増加している。
相続税の増収の要因として、基礎控除引き下げの影響も大きいことが分かる。相続税の申告は、毎春の確定申告とは関係がない。あくまで被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に行い納税する必要がある。
多額の資産が相続や贈与によって若い世代に移転することで、経済は活性化するのが相続税増税の一番の狙いである。それを踏まえると、国は今後さらに相続税税収の増加を求めるだろう。相続は一次相続だけの問題ではなく、二次相続(父母どちらかが死亡した際に始まる通常の相続(一次)の後、残ったもう一方の親も死亡して始まる相続)の問題もからため、慎重に行う必要があり、生前に対策する必要性は高いだろう。
眞喜屋朱里(税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表) この筆者の記事一覧