年賀状,初売り,延期,過剰サービス
(写真=wdeon/Shutterstock.com)

正月恒例の年賀状配達だが、2017年は1月2日の配達をしないという。元旦の配達はこれまで通りだが、配達しきれない分は2日でなく3日の配達となる。ほかにも、ここ数年元日に初売りをしていた百貨店の中で、3日に遅らせるところもある。不便を嘆く声もあるものの、「そもそも過剰サービスだった」として、こうした動きを歓迎する意見も聞かれる。

中止でも混乱は無いとの判断

年賀状の2日の配達を休止する背景には、発行枚数の減少がある。2015年度はピークの2003年度(44億5936万枚)の 約3割減の32億167万枚にまで落ち込んだ。2016年に発行した年賀状は28億5329万枚で、03年度に比べると3分の2。

ちなみに2016年1月2日の配達枚数は1億5400万枚だそうだが、これは正月三が日の配達でいえば7.7%程であり、配達しなくても大きな混乱はないと判断したようだ。2018年以降も同様の方針で、従業員にとっては嬉しい正月休みとなりそうだ。

三越伊勢丹は16年から初売りを遅らせている

百貨店の初売りにも変化が現れている。

1980年代前半頃までは官公庁の御用始めの1月4日に合わせて初売りをする店が多かったが、数年前から、「そごう」や「西武」などでは元日初売りが行われている。

コンビニやファーストフード店も飽和状態といえるほどあるため、元日から店が営業していることに違和感を覚える人が少なくなったといえるだろう。

こうした中、三越伊勢丹ホールディングスでは2016年から伊勢丹新宿本店など一部の店舗で初売り日を3日にしている。新潟三越伊勢丹(新潟市)も2017年の初売りは3日からとし2日は休業とするようだ。初売りを1日遅らせる理由について、日経新聞によると、三越伊勢丹ホールディングスの浅田龍一社長は、「従業員や取引先に正月はゆっくりと休んでもらい、正月という文化を感じてもらいたい」と述べたという。

売り上げについては、2016年の初売りでは、伊勢丹新宿本店や三越銀座店など首都圏を中心に一部の三越伊勢丹店舗が1月3日に行った。前年の初日を上回ったという。

一方で、髙島屋や大丸松坂屋、そごう・西武、阪急阪神百貨店、パルコ、東急プラザなどは、例年通り元日か2日に初売りだという。

サービスに求める水準が高すぎないか

年賀状の2日配達を中止するのも、2日の初売りを3日にするのも、これまでの反省から来ている。正月とは関係ないが、ファミリーレストラン・ロイヤルホストも、2017年1月までに24時間営業をやめることを決めている。早朝や深夜の営業短縮も進めているようだ。
たしかに小売店がいつでも開いていれば便利だし、宅配便が何度も再配達してくれれば助かるし、鉄道が常に分単位で予定通り到着するのはありがたい。こうした点は、来日した外国人にとってみれば「日本はすごい」と評価されているところかもしれない。

しかしその裏には、正月にゆっくり休めない百貨店従業員や、何度も無駄足を強いられる宅配便ドライバー、遅れると乗客から直接文句を言われる駅員などのストレスやハードワークがある。

充実、徹底したサービスを「過剰ではないか」「消費者が求める水準が高くなり過ぎていないか」という指摘は従前からあったが、売り上げ機会を減らしたくない多くの企業は、こうした“過剰”サービスをやめようとしなかった。

だがそれが変わり始めているのだ。こうした動きは今後もますます広がるだろう。そうすれば逆に、ライバルが正月などに営業しないことをチャンスとみて、むしろ営業を拡大する企業も出てくるだろう。どちらが正しいとはいえないが、少なくとも自分が利用したい店や企業が正月や三が日の営業をやめるというとき、反射的に「困る」と反対するのではなく、「本当に必要かどうか」を考えたいものだ。(ZUU online 編集部)