トランプ大統領の誕生により金融市場が活性化するーーそう指摘するのは、世界最大級のヘッジファンドの創業者であり、世界的な投資家として知られるレイ・ダリオ氏だ。
同氏は運用資産額10兆円を超える世界最大級のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」を立ち上げ、設立以来の累計利益額はジョージ・ソロス氏をも超える世界でも指折りの投資家である。リーマンショック前に危機を事前に予想して大損失を回避したことでも知られる。
ダリオ氏の発言は政治家も注目するとまで言われているが、なぜトランプ氏により金融市場は活性化すると考えているのだろうか。今回はダリオ氏が考えるトランプ大統領についてみていこう。
レイ・ダリオが分析するトランプ政権5つのポイント
現在、金融市場ではトランプ氏の主な政策が注目され材料視されている。特に大規模なインフラ投資や減税はアメリカ経済の成長を底上げするものとして見られており、株式金融市場もトランプ氏当選以降は世界的に上昇する結果となった。
トランプ氏の政策や過激な発言ばかりに注目が集まりがちだが、ダリオ氏はドナルド・トランプという人間自体にも分析の焦点をあてているようである。特にそのビジネスマンとしての才覚に注目しているようである。
1. 高い目標達成意欲
ダリオ氏はトランプ氏を「逆境に臆することなくタフな交渉に挑むディール・メーカー(交渉人)」と称している。また、次期トランプ政権の高官たちも経済や外交政策に大きな変革をもたらす確固たる意志を持っていると分析しており、トランプ政権の人間性が政治
経済・金融市場に大きな変革をもたらすと考えているようだ。
2. 歴代政権を圧倒するビジネス経験
ダリオ氏はトランプ政権の人間性のほかに、彼らのビジネスや政治経験にも注目している。トランプ政権の次期高官8人のビジネス経験は歴代政権でも群を抜いて高い。彼らのビジネス経験年数の合計は83年、政治経験年数の合計は55年である。ちなみにオバマ政権のビジネス経験年数の合計はわずか5年、政治経験年数は117年と圧倒的に政治経験が豊かな人選となっていた。
トランプ政権は政治経験年数では歴代政権と比較しても低水準だが、ビジネス経験年数と政治経験年数の合計は138年と歴代政権と比較してもかなり高い水準にも注目しているようだ。
3. 近年の米政権では最も保守的な政権
ダリオ氏はトランプ政権の思想も分析している。レーガン元大統領以降、経済政策に関しては共和党は右傾化の傾向があり、民主党は左傾化の傾向があると指摘している。トランプ政権は非常に保守的な政権になるとみられているがダリオ氏もそのように見ているようだ。
ダリオ氏はトランプ政権を直近の歴代政権の中では最も保守的な政権だと指摘しているが、その度合いは平均的な共和党員よりもやや高い程度だという。ただ、共和党内でも自由貿易や関税などについてトランプ氏と意見が異なる勢力もあり、不確実要因も存在すると指摘している。
4. 外交政策は攻撃的
ダリオ氏はトランプ氏の外交政策は比較的攻撃的なものになるだろうと分析している。問題は、その攻撃的な姿勢が思慮に富んだものであるのか、あるいはただ無謀なだけであるのかという点だ。トランプ氏の外交政策がどちらなのかはすぐに明らかになるだろうとダリオ氏は指摘している。
5. たたき上げのビジネスマンたち
トランプ政権はいわばビジネス経験豊富なたたき上げのビジネスマン集団であり、高い目標達成意欲で問題に取り組んでいく肉食系の政権だといえそうだ。歴代政権と全く毛色が異なるトランプ政権の4年間は非常に興味深いものになるだろうとダリオ氏は見ている。
トランプ政権が金融市場のアニマルスピリッツを呼び覚ます
ダリオ氏が分析するトランプ政権はすでに説明した通りだが、ダリオ氏はトランプ政権が金融市場のアニマルスピリッツを呼び覚ますのではないかと考えているようだ。減税や財政拡大よりもトランプ政権によるアメリカ全体の変化が金融市場を呼び覚まし、資本を惹きつける可能性があるとダリオ氏は指摘している。
トランプ政権が経済の好循環を作りだすことができれば、リスクオン(金融市場がリスクをとって収益を追求する状態)の動きは大きなものになる可能性があるとダリオ氏は指摘している。もちろん、トランプ氏の政策も非常に大きなインパクトを与える。現代は巨額のマネーが一瞬のうちに移動してしまう時代だ。
金融市場にとって不都合な政策や法律は特定セクターに大きな悪影響を及ぼす可能性も指摘している。そして、現在はトランプ政権が好意的に受け止められており、金融市場が一気に活気づいているのだ。
これまでの政権とは考え方も経験も全く異なるトランプ政権の誕生は経済・政治・そして金融市場に大きなインパクトを与えるとダリオ氏は指摘しており、この変化のうねりが金融市場を活性化させると考えているようだ。(アナリスト 樟葉空)
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