介護費用,親の介護
(写真=PIXTA)

厚生労働省の調べによれば、2016年の平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05歳と、それぞれ過去最高を更新している。また、90歳まで生きる確率は男性で約25%、女性で約50%であり、まさに超高齢化社会だ。

実家の両親が60代であれば、まだまだ元気に仕事や趣味に飛びまわっている方も多いだろう。しかし介護など無縁、と考えるのを先送りしているのは危険だ。ある日突然ケガをしたり、風邪をこじらせたり等、ちょっとしたことがきっかけで介護が必要になるのはよくあることだ。親が元気な時にこそ、介護についても考えておこう。

親の介護が必要になるのは何年後なのか

老後の期間は長くなったが、平均寿命とともに最近注目されているのが「健康寿命」だ。これは、介護を受けたり寝たきりになったりせず、日常生活を送れる期間のことで、男性は71.19歳、女性は74.21歳である。(参考:2015年度厚生労働科学研究補助金健康日21(第二次)の推進に関する研究)つまり、平均して男性で9.6年間、女性で12.8年間、介護状態になる可能性があるということだ。

父親が71歳、母親が74歳の時、自分は何歳になっているのか。一般的に、40〜50歳代になると親の介護が必要になることが多いが、実際に計算してみると実感がわいてくるのではないだろうか。

筆者は現在48歳だが、ここ数年、周りには親の介護をしている知人や友人が増えてきている。親と同居しながら自宅で介護をしている人もいるし、きょうだいと交代で親の家に通う人もいる。最近は施設への入居を希望する親も多く、その順番待ちをしている人もいる。状況は様々だが、家族それぞれの思いがあり、苦心することも少なくないようだ。

介護費用はいくら必要か

介護にかかる費用は、要介護度だけでなく、親の希望や家族の状況によっても大きく変わってくる。費用や期間が予測しにくいので、自分の収入で親の面倒を見られるのか心配になる人も多いだろう。そこで、まずは平均的な数字を見てみよう。

○要介護状態となった場合の費用
介護状態になった場合、一時的に必要な初期費用がある。たとえば、住宅をバリアフリーへリフォームや、介護用ベッドや車椅子を購入などだ。そういった公的介護保険の範囲外の費用に対して、必要と考える金額を尋ねた調査結果は生命保険文化センター「2015年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、252万円と考えられている。

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また、月々の費用は同様に16万8000円となっている介護の期間が、男性平均の9.6年間なら約1935万円、女性平均の12.8年間なら約2580万円が必要な計算だ。

表2

○高齢者向け施設の費用
高齢者向けの施設には様々な種類があり、介護度やサービス内容によって比較検討をする必要がある。地方公共団体や社会福祉法人などが運営している公共型施設の他に、民間が運営する施設もあり、それぞれに特徴が異なっている。

公共型は比較的費用が安く設定されていて、「特別養護老人ホーム」だと入居一時金は不要、月額利用料は部屋のタイプによって5〜15万円だ。しかし、待機人数が多くなかなか入居できないのが問題となっている。

公共型施設には、介護型の「ケアハウス」もある。重度の要介護者には不向きだが、入居一時金は数十万程度、月額利用料は16〜20万円が多い。

一方、民間型はほとんど待つことなく入居できるが、経済的負担は重くなる。「有料老人ホーム」、「認知症高齢者グループホーム」などがあるが、入居一時金だけで1000万円を超えるところも珍しくない。さらに月の利用料が10〜30万円する場合もあるので、実際に入居を検討する際にはじっくり選ぶようにしたい。

親の希望と現実を確認しよう

親の介護には少なからぬ費用がかかるが、基本的には親自身に準備しておいてほしいもの。自分の結婚や出産、住宅購入など、必要な資金は他にもある。親の介護費用なら不足があれば援助はしたいが、際限なく出せるわけではない。せめてどの程度の費用を見積もっておくべきか、目安だけでもわかれば安心だろう。

そこで、まず知っておきたいのが親の希望だ。もしも介護が必要になったら、どこに住みたいのか、どのような介護や医療を受けたいのかをあらかじめ聞いておくと情報収集も効率よくできる。

そして、親の収入も大切なポイントだ。もしも施設の入所を検討するなら、月額利用料が年金の範囲内であれば無理がない。貯金だけでは入居一時金が足りないようなら、早めに資金作りをしておくこともできる。

介護で大切なのは、ひとりで抱え込まないこと

誰しも、健康で長生きがいいと思っているだろう。しかし、もしも介護が必要になったら、決して一人で抱え込まず、家族や地域で協力していくことが大切だ。兄弟などの身内だけではなく、地域の相談窓口など、活用できるサービスは多くある。今後は、ますます高齢者が増えることで、医療制度や介護保険制度の改正が想定される見込みだ。今後もチェックを怠らないようにしておこう。

そして、親が元気なうちに、介護について話しておける関係を作っておきたい。経験者によれば、介護が現実的になるとなかなか話せないものなのである。

タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)36歳の時に2人の子をつれて離婚し、大手生命保険会社に営業として就職。そ の後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを発症。現在はがんとお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FP