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(写真=beeboys/Shutterstock.com)

相続税と聞くと、「まだまだ先の話だよ」と感じたり、「相続するほどの資産はないから自分には無縁だよ」と思っていたりはしないだろうか。

2015年の改正相続税法により、これまで相続税を支払う必要が無かった人々に対象者が拡大しており、計画的な相続プランを立てることが求められている。いきなり言われても、どのように対策すればいいのかわからない方も少なくないだろう。ここでは、相続税対策のうち、「生前贈与」と「生命保険」を活用した対策を紹介していく。

相続税対策をおこなう必要性 富裕層だけのハナシではない

相続税対策を紹介する前に、まず、2015年の改正前後の変化を確認しよう。相続税には「基礎控除枠」が認められており、基礎控除額を超えた相続財産分に関して相続税が発生する。この基礎控除額が以下のように変更された。

改正前:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
改正後:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

改正前後を比較するとベースの控除額が4割も引き下げられており、法定相続人の数によってその差はより拡大する。例えば、妻と子ども2人が相続人である場合、改正前であれば「8,000万円」まで相続税が掛かからなかったのである。しかし、改正後は基礎控除枠が4,800万円になった。東京23区内に戸建てを所有している家庭であれば、対象となる可能性は高い。富裕層だけの問題ではなく一般家庭にも十分関係する問題へと変わってきているのだ。

相続税対策1. 「生前贈与」を活用する方法

生前贈与とは、生前に贈与を行うことで財産を減らし、それによって相続税を減らすことを目的とした方法だ。贈与をする場合、贈与された財産に対して贈与税が掛かる点には留意したい。

生前贈与には、「一般贈与」と「相続時精算課税制度」の2種類があり、それぞれ性質が異なるため簡単に解説しよう。

まず、一般贈与に関して、贈与税の計算は1月1日から12月31日をひと区切り(暦年)として考えるため、正式には暦年課税制度と呼ばれる。贈与税には、相続税と同じように基礎控除枠が認められており、年間110万円までは非課税で贈与することができる。毎年110万円ずつ20年間贈与した場合、2,200万円を贈与税ゼロで渡すことができる。

もうひとつの相続時精算課税制度とは、60歳以上の被相続人から、20歳以上の相続人への贈与のうち、2,500万円までの特別控除枠が認められおり、それを超えた分には一律20%の贈与税がかかる制度だ。贈与者である被相続人が亡くなった際には、贈与財産(贈与時の価格)を含めて相続税が計算される。まとまった財産を先に移転したい場合や、値上がりや定期的な収入が見込める財産を事前に次世代に移転しておきたい場合などに有効な手段だ。この制度を利用した場合、同一人物からは一般贈与を利用できなくなったり、一定の直系親族間の贈与にのみ認められたり、複雑な仕組みになっているので、詳細は税理士に問い合わせて頂きたい。

相続税対策2. 「生命保険」を活用する方法

生命保険を活用することで相続税が節税できる理由を解説しよう。

生命保険の死亡保険金は相続税の対象だが、「500万円×相続人の数」の非課税枠が設定されている。現金で相続した場合、そのすべてが相続税の対象だが、生命保険の死亡保険金で受け取る場合、非課税枠分を控除した金額に対して相続税が課されるため、現金を保険に変えるだけで税金が少なくて済むわけだ。

注意点としては、契約形態(契約者・被保険者・保険金受取人が誰になるか)によって、受取人の税金の種類が変わる。以下、3つのケースで見ていこう。

ケース1:所得税:契約者と保険金受取人が同じ
親が子供へ生命保険加入に必要な金額を生前贈与し、相続税対策をするのであれば、加入の仕方は、契約者(子)・被保険者(親)・保険金受取人(子)になる。受け取る保険金は所得税・住民税の対象になる。生前贈与した金額に応じて贈与税も支払う必要がある。

ケース2:贈与税:契約者と被保険者と受取人が異なる
契約者(父親)・被保険者(母親)・受取人(子)にした状態で母親が死亡すると、受け取る保険金は贈与税の対象になり税金がかかってしまう。

ケース3:相続税:契約者と被保険者が同じ
契約者(親)・被保険者(親)・受取人(子)にすることで、相続税の対象になる。また、生命保険の死亡保険金は、(500万円×法定相続人)の金額までは非課税になるので、現金や不動産で残すよりも、節税することができる。

生命保険を活用しようとしても、契約形態に注意しなければ、想定外の税金を支払うことになりかねないのである。生命保険を活用するのであれば、加入方法と受取人の関係をしっかり踏まえた上で活用していただきたい。(提供: みんなの投資online

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