住民税を特別徴収(給与天引き)によって納めている方は心配する必要はないが、普通徴収によって納めている方や、あるいは特別徴収をする側である給与支払者の方などは、特に住民税を滞納した際に発生するリスクについて理解しておくべきだ。少しの延滞金が課されるだけで済めばよいが、督促に気づかず放置してしまうと資産等が差し押さえられる可能性もある。延滞金の計算方法なども含めて確認していこう。

目次

  1. 住民税を滞納した場合のペナルティ
  2. 延滞金の割合
    1. ・平成12年1月1日~平成25年12月31日
    2. ・平成26年1月1日以降
  3. 延滞金の計算方法
  4. 住民税の延滞金の計算例
  5. 住民税を滞納してしまった場合にとるべき対応
  6. 延滞金の軽減措置

住民税を滞納した場合のペナルティ

「国税」を滞納した際に課せられるペナルティを「延滞税」と呼ぶのに対し、住民税などの「地方税」を滞納した際に課せられるペナルティを「延滞金」と呼ぶ。また、国税に関する申告を偽った際に課せられるペナルティが「加算税」であるのに対し、地方税ではこれを「加算金」と呼ぶ。

呼び名が違うことからも分かる通り、それぞれのペナルティは似通ってはいるものの、厳密には扱いが異なる。そこで、今回解説するのはあくまでも地方税にかかる「延滞金」に関するものだということを念頭に置いてご覧いただきたい。

延滞金の割合

延滞金として課せられる割合は、その税金の納期限によって次のように区分される。

・平成12年1月1日~平成25年12月31日

納期限の翌日から1か月経過する日までの期間:特例基準割合

納期限の翌日から1か月経過した日以降の期間:年14.6%

・平成26年1月1日以降

納期限の翌日から1か月経過する日までの期間:特例基準割合+1%

納期限の翌日から1か月経過した日以降の期間:特例基準割合+7.3%

特例基準割合とは、延滞金や還付加算金の額の算出などに用いられるもので、従来の公定歩合(厳密には「前年の11月30日を経過するときの商業手形の基準割引率」)に年4%の割合を加えたものを指す。また、平成26年1月1日以降については「銀行の新規の短期貸出約定平均金利」を基準に、前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に年1%を加えた割合となる。なお上限は7.3%とされている。

参考として、平成26年~平成29年までの特例基準割合は表の通り。

期間 割合
平成26年1月1日~平成26年12月31日 1.9%
平成27年1月1日~平成27年12月31日 1.8%
平成28年1月1日~平成28年12月31日 1.8%
平成29年1月1日~平成29年12月31日 1.7%

延滞金の計算方法

延滞金は、「納期限の翌日から1か月経過する日までの期間」を日数A、「納期限の翌日から1か月経過した日から納付までの期間」を日数Bとして、それぞれの期間について次の算式で求められる。

・平成25年12月31日以前

延滞金=[(税額×日数A×特例基準割合)÷365日]+[(税額×日数B×14.6%)÷365日]

・平成26年1月1日以降

延滞金=[(税額×日数A×(特例基準割合+1%))÷365日]+[(税額×日数B×(特例基準割合+7.3%))÷365日]

なおこれらの計算に際して、100円未満の端数や、全額が1,000未満の延滞金は切り捨てる。

住民税の延滞金の計算例

・平成25年12月31日以前

税額を100,000円、納期限を平成23年2月28日、納付日を平成23年4月27日とした場合、次の計算によって延滞金が求められる。

[(100,000円×31日×4.3%)÷365日]+[(100,000円×27日×14.6%)÷365日]

=365円+1,080円=1445円(100円未満切り捨て)=1440円

・平成26年1月1日以降

税額を100,000円、納期限を平成28年2月29日、納付日を平成28年4月27日とした場合、次の計算によって延滞金が求められる。

[(100,000円×31日×2.8%)÷365日]+[(100,000円×27日×9.1%)÷365日]

=238円+673円=911円(1,000未満切り捨て=0円

後者の場合、計算から求められた通り延滞金は課されないこととなる。これは計算の基礎となる税額にもよるが、滞納期間が1~2か月程度あれば延滞金は課されないことも多く、課されたとしても数千円といったところだろう。では住民税を滞納してもさほど問題は生じないかと言えば、そうではない。

住民税を滞納してしまった場合にとるべき対応

住民税や固定資産税など、地方税を滞納してしまった場合には、速やかにこれを納付する、あるいは区市町村役場へ問い合わせるなどして、納税意思があることを主張するべきだ。さもなければ、督促ののちに資産が差し押さえられてしまう可能性がある。地方税の滞納については、延滞金よりもむしろ差し押さえを心配するべきとも言えるだろう。

延滞金の軽減措置

しかしながら、さまざまな理由によりこれを納められない状況がある。事業不振であったり、自身の病気、負傷、あるいは災害や盗難に見舞われるなど、止むを得ない理由はいくらでもある。こうした状況においては、その事情を区市町村役場へ申告、申請することで納付の猶予や延滞金の免除などを受けることができる。

猶予や減免の適用はあくまでも止むを得ない場合の対策であり、原則としては納付期限までに納めることを強く意識すべきだ。

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