WEF,グローバルリスク
(写真= ymgerman / Shutterstock.com)

世界経済フォーラム(WEF)が1月11日、「グローバルリスク・レポート2017」を発表、世界の最大の懸念として「所得格差」「社会の分断化」「ポピュリズムの台頭」「異常気象」「サイバー攻撃」などを挙げた。

グローバルリスクとは

グローバルリスクとは、今後浮上するあるいは起こりうる国際的社会問題を指す。WEFが2006年から毎年発表している「グローバルリスク・レポート」では、今後10年間におけるリスク発生の可能性、また発生による社会的影響などが査定されている。

第12版となる最新版では、地理的懸念、社会的懸念に加え、環境的懸念が急激に強まっている。経済的懸念では拡大する所得格差が高リスク視されているほか、デジタル化にともなうサイバーリスクや人間とテクノロジーの共存、高齢化、激化するテロや紛争が世界平和におよぼす影響などに焦点が当てられている。

「注視すべき5大リスク」市場資本主義の再編が重要課題に

5位 高齢化
4位 デジタル化
3位 社会分断
2位 地球温暖化
1位 所得格差

金融危機以降最大の懸念のひとつだった経済リスクは、2013年以降弱まっている。しかし「失業・不完全就業」「財政危機」「金融構造・機関の緩怠」などへの懸念は依然として強く、WEFは市場資本主義の再編が今後の重要課題になると予測している。

特に「所得格差の拡大」は今後国際情勢を大きく左右する最大のリスクとされており、早急な解決策が投じられないかぎり、将来的に深刻な影響をおよぼす可能性が極めて高い。

各国間の所得格差は過去30年間にわたり縮小傾向にあるにも関わらず、個人の所得差は過去最大にまで開いている。クレディ・スイスが昨年発表したレポートでは、世界人口のわずか1%が総資産の48%を所有しているのに対し、70%の総資産は1%にも満たないという異常な事実が報告されている。

社会不安を象徴するBrexit、米大統領選挙など

これほどまでに所得格差が開いた根本的な原因として、経済市場における長期的構造問題が指摘されている。景気が回復基調にあるとされている経済大国も例外ではない。昨年の英国EU離脱や米大統領選挙結果は、不平等性に起因する大衆の不満が「エリート」と称される高所得層への反発心と移行し、社会不安がピークに達しつつある現状を反映しているにすぎない。

WEFはこれまでレジリエンス(耐久力)構築には社会安定の確保が欠かせない要因であると、繰り返し強調してきた。所得格差が経済成長だけではなく、社会の様々な面に不安定性を投げかけることは、多数の専門家が再三にわたり警告している。一例を挙げるとイェール・ロー・スクールのエイミー・チュア教授も著書「富の独裁者」の中で、資本主義が所得格差を生みだし、やがて政治的混乱を招く危険性を指摘している。

「今後10年以内に起こりうる可能性の高い5大リスク」

5位 サイバー攻撃による大量のデータ流出(テクノロジー・リスク)
4位 テロ攻撃(地理リスク)
3位 自然大災害(環境リスク)
2位 難民危機(社会リスク)
1位 異常気象(環境リスク)

2016年版では2位だった異常気象への懸念が最大のリスクとして浮上。昨年は米国各地で過去100年の記録を塗り替える寒波が訪れたほか、ロシアやカナダが北極よりも気温の低い氷点下50度に。サハラ砂漠で約40年ぶりの雪が降ったかと思えば、今年にはいってからはスイスでは積雪量が平年の50分の1に減少。サウジアラビアの砂漠は緑化しているという。こうした例が氷山の一角でしかないことを考慮すると、異常気象への懸念が高まるのも当然だろう。

今年新たに加わったリスクはサイバー攻撃だ。テクノロジーの進化が人間社会に生みだした脅威のひとつである。個人を狙った単体攻撃から政府機関に狙いをさだめた大規模な犯罪まで、社会が利便性や娯楽と引き換えに払わされている代償は、今後ますます巨大化するものと思われる。

レポートではAI(人工知能)やロボットといった最新のテクノロジーリスクも指摘されている。人間とロボットが最適な形で共存できる環境創りが、今後の重要課題のひとつとなるだろう。

「今後10年以内に社会的影響をおよぼす可能性の高い5大リスク」

5位 気候変動緩和策の失敗(環境リスク)
4位 自然大災害(環境リスク)
3位 水の危機(社会リスク)
2位 極限気候(環境リスク)
1位 大量破壊兵器(地政学リスク)

個人、国、企業、政府などに大きな影響をおよぼす可能性が最も高いリスクとして、大量破壊兵器が1位に。異常気象同様、昨年2位から順位が繰りあがっているということは、それだけ潜在的影響としてのリスクが強まっていることになる。

シリア、アフガニスタン、パキスタン、リビアなど耐えることのない国家紛争や世界各地で相次ぐテロを前に、大量破壊兵器がいつどこで使用されても不思議ではないほど、世界情勢は緊迫している。

移民問題は継続 「包括的な成長」が社会の分断化を食いとめる?

2015年版から大きなリスクとして焦点の当たっている移民問題は、継続して社会に影響をあたえるものと予測される。

OECD(経済協力開発機構)は2007年から2009年にかけ、加盟国17カ国のGDP(国内総生産)が移民の貢献で平均0.35%上昇したと推測している。移民問題が国の将来を大きく変える結果となった英国は、平均を上回る0.46%という数字が報告されている。

しかしWEFは移民が経済成長に貢献している点を強調する一方で、「突然大量の移民が流入してきた国では、社会制度や物資に圧力が加わる」とネガティブな影響についてもふれている。欧州に2015年に流入した移民の数は100万人以上。2014年の4倍以上を上回っている。

移民問題や前述した所得格差などが複雑に絡み合い、社会あるいは文化を分断させる一因となっていることは疑う余地がない。WEFは欧米の民主主義制度が危機に直面している可能性を懸念すると同時に、社会に安定をもたらす有効的な手段として各国の政府が「より包括的な成長の促進」に取り組むことなどを提案している。(アレン・琴子、英国在住のフリーライター)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)