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大阪市(写真=Sira Anamwong/Shutterstock.com)

マンションの空き室などに観光客を泊める民泊で、多数の参入が見込まれた大阪市の特区民泊への申請が低調なまま推移している。高いハードルだった最低宿泊日数「6泊7日」が、1月から「2泊3日」に短縮されたものの、東京都大田区と比べて厳しい規定が敬遠されたとみられる。

市内にあるとされる違法民泊はざっと1万件。このままではこれまで通り、違法民泊がはびこることになりかねず、市は対応に苦慮している。

説明会は盛況なのに認定わずか8件

国家戦略特区を活用した大阪市の民泊は2016年10月31日にスタートした。国が特区民泊の最低宿泊日数要件を緩めたのを受け、1月から「2泊3日」に要件を緩和している。

大阪府内のホテル、旅館など宿泊施設稼働率は、観光庁の2016年9月調査で82.6%に達し、東京都を抑えて全国トップに立っている。人気ホテルとなると90%を超すところもあり、日本政策投資銀行関西支店は「客室の絶対数が不足している」とみている。このため、民泊で宿を確保する外国人観光客が少なくない。

大阪観光局の調査では、訪日外国人観光客の平均大阪滞在日数は3.9日。これまでは実態に見合わない「6泊7日」の最低宿泊日数が高いハードルとなってきたが、要件の緩和が申請の大幅増加につながるとみられていた。これを裏付けるように、市が2016年末に開いた民泊事業者向け説明会には、約120人が参加している。

しかし、ふたを開けてみると1月16日現在で特区民泊に認定されたのは計8件に過ぎない。担当の市生活衛生課は「窓口で随時、申請を受け付けて審査し、審査を通過したものは順次認めているのだが…」と業者の反応の低さに驚きを隠さない。

業者が参入しにくい、がんじがらめの規定

特区民泊の認定を受けるには、民泊施設であることを周辺住民に知らせるほか、24時間体制で対応可能な窓口の設置、ごみ処理方法の外国語での案内表示など業者が対応を求められる課題が多い。規定通りに対応すれば、それなりのコストがかかる。

インターネット上の仲介サイトには、違法民泊とみられる業者が多数あるが、継続して予約が殺到する人気の部屋となかなか予約に入らない部屋に二分されつつある。人気業者はこのままで商売になると考え、不人気業者はこれ以上コストをかけたくないとの思いを持つという。

市の民泊規定が東京都大田区と比べ、厳格な点も業者の鈍い反応につながっている。大田区は住民説明の資料を近隣の留守宅に投げ込むことを認めているのに対し、市は説明会を欠席した住民に対して戸別訪問し、留守の場合は最低5回訪問することにしていた。

この点は国から条件が厳しいと指摘され、資料を投げ込む方式に改めたが、他にも厳格すぎる点はある。

大田区は建築基準上の建物用途を住宅または共同住宅としているが、市は共同住宅または寄宿舎と規定、それ以外の用途は受け付けていない。マンション管理規約の取り扱いでも、大田区は規約で明確に禁止したもの以外は民泊利用可能としているが、市は規約で禁止していない場合、マンション管理組合の承諾を求めている。

そのうえ、申請するとしても消防、建築、環境など市役所内のさまざまな部署を何度も回って手続きを済まさなければならない。こうした点も業者が特区認定に腰を引く理由の1つになっているようだ。

中央区のマンションで特区認定の民泊施設を営業している「とまれる」(東京)は「規定が厳格すぎ、合法業者をがんじがらめに縛っている一面も見える。もう少し規定を緩め、参入しやすい環境にしてほしい」と語った。

市民からの通報は3カ月で400件以上

市は業者に認定申請を呼びかける一方、違法民泊の取り締まりにも力を入れている。市保健所環境衛生監視課に旅館業指導グループを設置するとともに、専用の通報窓口を設け、市民からの情報提供を求めている。

その情報を頼りに取り締まろうというわけだが、指導グループがスタートした10月1日からの3カ月間で通報は406件、1506施設を超え、前年度1年間の184件を大幅に上回った。

多かったのは、違法民泊が行われているとみられる場所でのごみや騒音に関する苦情で、違法民泊に対する市民の不安が根強いことをうかがわせた。市保健所はこのうち1191施設に対し、職員を派遣して行政指導した。

しかし、取り締まりはすんなりといかない。サイト上でマンションの部屋番号、業者の電話番号など詳しいデータが明かされず、部屋と業者の特定に多大な労力と時間がかかるからだ。

このため、業者を見つければ対面で指導しているものの、大半はポストに警告書を投函するなど文書による指導にとどまっている。ただ、このままの状況では違法民泊がのさばりかねない。

市保健所環境衛生監視課は「きちんと手続きし、合法に営業している業者がばかを見てはいけない。再三の指導に是正が見られない場合は刑事告発も視野に入れ、厳しく対応していきたい」と強い姿勢を示している。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の 記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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