日本郵政が株式市場に上場したのが2015年11月。そこからすでに1年3か月が過ぎたが、ここにきて郵政株を保有している筆頭株主の財務省が追加売却して、復興支援のための資金にするという話が出ている。

売却時期や規模はいまだ定まっていないものの、保有比率80%を超える筆頭株主からの売り出しということもあり、日本郵政の株価へ少なからず影響を与えるのではないかと市場関係者の間で注目されている。日本郵政の上場後の値動きを振り返り、財務省の売り出しに伴う売り圧力がどの程度なのか、今後の値動きの予想も併せてみていこう。

郵政株上場の上昇はイベントによるものだった

郵政株は、上場時につく最初の値段が上場前の募集価格である1400円を大きく上回り、その後の株価推移も2カ月程度は上昇傾向にあった。2000円目前まで値を上げて、上場前・後に株を買った投資家全員が含み益になった。しかしその後は一転して下落、横ばい推移となっている。上場してから1カ月程度の間に株を購入した人はいまだに含み損失の状況だ。

上場後1カ月程度の株価上昇は、話題性に乗った個人投資家と、機関投資家による郵政株の買い(TOPIX買い)による上昇を期待した、短期投資家たちの先回り買いによるところが大きい。

つまり、上場時から2000円までの株価上昇は企業業績を見据えたものではなく、上場によるプレミアムと機関投資家による買いというイベントに支えられた上昇だったということだ。イベントが通過すれば、当然のように業績に合わせた株価へと収斂(しゅうれん)していくことが予想されていた。

残念ながら、そもそもの郵政株の業績は決して良いものとは言えなかった。郵政の業績は、ほかの金融2社によってその利益を支えられているともいわれている。イベント通過後の少々残念な株価推移は当然の流れに思える。では、今回の財務省による売り出しによって株価がさらに下がるのか、つまり売り圧力は強いのかを考えてみよう。

売り出しによる「暴落は無い」と考える2つの要素