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(写真=hywards/Shutterstock.com)

いま、投資商品として大きく注目されているのが、「不動産小口化商品」である。その名の通り、不動産を小口化して売買するものだ。

不動産投資というと、ローンを組んで賃貸収入で返済していくというイメージがある。ローン=負債(デット、Debt)なしでの不動産投資は考えにくいのが現実だ。その点、不動産の小口化商品はいまや一般的になったREIT(不動産ファンド)をはじめとして商品の多くは「出資(エクイティ、Equity)」商品として位置付けられている。

「不動産特定共同事業法」によって実現した不動産の小口販売

不動産小口化商品というと、1980年代後半のバブル時代に販売された商品を思い出す人が多いかもしれない。当時は、賃料(インカムゲイン)よりも不動産売買益(キャピタルゲイン)を主たる目的にしたものだった。

以前は、不動産小口化商品を販売する業者の資格などが法整備されていなかった。しかし、1994年になって不動産小口化商品の売買から投資家を保護する目的で「不動産特定共同事業法」が制定されたのである。この法律によって、不動産の小口化投資スキームに一定のルールができた。

たとえば、不動産特定共同事業法は「国土交通大臣」もしくは「都道府県知事」による「許可制」になった。さらに、不動産特定共同事業契約を締結して不動産特定共同事業を行う場合、最低資本金1億円以上の宅地建物取引業者でなければならず、情報公開の義務化や監督官庁への事業報告、業務管理者の常置なども義務付けられた。

こうした厳しい規制が設定されたために、不動産特定共同事業法に乗り出す業者が少なくなり、物件も少ない状況が続いた。

任意組合と匿名組合ってなに?

不動産特定共同事業法でよく見受けられるスキームは大きく2種類ある。ひとつは「匿名組合型」であり、もうひとつは「任意組合型」である。それぞれ投資の目的によっても異なるのでその違いをきちんと理解しておくべきだろう。簡単にその概要を紹介する。

● 匿名組合型
匿名組合型とは「商法」で定められたルールに沿って、投資家と営業者が「匿名組合契約」を結んで事業を行うものである。投資家が営業者に出資して、営業者はその資金によって取得した不動産の管理、運営を行う。不動産運用で得た収益は投資家に分配される。

投資家と営業者の2当事者の契約であり、3名以上の当事者の存在は認められていない。従って、営業者は各投資家と個別に契約を交わす。不動産名義は営業者となり、損失額が出資額を超えた場合、投資家が出資額を超えて損失を負担することはない。

● 任意組合型
任意組合型とは「民法」によって定められたルールに従って、各投資家が出資して組合を設立し、共同で事業を行う。組合の設立にあたっては2名以上の当事者が必要であり、組合員の数に制限はない。組合が自ら事業を行うが、その業務執行を「業務執行組合員」に委任し、運営してもらうことが多い。不動産運用で得た収益は、投資家に分配する。

任意組合型の特徴は、投資家の現物出資となることだ(登記を行えるケースもある)。匿名性は期待できなくなり、さらに登記費用なども必要になるため、自分の持ち分だけはしっかりと確保されるというメリットがある。

任意組合型は、現金と比較すると相続税の算出に使われる相続税評価額が低くなり、資産の圧縮効果が望めるために、相続税対策をしたい人などには向いている。

いずれにしても、不動産小口化商品はどんな目的で投資するかによって、匿名組合型か任意組合型かを選択する必要がある。投資金額は、1口10万円程度から1,000万円程度となっている。

投資で大切なのは「出口戦略」

一般的に投資で大切なのは、「出口戦略」だといわれる。不動産投資の場合、出口とは一般的に不動産売却することを指す。しかし流通市場が十分に形成されていない不動産小口商品は、投資口を売却することでのキャピタルゲインは現状見込めない。不動産小口商品に投資をする際は、インカムゲインと、流動性リスクのバランスを考えることが重要だ。(提供: みんなの投資online

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