学生時代の就職活動で何社から内定をもらっただろうか。バブル時代には友人同士で集まると内定通知でババ抜きができるほどだった、という都市伝説のような話もあるが、現代の学生においては量よりも質が重要視されているようだ。
ツールはPCからスマホへ
大学生が就職活動の情報収集に使うツールは、紙媒体からインターネット媒体へと移行してきた。そのため、学生たちは多くの情報を受け取ることができるようになり、それによって就活に変化が生まれてきている。
若年層に特化したネットリサーチ会社テスティーの調査によると、大学生の就職活動のメインツールはスマホだという。この調査はテスティーがスマホアプリ「TesTee」を使って行ったもの。調査は2月上旬、大学生644人を対象に実施。
就活のメインツールについては、就活経験のある大学3~4年生に「PCとスマホのどちらをメインツールにしていたか?」と質問したもので、3年生では「PC」が28.6%で「スマホ」が71.4%、4年生では「PC」が34.5%で「スマホ」が65.5%となった。
スマホを利用した学生のうち72.2%が大手の新卒向け就活サポートサイトを利用している一方、アプリを利用した人は37.5%にとどまっている。
内定1社で就活終了?
テスティーの調査では、就職活動を終えた4年生に「内定は何社決まっているか」との質問もしている。「1社」と回答した学生が75.3%で最も多く、次いで「2~3社」15.3%、「4~5社」8.2%、「6社以上」1.2%となった。
内定が「1社のみ」という学生が75.3%というのは、驚きの結果だ。内定をもらっても就活を続けるのではなく、1社から内定が出た時点で就職活動を終了する学生が多い、とも読み取れる。
1社の内定で就活を終了するということは、結果に満足もしくは納得したからなのだろう。エントリー数を多くして採用の可能性を広げる方法を取らずに、希望する会社に狙いを絞った就活を行うことで、効率的に活動を終えることができている。
ただし効率的な就活には事前の情報収集が欠かせない。ツールが紙媒体だった頃は限られた情報量しか得られないため、足で稼いで情報を集め自分を売り込むしか方法がなかった。しかし、今の時代は違う。ネット媒体は格差なく誰にでも情報を与えてくれる。スマホを手にした学生たちは、あふれる情報を取捨選択しながら希望する企業を見つけていく。
1年生から就活を始める学生も
テスティーは調査対象の学生に、「現在、就職活動をしているか」という質問をしている。「就職活動をしている」と答えたのは、大学1年生で13.2%、2年生で23.8%。「企業研究などの準備をしている」と答えたのは1年生で15.1%、2年生で23.8%だった。2つの回答を合わせると、1年生の3割近く、2年生の5割近くが何らかの就活に関する行動をとっているという結果となった。
学生たちが早くから動き始めているのにも、情報収集のしやすさが関係しているのだろう。就活スケジュールの後ろ倒しや前倒しなど、近年の就活を取り巻く環境は賑やかだ。また、インターンシップに参加する学生も増えている。さらには、外資系やベンチャー企業など就職協定にしばられない企業もある。1、2年生のうちから動くというのは、決して早すぎることではないだろう。
情報過多からくる疲労
ただし、学生たちは情報量の多さにうんざりしている部分もあるようだ。テスティーが行った「就職活動で困ったことは?」という質問では、「情報が多すぎること」という回答が見られた。
欲しい情報がネットですぐに手に入る今の時代は、便利ではあるものの情報過多に疲れてしまうという面ももっている。学生たちが1社の内定で就活を終えてしまうのには、「早く終わりたい」「面倒くさい」という本音も隠れている。
学生たちは、「エントリーシートの書き方」や「面接の受け答え」の方法についてはよく知っている。わからないことはネットで調べれば何でも教えてくれるのだ。だが、「エントリーシートを何通も作成するのは面倒くさい」「また面接に行かなければいけないと考えると気が重い」という学生は多い。なぜか。
学生たちはエントリーシートを書くにも、面接を受けるのにも、大量の情報を集めて取捨選択するところから始める。この作業の繰り返しは相当な苦労だ。しかし、1社の内定があればもう面倒を繰り返す必要はない。疲れなくて済む。
ツールの変化と学生の対応力
「疲れるのがイヤだから就活を終わろう」という考え方は、一見ネガティブに思えるかもしれない。しかし、少ない内定数で就活を終えるには絞り込んだ企業研究が必要だ。あふれる情報をうまく取捨選択して、理想の企業を見つけ出す技術が必要だ。
内定がもらえて満足もしくは納得したところで、学生は就活を終了させる。それがなければ、就活を終わらせる決断はしにくい。とにかく内定が欲しいと量を狙うのではなく質を重視した活動をした結果、少ない内定数で終わらせることができるのだ。
就活ツールの主力がスマホへと移行してきたことで、就活への取り組み方も変わってきている。今後もさまざまなアプリやツールが登場し、そのたびに学生たちは器用に対応していくのだろう。受け入れる側の企業としても、時代の変化を読み取る努力が大切になる。(渡邊祐子、フリーライター)