長時間労働で休みなし、責任は重く、専門知識が必要、それなのに賃金はゼロ――。そんな求人があったら、あなたは応募しますか?しかし、世界では多くの人がその仕事に就いています。その職業とは何でしょうか?
「世界で最もきつい仕事」
海外で「World's Toughest Job(最もきつい仕事)」という動画が話題になりました。ビデオチャットによる採用面接で、面接官は複数の候補者を相手に労働条件の説明をします。「24時間365日、休みなし」「体力と専門知識が必要」「報酬は、0円」――。「ありえない!」「ふざけてる」「合法なの?」との声が上がりますが、面接官は世界では何十億人もの人が実際に従事していると言います。その仕事とは何でしょうか?答えは、「お母さん」です。
お母さんの無償労働は、家族にとってかけがえのないものです。しかし、金銭的価値に置き換えにくいため、価値そのものを忘れられがちです。動画では、仕事の条件だと思って聞いているうちは信じられないといった表情だった面接希望者たちも、職業の名前を聞いて、納得した様子に変わりました。
このような状況から、家事や育児の無償労働をお金に換算する試みは政府や民間で定期的に行われています。日本ではドラマでも話題になりました。
主婦の家事労働の価値
ドラマでは、主人公の男性が同じく主人公の女性に結婚を装った家事代行サービスを依頼します。その対価として提示した金額は手取りで月給19万4,000円でした。年収にすると300万円ほどです。これは機会費用法(OC法)と呼ばれる試算法で、「無償労働の代わりに外で働いたら得られたはずの報酬」を主婦の賃金に換算するものです。
もう一つ主要な計算方法として、代替費用法(RC-S/RC-G法)があります。これは「主婦の仕事を外部サービスで代用した場合にかかる費用」から計算するものです。
たとえば1日の業務が炊事3時間、清掃1時間、洗濯1時間、買い物2時間、家計管理1時間、育児8時間(他作業と同時に行う)の計8時間だとします。炊事は調理員の時給1,163円、掃除は清掃員の時給992円、洗濯は洗濯工の時給1,015円、買い物や家計管理など家事雑事は用務員の時給1,141円、育児は保育士の時給1,238円をもとに計算すると、主婦の賃金は日給で1万8,823円、月収にすると55万円を超えます。
しかし、海外にはもっと高い試算があります。アメリカの調査会社salary.comが毎年行っている調査によると、主婦の家事労働の価値は11万8,905ドル(約1,200万円)にもなるそうです。
お母さんが「お母さん業」をできなくなったら
もし病気やけがなどでお母さんが家事や育児ができなくなったら、家計にはどのような影響があるのでしょうか。2つの影響が考えられます。
● 支出が増える
親や親戚などお母さんの代わりに無償で対応してくれる人がいない限り、家事育児を外注する必要が出てきます。食事は外食や総菜が増えると、自炊に比べてコスト高になります。また、掃除や炊事を家事代行サービスに依頼し、子どもを保育園やベビーシッターに預けるとなると家計には負担となります。
家事代行サービス大手の料金表を調べてみると、一般的なプランで週1回2時間利用すると1ヵ月 2万~4万円かかります。また、認可保育園の児童1人当たり月額保育料は、厚生労働省の調べによると「2万円以上3万円未満」の世帯が最も多いようです。しかし認可保育園は待機児童問題で入所が難しいため、もっと割高な認可外保育園か、1日1万円が相場と言われるベビーシッターになることもあり得ます。
● 世帯収入が減る
専業主婦には、傷病手当金や失業保険などの公的な保障はありません。また、専業主婦がいてくれたおかげでフルタイムや残業の仕事ができていた配偶者も、家事育児を負うとなるとこれまで通りに働くことは難しくなります。時短勤務やポジションの制限は、収入減に直結します。
いざという時のための備えと普段からの話し合いが大切
お母さんが家事や育児をできなくなった時の影響は生活面・経済面に広く及びます。しかし、経済的打撃については、貯蓄や保険などの備えで補うことができます。
一般的には、専業主婦には生命保険は必要ないと考える人が多いようです。なぜなら、一家の大黒柱として収入を得る夫と違って賃金労働をしていないので、働けなくなっても世帯の収入は保てるという考え方があるからです。しかし実際には支出増・収入減のリスクがあるので、専業主婦の保険も不要とは言えないかもしれません。
受けられる公的または私的な支援や勤務先の規則をもとに、もしもの時の必要額はどのくらいか、普段から家族で話し合いをしておくことが大切です。(提供: 保険見直しonline )
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