海外富裕層の資産隠しを阻止する目的で2013年以降、英国が導入した法人名義による不動産を対象とした特別税だが、期待されたほどの効果を上げていないことが、英ガーディアン紙によって報じられた。

現在も英国に高級物件を所有する200人以上の海外富裕層が、総額4400万ポンド(約61億4110万円)もの特別税を納めており、その金額は年々増加傾向にあるという。

導入からわずか数年で27億円増加、富裕層には「とるに足らない金額」?

2013年、法人名義による不動産所有登記に特別税を課す法律がキャメロン政権によって導入された。海外不動産への投資を悪用した脱税行為の監視を強化する意図で、2000万ポンド(約27億9431万円)以上の物件を所有する法人は、年間21万8200ポンド(約3052万円)の高額税金を納める義務がある。

英歳入税関庁のデータによると、2015年から2016年にかけて210軒以上の高額不動産所有「法人」が、総額4400万ポンド(約61億4110万円)を納付している。特別税導入の初年(2013年から2014年)と比較すると、1900万ポンド(約26億5183万円)の増加だ。

さらにはこれらの物件が「空き家」のまま放置されているケースも多い。つまりこれらの富裕層にとっては「使用してもいない物件に巨額の特別税を払ってまで隠しとおしたい資産がある」と考えざるを得ない。超富裕層を顧客にもつ会計士、ジェームス・モリソン氏は「2000万ポンドの物件を購入できる人物にとっては、21万ポンドの税金などとるに足らない」と指摘している。

ロンドン警視庁は2015年、英国での不動産投資を利用した脱税・金融犯罪摘発対策として、総額1億8000万ポンド(約251億3322万円)相当の高級物件に関する捜査を、過去何十年間にもわたり進めていたことを明らかにした。

この捜査によりナイジェリアの産油地、デルタ州のジェームス・イボリ元知事が、2012年に資金洗浄や詐欺共謀の罪で禁錮13年の刑をうけるなどそれなりの効果は上げている。しかし不動産投資が脱税の常套手段として定着していることは、数字を見るかぎり否定する余地がない。

特別税は今年4月から22万350ポンド(約3073万円)に引きあげられるが、租税回避を図る富裕層にとっては「とるに足らない」金額だ。国際汚職調査会社、グローバル・ウィットネスのチド・ダン氏は、「法人、個人所有に関わらず、すべての物件を公表する法律が成立しないかぎり、金融犯罪は撲滅できない」とし、さらなる監視強化を要請している。(ZUU online 編集部)

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