アルコール依存症の治療に効果があるとして、フランスでは既に処方が行なわれている筋肉けいれんの治療薬「バクロフェン」。3月17日に行われた会合で、この効果を裏付ける証拠が提示された。これを受け、仏製薬会社のエティファルムはアルコール依存薬として同薬の商品化申請を行う見込みだ。

アルコール治療薬として注目集める「バクロフェン」

バクロフェンは50年前にてんかん治療薬として開発。日本ではけいれんを抑える薬として、1980年代に飲み薬として薬価収載された。脳から脊髄に指令がうまく伝わらないことで、呼吸がしづらくなったり、痛みが生じたりする「痙縮」を抑えるために使用されており、近年では少量で、より効果を高めるために脊髄の周囲(髄腔)に直接投与する、髄腔内バクロフェン療法(ITB療法)といった治療法にも使われるようになっているという(東京女子医科大学医学部脳神経学科学講座による)。

アルコール依存症の治療薬として注目を浴び始めたのは2008年のこと。仏系米国人循環器専門医オリビエ・アメイセン氏)が、自身の著書『最後のグラス』でバクロフェンの大量投与によって、自らのアルコール依存症を克服したと書いたことがきっかけだった。

今回発表されたのは、18歳から65歳の大量飲酒者320人を対象に、2012年から13年6月にかけて行われた臨床試験について研究の報告結果。この研究では320人を2つのグループに分け、一つのグループにはバクロフェンを高用量投与し、他グループにはブラシーボ(偽薬)を与えた。飲酒をやめるようには指示は出されなかったが、飲酒をやめた、もしくは飲酒量が減った被験者は、ブラシーボのグループで37%だったのに対し、実際にバクロフェンが投与されたグループでは57%だったと言う。

同日に発表された別の研究結果でも、同様にブラシーボのグループに比べ、バクロフェンを投与されたグループでは大きく飲酒量が減ったという結果が報告された。

月内にも仏国内で商品化申請の見通し