線路と道路の両方を走ることができる「デュアル・モード・ビーグル(DMV)」が、2020年をめどに徳島、高知両県を結ぶ第三セクター鉄道・阿佐東線に導入される。DMVはJR北海道が開発した低コスト車両で、導入は全国で初めて。

阿佐東線は沿線人口の減少から開業以来1度も黒字になったことがなく、最も利用者が少ない三セク鉄道に何度も名前を挙げられてきた。徳島、高知の両県はDMVの導入で三セク会社の苦境を救うとともに、観光客を呼び込んで沿線を活気づかせたい考えだ。

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徳島県海陽町のJR牟岐線で2012年、走行実験をするDMV(写真提供=徳島県)

阿佐東線とJR牟岐線の約10キロを専用区間に

徳島県次世代交通課によると、DMVの運行計画区間は徳島県海陽町のJR牟岐線・阿波海南駅から高知県東洋町の阿佐東線・甲浦駅間約10キロ。DMV専用区間とし、座席20~30程度のDMV車両3台を2017年度から3年間かけて調達する。

同時に専用区間両端の阿波海南駅と甲浦駅に接続施設を設置してDMVが道路と行き来できるようにする。阿佐東線の海部-甲浦間は駅舎が高架上にある。片側の甲浦駅には長いスロープを新設するが、コスト削減のためにもう片側はJR牟岐線の阿波海南駅を使用する。牟岐線を運行するJR四国からは、既に協力の意向が示されているという。

甲浦駅で高架を降りたDMVは、道路を走って約40キロ離れた高知県室戸市の室戸岬へ向かう計画。道路上の運行は当面、地元のバス会社に委託し、周遊観光やイベント利用など観光目的とするが、将来は路線バスとしても活用したい考えだ。

徳島、高知両県と海陽町など沿線6県町は、2020年度までにDMV 調達や施設整備に10億円を投じる。2017年度当初予算には、6県町合わせて約1億8千万円が計上された。

導入時期はインバウンド観光がピークを迎えると予想される2020年の東京五輪に合わせた。DMV自体を目玉にし、徳島県南部から高知県東部へ国内外の観光客を呼び込もうと考えている。

徳島県次世代交通課は「沿線の人口減少で阿佐東線の経営は苦しくなっているが、経営を改善して公共交通を維持しなければならない。観光目的での活用を考えてもDMV導入の効果は大きいはず」と期待している。

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