組織の中でのマネジメントの課題は数多くあるが、ここ数年特に話題にのぼるのが「ゆとり世代」のマネジメント法だ。そのためにはまず、彼らの世代の特徴や価値観を理解する必要がある。
あらゆる意味で“マイペース”なゆとり世代
「ゆとり世代」とは、主に1980年代後半から2000年代前半までに誕生した世代で、2002年から2010年の間に小・中学生だった年代(2017年時点で21~30歳くらい)をいう。
制度として「ゆとり教育」が導入されたのは、2002年度の『学習指導要領』の改定時である。過去の「詰め込み式教育」の反省から、「ゆとりの中で豊かな人間性や、生きる力を育み、基礎知識を確実に定着させる教育」を目指すべく始まったものだ。
一口に「ゆとり教育」と言っても、たとえば、1994~1996年生まれは義務教育から高校卒業までの期間でゆとり教育を受けた、いわば「究極のゆとり世代」である。これに対し、1987~1989年生まれは義務教育時代の旧課程教育で、ゆとり世代後半の2002年生まれ以降はすでに脱ゆとり教育に移行していた年代で、その世代間特徴は異なっている。
傾向としては、前述の「ゆとりある」教育の結果、「基礎知識が他世代より低下した」ことや、「競争しなくてよい・一律でなくてよい」ため、「競争心が過分にない」ことなどが挙げられる。自分の好きなことと、それ以外を区別して考える傾向もある。たとえば、趣味などには最大限の努力を惜しまないが、それ以外はさほど労力をかけたくない、いわば「やる気のないマニュアル的仕事人」としての特徴が顕著になる。
ゆとり世代が持つ、多様な価値観と発展力
このようなゆとり世代の価値観は、グローバル化と同じで非常に多様化しており、これを理解することがこれからの組織マネジメントには必須事項となる。
たとえば、ゆとり世代が会社に求めていることでいえば、「やりがいはそこそこの、安定した職場」、もしくは「次の転職に向けて、スキルアップができる仕事」というものがあるだろう。これは、「手を抜いている」わけではなく、彼らは自分の力を出す場所を選んでいる傾向があるのだ。仕事はある程度きちんと行うが、それはプライベートや自分の好きなことをするためのツールとして考えているからで、それを阻害されるレベルのことまで求めていないということの裏返しだ。
「自分の人生をより良くするためにどう仕事と関わるか」という意味では、ゆとり世代の価値観は非常に合理的で、本来の「生きる力」に根差しており、多様化しているといえる。仕事と自分との距離感の取り方も上手な人が多く、必要に応じて自己主張ができることもこの世代のプラスの特徴だ。
また、「社会的意義のある活動」に興味をもつ傾向もあり、金銭的欲求より道義的な思考ができるという点では、組織にとっては多彩な視点をもたらしてくれる属性であるともいえる。
ゆとり世代へのマネジメントを考える
内包している実力は十分のゆとり世代。彼らをマネジメントするために必要なポイントは4つある。
まずは、「仲間として扱い、期待を伝えること」。これはゆとり世代に限ったことではない。何よりもまずは一緒に働く仲間として、組織がいかに彼らを必要としているかということや期待感をきちんと伝え、彼らのミッションを明確にするところから始めることが重要だ。
2つめは、彼らの信頼感を醸成するためにも、まずはリーダーとして実力を見せることだ。彼らの世代は相手をリスペクトできるかどうかを重要視している。「この人ならば大丈夫」と思ってもらえるよう、まずは率先して仕事を見せていくべきである。
業務を指示する際は、意図や背景などは具体的に伝えることも大切だ。仕事の意味が理解できれば、彼らのモチベーションも変わるだろう。結果のフィードバックも丁寧に行い、感謝の気持ちを伝えることも必須である。
最後に「叱責」の際は、「相手のことを思いロジカルに話す」ことだ。特にゆとり世代は、上手に叱られるという経験値が少ないケースが多い。何がいけなかったのか、自分としてどうすべきだったかを考えさせるいい機会にするといいだろう。
大切なことは、「ゆとり教育世代」と一言で区切らず、組織として彼らとどう向き合っていくかということだ。彼らの思考回路の背景にある教育制度も知識として知ったうえで、多様な価値観をいかにビジネスに転換していくか。マネジメント層として真剣に考えていくべきだ。(提供: 百計オンライン )
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