儲かるための「数字」講座

「数字」が読めると本当に儲かるんですか?

安易な値下げ,限界利益率,儲けパワー
(写真=Thinkstock/GettyImages)

「なぜ、うちの会社は赤字体質から抜けられないのか」
「安易な値引きをするから、社員を馬車馬のように働かせてしまうブラック化が進むのではないか?」

こうした疑問はおそらく 「会計・経理の知識がない」 という答えにほとんど集約されます。というのも、「会計や経理の知識を持っていない」ということは「会社の現状を理解する術を持っていない」ということを意味するからです。

楽天市場で人気の花屋を営む古屋悟司さんは、かつてこのことを痛切に感じたそうです。とにかく売上を上げることを目標とし、年商が大台の1億円を突破したにも関わらず、赤字体質による資金不足に不安を感じ続ける日々。

そうして倒産寸前まで追い詰められたときに出会ったのが、いくら売れば儲かるかがわかる「限界利益」や会社の現状を映す鏡ともいえる「限界利益率」といった「会計」の知識でした。その「数字の読み方」を授けてくれたスゴ腕の税理士さんのおかげで、経営のV字回復に成功し、以降黒字続きだそうです。

その古屋さんの実話を元にした書籍 『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』 から、数字オンチでもわかる「儲かる会計」の基本をみてみましょう。

いくら売れば儲かるのか?「限界利益」がカギに

ビジネスにとって、自分たちの活動の成果たるお金――つまり売上はとても重要です。しかし、利益が残らなければ、会社を存続させることはできません。もし商品が飛ぶように売れていたとしても、利益がなければ、まともな経営とはいえないのです。

利益は、大きく 売上総利益(粗利)、純利益、営業利益、経常利益、税引き前当期純利益、そして限界利益 の6つに分けることができ、今回のキーワードとなるのは 「限界利益」 です。

「限界利益」とは商品の売上を一単位増やす毎に増加する利益をいいます。「他の利益は知っていても、この言葉だけは聞き慣れない」という人は意外と多く、もし「初めて知った」という人がいたら、ぜひ覚えておいてください。この「限界利益」は、会社や商品の利益の本質を見ることにつながる、とても大切な数字なのです。

限界利益と限界利益率から分かる、会社の「儲けパワー」とは

「限界利益」の解説に入る前に、まず会社から出ていくお金である、「費用」について整理しましょう。

会社でつかう費用は大きく2つに分けられます。
1つは 「固定費」 、もう1つは 「変動費」 です。

「固定費」は商品やサービスが売れても売れなくてもかかる費用のことで、例えばオフィスの家賃、人件費、公共料金などです。一方の「変動費」は売れば売るほどかかる費用のことで、たとえば材料費、電気代、外注費などがそれにあたります。

イメージでいえば、固定費はなにもしなくてもお金がでていく、すねかじりの『ニートな費用』、変動費は売れば売るほどつきまとってくる、『ストーカー費用』だと、古屋さんはいいます。

限界利益は額と率で把握し、額は売上から変動費を引くことで求められます。つまり、売上における限界利益額が、なにもしなくてもでていく固定費を賄うことができれば黒字ということになるのです。

「限界利益額=売上額-変動費の額」

この、限界利益額をつかって求められるのが限界利益率で、古屋さんはズバリ会社の 「儲けパワー」と呼んでいます 。限界利益額の売上に対する比率が、限界利益率です。

限界利益率は売上高の増加分のうち、どれだけの利益に結びつくかをあらわしたもの。競争状況などに違いがなく、同じような売上を得られる商品をもつ場合、限界利益率の高い製品の営業に力を入れると利益が最も多くなるという指標です。

求め方は以下の通りです。

「限界利益率=限界利益額÷売上×100」

この2つの数字分かれば、もう大丈夫。
では具体的に会社の儲けパワーをシミュレーションしていきましょう。

1、会社の儲けのパワーを知る

A社の売上額を年間4500万円。そして変動費の合計を3500万円とします。この会社の経営状態を見てみますしょう。

売上:4500万円
変動費の合計:3500万円
限界利益額:1000万円

先ほどの式で計算してみると、1000万円(限界利益額)÷4500万円(売上)×100で、A社の限界利益率は22.2%となりました。

この「22.2%」という数字は「儲けパワー」としてどうなのでしょうか。本書によれば、目安として、限界利益率25%以下で黒字化している会社は少ないと書かれています。そのため、会社は数字を読むうえで、最低限25%以上に限界利益率を高めることを意識しすることを忘れてはいけません。

2、商品単品の儲けのパワーを知る

次は、A社で扱っている商品の中の1つを見ていきましょう。ある商品αは1つ2000円で売られていて、変動費は1600円。なかなかコストがかかっているようにも見えますね。計算してみましょう。

売上:2000円
変動費:1600円
限界利益額:400円

400円(限界利益額)÷2000円(売上)×100で、限界利益率は20%で、やや低めです。商品がたくさん売れることで、売上は上がりますが、本質的な利益にはつながりにくい商品だということがわかります。つまり限界利益率の低い商品ばかりを扱っていると、「売上を上げれば、会社にお金は残る」という考え方では儲からないということになってしまうのです。

値下げをすれば企業がブラック化するのは当然?

限界利益率は、値下げや値上げの基準にもなります。

値下げをすれば当然、限界利益率が落ちますし、値上げをすれば一品あたりの限界利益率は上がるでしょう。

値付けを検討するとき、「値下げをしても原価割れにならなければ、たくさん商品を売れば薄くとも利益が積み重なり、儲かるようになるはず……!」と考える経営者も少なくないようです。しかし、そのように安易な値下げに走ってしまうのはかなり危険な発想。

なぜなら、10%オフでも限界利益率に大きなダメージを与えてしまうからです。先ほどの2000円の商品を10%オフにして1800円で売ったとしましょう。

売上:1800円
変動費:1600円
限界利益額:200円

すると200円(限界利益額)÷1800円(売上)×100となり、限界利益率は11.1%で約半分になってしまいました。

「それでもたくさん売れば儲かる」と考えるのは「思考のブラック化」に他なりません。仮に3倍売り上げないと元が取れない場合、客の回転率も3倍に上げる必要があります。すると、スタッフ一人ひとりに無理を強いることになってしまうかもしれません。

一方で、新たなスタッフを雇うと固定費増につながり、結局、スタッフのお給料のために売上を確保するという、より過酷な経営を強いられます。固定費を抑えつつ、仕事量を増やすというのは限界があるのです。

一番の問題は価格設定です。安くすれば人は集まるかもしれませんが、だからといって会社そのものを幸せにするとは限りません。限界利益率をつかい値下げ時のシミュレーションをちゃんと行わないと、大赤字になってしまうこともあるのです。

理想は限界利益率の高い商品を作ること。それは、ひいてはお客様にとって本当にニーズのある商品ともいえます。そうしたものを作るために、経営者は日々考えなければならないのです。

***

古屋さんは、著書の中でさらに具体的な「数字」をつかった値付けの方法、利益の出し方を実例を交えながら説明しています。

こうした数字をつかえる人はビジネスに強くなれます。皆さんも身近な商品などを例に自分が働いている会社や、投資を考えている企業の「儲けパワー」を調べてみるとおもしろいかもしれませんね。(提供: 日本実業出版社 )

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