問題を起こし社会的に話題となるIT企業に、自社のシステム開発を発注して取引をしたり、投資などにより資本参加したりした場合、どのようなリスクがあるのだろうか。

「ブラックIT企業」への投資は、短期的には効果的かもしれないが……

ブラック企業,働き方改革
(写真=PIXTA)

企業体質が「ブラック」だと言われる理由はいくつかあるが、従業員にとって「ブラック」となる条件は、長時間労働、サービス残業の存在、体育会系体質などが挙げられる。

しかし、そのような会社に投資や資本参加をする場合、ひどい話ではあるがブラック企業であるかどうかはあまり関係がない。業績が伸びているとすれば、それは投資家からすれば理由を問わずに素晴らしい「ホワイト企業」である。

ただ流通や外食産業において、長時間の営業時間を見直す動きが出始め、せきを切ったように同業他社でも追従する動きが加速している現状を考えると、IT産業でも見直しの動きが出始めてもおかしくはない。

そうなると、「ブラック企業」では人を集めることが本当に困難となる。IT産業は人材不足と言われ続けており、さらに労働人口の減少を考えると「替えはいくらでもいる」と言える時代はそう遠くない将来に終わる。こうなると企業そのものが立ち行かなくなるので、投資するしないというどころの話ではなくなる。

「ブラックIT企業」にシステムを握られる危険性

「ブラックIT企業」に業務を依頼、つまりシステム開発などを発注した場合はどうだろうか。そのような企業が問題の内容にかかわらず、悪い内容で有名になった場合でも、すぐに悪影響が出るわけではない。

しかし、例えばその企業が「取引実績」として自分の企業の名前やロゴを、自社のWebサイトにのせていたとしたら、その印象はどうだろうか。問題が発生して「炎上」する場合、その企業のWebサイトへのアクセス数は信じがたいほど激増する。

そして、自分たちが悪いことをしていないにも関わらず、そのページに乗った自分たちの会社のロゴをたくさんの「怒れる人達」に見られるというのは、企業イメージ的には決して良いものではないだろう。

そのような「ブラックIT企業」にシステム開発を依頼した場合、社内のブラック化により従業員のモラルが低下し、システム開発の過程で預けている自社の機密情報が、人為的な要因で漏洩するという危険性も考えなければならない。さらにその企業が破綻した場合、その混乱の中で自社の機密情報が保全されるという保証はどこにもない。

そもそもIT系企業に「ブラック企業」が多い理由は

IT企業は長時間労働をはじめとして、「ブラック企業」となる余地があまりにも多い。ずっとPCと向き合う、集中力を必要とするソースコードを延々と書く、社内の齟齬により生産性が低くなる……。著者が実際に聞いた話としてもたくさん事例があるため、そう言わざるを得ないのが事実である。少なくとも、ストレスを感じやすい環境であることは間違いなく、その証拠として印象的な話がある。

「IT産業では心療内科に行く社員の割合が、他の産業に比べると明らかに多い」というある社労士の証言があった。

また最新鋭のハイテクな産業と言いつつも、その社風が体育会系的・封建的な古い体質のところも多く、これも従業員を追い詰める原因の一つとなっている。

そして、そこに従事する人たちが自虐的で自らを「社畜」と呼ぶ人が多いのも、この産業の特徴と言える。その割には、労働環境に改善の試みがなされることが少なく、SEやプログラマーの自虐的な川柳がある意味ネタになっている部分もある。しかし内容は決して笑えるようなものでも、ネタとして扱っていいようなものではなく、社会問題として真剣に考えるべき内容である。

「ブラックIT企業」と付き合わない方法は?

そのような「ブラックIT企業」と付き合うリスクは先述の通りであり、特に自社の機密に属する部分、つまり会計情報や営業情報などを扱うシステムをそのような会社に発注した場合には、その危険性も考慮するべきである。

あらかじめ取引先を調べるということは難しいため、リスクを軽減しつつ発注するという方法もある。例えば開発案件をオフショアに出し、日本国内のIT産業に頼らないというオプションを持っていれば、一カ所にすべて握られるという危険性を回避できる上に、予算的にも有効な「プランB」を持つことができる。

オフショアはいろいろな問題があるとされていたが、昨今は日本語のコミュニケーションに全く不安を感じないオフショア企業も数多く存在する。「ブラック企業」は社会問題として徐々に解決されていくだろうが、そうなるまでの「プランB」としては検討するに値する。

問題のある企業との取引を中止し、オフショア委託などの「不信任状」を突き付けることにより、業界が真剣に問題に取り組むきっかけとなれば、日本のIT産業も投資先として魅力を取り戻すだろう。(信濃兼好、メガリスITアライアンス ITコンサルタント)

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