現在は米国大統領としてのトランプ氏の発言ばかりが注目されているが、トランプ氏の成功の源となった不動産投資家だった頃の発言には不動産投資家として、納得できるものが多くある。

不動産投資が一般に広まった今こそ、同じ不動産投資家としての目線で、不動産投資家としてのトランプ氏の発言を、日本の特性を考慮しながら紐解いていこう。

トランプ氏の代表作『The Art of the Deal』に学ぶ不動産投資

筆者が不動産投資を始めた15年以上前の日本では、不動産投資といえば、地主が相続対策や節税目的で行うことが多く、現在のようにサラリーマン投資家がアパートやビルに億単位で投資をするようなことはとても稀だった。

当然、サラリーマンが不動産投資をするための書籍や教材はとても少なかったので、仕方なく米国の不動産投資に関するオーディオ教材や書籍を読み漁るしか不動産投資の知識を得る方法がなかった。

その頃に出会ったのが不動産投資家で現米国大統領のドナルド・トランプ氏の本だった。拙著『金持ちリタイア・貧乏リタイア?社長より稼ぐサラリーマン大家の不動産投資術』には、参考図書としてトランプ氏の自伝が記載されているが、あの頃読んだ本の著者がまさか米国大統領になるとは思いもしなかった。

拙書のタイトルのとおり、不動産投資で社長より稼ぐことは本当に可能なのだろうか。計算してみれば簡単に理解することができる。億単位で取引される不動産投資の世界では、例えば表面利回りが10%の収益不動産を購入した場合、単純計算すると5億円の投資額で5000万円の年間賃料収入を得る事ができる。投資金額10億円なら1億円の賃料収入だ。しかも不動産は購入後すぐにお金を生む資産なので、昇進に時間を費やす必要もなく、一瞬で年収が上がってしまうのだ。

さて、トランプ氏の代表作『The Art of the Deal』である。ディールとは「取引」のこと。アートは「芸術」という意味と「術」とか「技」という意味がある。

ストレートに「取引術」とか「取引のわざ」と訳するより、あえて「芸術」と訳してみると、面白いことがたくさんわかってくる。

一見、アートとビジネスは相反するように感じる方もいると思うが、音楽家にとっては、歌や音楽が芸術作品。画家にとって、陶芸や絵画が芸術作品。コックにとっては料理が芸術作品、プログラマにとっては、ソフトウェアが芸術作品と考えると、ディールとは誰の芸術作品なのか予想がついてくる。そう、投資家にとってはディールこそが芸術なのだ。

不動産投資家の命運は「最初のディール」で決まる