現物不動産投資は自己資金で簡単にできるものではないが、不動産小口商品ならば話は別だ。株式や債券の売買と同様に少額から投資できる。今回は不動産小口商品の主な仕組みである匿名組合と任意組合について説明する。

匿名組合とは

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(写真=PixDeluxe/Shutterstock.com)

匿名組合は商法によって規定されている。組合員(投資家)は出資する見返りに、事業の収益を分配してもらう権利を得る。匿名組合員は、株式会社のように取締役の専任をしたり重要事項を決定したりすることはできない。組合員が匿名組合契約を結び、出資をする先は営業者と呼ばれる。営業者は、事業の独立性を保つことができ、匿名組合員との関係は金銭のやりとりが主だ。不動産の所有権は営業者が持ち登記されるため、匿名組合員は登記上で匿名性がある。

匿名組合契約終了後、営業者は組合員に出資された金額を返還しなければならないが、損失がでた場合は組合員が負担する。利益の分配も同様だ。出資した金額以上に負担が増えることはない。

任意組合とは

商法で定められている匿名組合に対し、任意組合を規定しているのは民法だ。組合契約は複数の人が出資しあい、共同して事業を行うことを約束し成立する。匿名組合が出資者と営業者を明確に分けているのに対し、任意組合は組合員それぞれが対等な立場と考えるのが基本だ。事業を行うのは出資者である組合員自身だ。

匿名組合が出資金の額を限度とする有限責任であるのに対し、任意組合は事業によって発生した債務を出資金の割合に応じて負担し場合により出資金以上の債務を負担する責任となる。出資を目的とした匿名組合契約と、事業の共同遂行を目的とした任意組合契約の違いといえる。

不動産小口商品への活用

不動産投資の魅力は高い利回りが期待でき、運用成績が株式投資ほど景気の波に左右されにくいことにあるといえるだろう。だが土地や建物を購入するには大きな資金が必要となり、初心者がいきなり現物不動産投資を始めるのは簡単ではない。そこで活躍するのが不動産の小口商品だ。

不動産小口商品は、資金を分担して出し合うことによって、少額から投資をできるようにしたものだ。その法的な枠組みは、不動産特定共同事業法、資産の流動化に関する法律(SPC法)などさまざまなものがある。不動産特定共同事業法には、「匿名組合型契約」「任意組合型契約」「賃貸借型」などが定められている。

不動産小口商品における匿名組合型では、投資家は事業者と1対1の契約を結んで出資する。事業者は出資金で土地やビル、マンションなどの不動産を取得し、不動産事業の運営を行う。事業者は賃料収入の中から事業活動に必要な経費を差し引いて、残る利益を出資者に分配する。

不動産小口商品における任意組合型は一般的に、投資家たちと事業者は共同して契約を締結し、その中には不動産の運営管理を事業者が行う(業務執行者に委託する)内容を盛り込む。投資家たちは購入した不動産を現物出資もしくは金銭を出資し、事業者はこれを運用し利益を分配する。

投資家は匿名組合型では「賃料収入から得られる利益の配当を受ける権利」を購入しているといえる。任意組合型では「不動産そのもの」を購入しており、少額の出資で名実ともに不動産オーナーになることができる。この契約方式による大きな違いは、税務上の取り扱いだ。詳細は税理士など専門家に確認して頂きたい。

不動産投資にもさまざまな方法がある

不動産投資として、匿名組合と任意組合を活用した不動産小口商品を紹介した。2つの大きな違いは、実際に不動産を所有するか、それとも分配を受ける権利だけを所有するかという点だ。

この他にもさまざまな仕組みがあるが、いずれにしても小口化することで敷居の高い不動産投資を身近にしている。不動産は高額だからと敬遠していた人も、自分に合った投資方法を探してみよう。(提供: みんなの投資online

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