欧州(EU)の世論調査 で5割が「EUは誤った方向に向かっている」と回答するなど、EU内部の不安定化が加速している。

「欧州地域統合化で経済的、政治的安定を図る」というコンセプトを象徴する単一通貨、ユーロに対しても、廃止を強く望む声が内部から挙がり始めている。

EUの将来性を信じている国民は過去最低水準

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

欧州世論調査が毎年発行しているもので、最新版(2016年)の回答は昨年5月、EU加盟28カ国を含む34カ国・地域から集計された。回答結果は欧州で広がる「地域連合体への疑念」を色濃く反映している。

「EUは正しい方向に向かっている」と答えたのは、過去最低水準に値する17%。対照的に「誤った方向に向かっている」と回答したのは50%。55%を記録した2010年の水準に着実に逆もどりしつつある。

「今後1年で生活が向上する」との期待はすべてのEU地域で半数を割っており、過半数が「よくも悪くもならない」と不確実だ。

楽観度を数値化した「楽観指数」の過去データ と比較してみると、2008年の金融危機を境に楽観度は10ポイントも落ちこんでいる。地域連合体への期待にあふれていた1996年から2007年にかけては常に20ポイント前後を維持していたが、それ以降は一時的に最低1ポイントを記録するなど浮き沈みが激しい。若干の回復基調は見られるものの、不安感が霧にようにEU全体をおおっている様子が伝わってくる。

バニャイ准教授「ユーロ圏は単一国ではない」

EUという統合体制だけではなく、それに多大な影響をあたえる単一通貨への疑念も高まっている。現在EU19カ国がユーロを通貨として利用しているが、25%が「単一通貨制度を廃止したい」との見解を示している。

「フランスにおける単一通貨制度廃止」を唱える右翼政党のル・ペン党首が、大統領選の最有力候補のひとりとして支持率を獲得している事実には、EU圏の国民の焦燥感が反映されている。

こうした潮流は国民間にとどまらず、政治家にも移行している。CNNの報道 によると、イタリアのガブリエーレ・ダンヌンツィ大学経済学部のアルベルト・バニャイ准教授 は、「ユーロ圏はひとつの国ではない」とし、単一通貨で統合する不自然さを挙げている。

単一通貨は連邦国家のみで機能を果たす制度だが、「異なる文化背景をもつ欧州をひとつの連邦国家にまとめあげることは不可能」であるため、それぞれの通貨にもどすべきという考えだ。

例えば米英などは「連邦国家」であるためドルやポンドが単一通貨として機能するが、「EUという連邦国家は存在しない」。その結果、ドイツや英国といった比較的経済にゆとりがあるとされているEU国が、経済的支援が必要な加盟国に莫大な支援金を送り続けることになる。

「ドイツはもううんざりしている」とバニャイ准教授が指摘しているとおり、こうした現状への不満が欧州で勢いを増すポピュリズムの根底にあることは確かだ。現に英国民がEU離脱の道を選ぶ引き金となった。バニャイ准教授は「おとぎ話はもうおしまいだ」と、EUの幻想が集結に近づいていることに警鐘を鳴らしている。

単一通貨制度がスペインの失業率を押しあげた?

スペインのエコノミスト、セルジ・クティラス氏も「ユーロ統合は理想に凝り固まった間違った試みだった」と悲観的だ。

スペイン、ギリシャ、イタリアにとって、EU加盟後支払い続けている金利が自国経済に圧力をかけていることは明らかである。名目金利(インフレ率などが加算されていない表面上の金利)だけを見れば、金融危機が引き金となり「貨幣同盟」のめっきがはがれ落ち始めたのがわかる。例えば金融危機直前のギリシャの金利は、ドイツと同じ水準(4.75%、TradingEconomics.comデータ)に達していた。

しかし金融危機直後、旧政権のよる財政赤字の隠蔽などが発覚したことから、ギリシャをとりまく環境は一転した。緊縮政策の実施を交換条件に、EUとIMF(国際通貨基金)が救済資金を注入したが、破たんの懸念が常につきまとうことになる。

スペインなども同様だ。銀行の債権に対する不動産比率が高騰していたスペインは経済危機の衝撃をまともに受け、急激な景気減退に見舞われた。その際単一通貨が足かせとなり、自国のバブル崩壊を食いとめられなかった。

スペインでもその後長期間にわたり、不況から抜けだせない状態が続くことになる。クティラス氏は、「ユーロを守る目的でEUから強制された緊縮政策と支出縮小の結果が、現在の20%という失業率だ」と語った。

EUが様々な意味で転機をむかえていることは明白だ。Brexit(英EU離脱)はそのきっかけにすぎない。理想が幻滅に変わらぬよう、現実を見据えて統合主義の本質を形にしていくことは可能なのだろうか。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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